再び、書皮の話
しょひ、と読む。
再び書皮について書きたくなって、「前」がいつだか検索したら、4年前の記事だった。
そうだ、あのころ、同じ通勤電車のおじさんの本をみてにやにやしていたのだった。
そういえば、最近電車のなかで本を読む人をあまりみていない。
このところ読み返しではなく新刊本を買うことが多いので、書店にいって「カバーをおかけしますか?」と聞かれると「お願いします」と答えることが多い。
先日、久しぶりに八重洲ブックセンターに行ったら、ファンシーなお花柄で、
「おおぅ、君は八重洲ブックセンターの子だったのか。バリバリビジネス系の書店のくせに(偏見)、ギャップ萌えかよ」
と心の中でツッコんだ。
わたしはあまり八重洲ブックセンターに縁がないので、久しぶりに見てびっくりしてしまった。
わたしの愛用といえば、古くはリブロと三省堂と旭屋書店、いまではブックファーストやくまざわ書店あたり。
あとブックエクスプレスだっけ?
とりあえず乗り換え駅にある本屋さんがメインだ。
書皮はいい。
どこで買ったか、の思い出を残してくれる。
どこで買ったかがわかると、「たしかあの頃だったよな」となり、あの頃はあんなことしてたよな、とか、記憶がいろいろと戻ってくることがある。
(いつもそうとは限らない)
ところで、最近は書皮でさえ経費削減使用としている書店もあり(某1番書店など)、書皮の幅が本ときっちり一緒で、折り返しがないのだ。
これじゃあ本を守れないじゃん、とちょっと思う。
あとはあれかな、書店員のスキルというか、手際の良さが試されるのが書皮なので、効率化を図ったのかもしれない。
書皮といえば、昔は上部だけ折り返してあって、店員さんが本の高さによって下部をしゃーっと折って、それから巻くものだった。
わたしはあの「しゃーっ」が魔法のようで好きだった。
あのタイプの書皮を置いている書店は、今どのくらいあるのだろう。
わたしが最近使う書店は、上下がすでに折ってあるものを本の版にあわせて使うので、出版社ごとの微妙なサイズ差に対応しきれていない。
ちょっと残念だけど、これも効率化なのかな、と思う。
いつか自分で書店を持つことになったら、絶対に「しゃーっ」をやってやろうと思う。
効率化、というと、それはもちろん新人をいかに早く使える人材にするか、ということがあるのだろう。
だって新人教育に割く時間が、どのお店もあまりないだろうから。
この間買いに入った書店では、「研修中」の札をつけた若いお姉さんがレジ対応をしてくれた。
「カバーはお掛けしますか?」
ときかれたので、
「お願いします」
と言って、クレジットカードで、とカードを出した。
お会計中に必死にカバーをかけようとしていたお姉さんは、カード決済の端末にエラーが出たことで、書皮どころではなくなってしまった。
幸い、品出し中の先輩が近くにいて、すぐに閉めていた隣のレジに移動してお会計をしてくれたので、新人のお姉さんはそれほど焦らずに会計はできたのだけれど、会計中にしようとおもっていた書皮を巻く作業ができなかった。
慌てたようすで(といっても書店に興味がない人にはわからない程度)どうにか巻いて、
「お品物です」
「こちらレシートになります」
といってお会計は無事終了した。
お姉さん、お疲れ。
手に持った本には、書皮が巻かれている「だけ」だった。
表紙側を折り込んで、裏表紙側を折り込んで、おしまい。
裏表紙側の折り込みは、だいぶ緩かった。
ただ巻かれただけの書皮と、その緩みが、なんだかほほえましかった。
普通、書皮は表紙側を折り込みの間に差し込んで、上下がずれないようにする。
それから裏表紙側を本のサイズに合わせてきっちりと筋をつけ、そして折り込む。
わたしは電車の中で座りながら、裏表紙側の折り線をきっちり付け直し、表紙を書皮の間に差し込んだ。
あのお姉さんも、いずれ「しゃーっ」が使える魔法使いになるのだろうか。
一生懸命つけてくれた書皮を見ながら、研修中のみんな、がんばれよー、と心のなかでエールを送った。