「「島﨑、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」」
珍しく有言実行で、早速本を買ってきました。
宮島未奈著『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社、2023年)
今回の本屋大賞を受賞したこの作品。
表紙の感じで「たぶん好きだろうな」と思い、本屋さんで手に取って1ページ読んだところでレジに向かった。
気分が爽快になる文章だと思った。
実は今日買ってきたので、まだ1章しか読めていないのだけれど、ザクザク読める。
言葉のキレがいい。
とてもドライなのに、夏の眩しさを感じる。
物語は主人公を成瀬にしておきながら、友人の島﨑の視点ですすむ。
天才というか、奇才をながめる凡人の視点である。
当然、島﨑の驚きや怪訝さは伝わってくるが、成瀬の心象は読者が推し量るしかない。
凡人を通して成瀬を眺めるほうが、読者は共感しやすいだろうな、と普通に納得する役割分担だ。
そして文章のキレがいい。
なにか大きなことを成そうとする少女、それを見守る一般人、という組み合わせの小説は多くあると思うが、わたしは小野不由美氏の『図南の翼』を思い出しながら読んだ。
あの文章のキレ、成瀬の気風の良さと、珠昌の大胆さには似たところがある。
陽のインパクトがものすごい。
それでいて、主人公に変な嫉妬とか僻みとかを覚えずに、単純に「すごいなー」と思えるところがいい。
読んでいて元気になる小説だな、と思う。
とりあえずは1巻を読んで、続編が出ていたので次のも読みたいと思う。
久しぶりに新しい読書体験ができそうで、楽しみだ。
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