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アラサー男性がモルカーと一緒に一人旅した話③
こんにちは。ここまで続けて読んでいただきありがとうございます。大丈夫ですか?もっと他にさ、こう、やることとか。
この記事は
の続きです。もし、以前の記事を未読でしたらリンクから飛んでいただけると幸いです。
この記事は、アラサー男性の平凡な旅を、濃いめに味付けた文章で書き記すものです。ふぉとじぇにっく的な過度な期待はしないでください。
写真と文字、ちょっと多めです。
旅程
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8月5日④ 東奔西走なんのその
■10:30
宮島口駅から、
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■11:10
広島駅で乗り換え、広島湾の東側へ。
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正直、懸念されていたおしりの痛みよりも睡魔がやばい。5時に起きて午前中はしゃぐと、アラサーには残る体力がない。
次第に世界が30秒スキップしたビデオみたいにカクつき始める。すわ、スタンド攻撃か!と焦っている自分もまた夢の中。
「お兄さん、起きるんじゃないの?」
目の前に突然老婆である。上からマリコ並の衝撃が私を襲うが、冷静になってみると、マダムという表現がめっちゃ似合う品のいいおばあ様である。可愛らしい猫のポーチを抱えたマダムが、申し訳なさそうに私の肩を叩いていた。
「次は〜呉〜。呉っ(歯切れがいい)」
アナウンスは確かに目的地を告げている。
マダムに礼を言いつつ赤べこが如く感謝のヘドバンを決めるアラサーの脳裏に、ふと疑問が浮かび尋ねてみる。
「あのぅ、どうして私が呉で降りると……?」
まさかこのマダムはどこかの【禁則事項】の人間で、私を……中学生の頃とか、そんな空想をした。
「だって、それ。膝の上に開いてらっしゃるから」
マダムが指差す私の膝の上には、旅行前に浮かれて買った"るるぶ"の呉のページが開かれていた。
私は体力の衰えたアラサーじゃなくて、遠足前の小学生だった。
■12:10
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ホテルのある広島市内から、文字通り東奔西走。宮島から広島湾の対岸まで向かう強行軍。それでも呉を旅程に含めたのは、職場の先輩のとっておきがあるからなのじゃ。
8月5日⑤ よかったねお姉さんの巻
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艦船めぐりチケットと塩分タブレットォ〜(CV.大山のぶ代)。かつて軍港だった呉には、海上自衛隊の基地がある。ぽまいら、海自の艦艇を船に乗って近くで見ようず!という素敵ツアーが、この艦船めぐりである。これが先輩のとっておき。
是倉いのは船が好きだけど、それは乗る方なのよ。鉄道趣味に例えるなら「乗り鉄」枠。で、艦船なんかの見る専の船は、ぶっちゃけ私はどうでもいい(CV.津田健次郎)。
先輩に勧められた時も「ええ〜本当にござるか〜?」と半信半疑あっちこっち。
周囲が艦これに夢中になっても「高垣楓を推せよ!(アイマス)」と喧伝していた私だ。筋金入りである。
■13:50
乗船前に説明や諸注意を受け、いざ乗船。屋根のある船内も選べたけど、むき出しの「せっかくだし」精神を持つ私は、お昼になって元気100倍のお日様によって空焚きしたフライパンもかくやとアチアチになったデッキに陣取る。
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…………めっちゃ楽しい……!!
ツアー中はガイドの方が見える船の説明をしてくれるのですが、これがまた面白いのなんの。というかガイドのお姉さんの熱量が凄すぎて。
でっかい船が次々と現れるのも非日常感あって面白い。私はといえば、あっという間に旗(上の写真の座席に置かれているやつ)をパタパタと振るはしゃいだ大人と化した。
「では、次はもうちょっと沖に出て……ウワーッ!?」
突然のお姉さんの声に、デッキにいる我々もびっくりして背筋を正す。授業中に先生が何かに気づいて大声をあげた時の教室に漂うような、張り詰めた空気が我々生徒の間に流れる。
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潜水艦である。黄色くはないが、潜水艦である。
潜水艦は呉と横須賀でしか見れないこと、訓練等で動いている潜水艦を見れるのは年1くらいのラッキーであることをめちゃくちゃ分かりやすく、かつアツく、かつ早口で語るお姉さん。
「……あの、ルート変更してもいいですか?本当にレアなんで」
まさかの提案である。潜水艦の着岸を見守ろうと言うのだ。しかし、我々生徒はここまでの10分間のやり取りでだいたい分かっている。
この船に乗っている人類の中で、お姉さんが一番艦船愛に満ちているのだ。頑張れお姉さん。あなたがナンバーワンだ。
生徒たちはお行儀よく頷き、ツアー船は舳先の向きを変える。かくして大満足したお姉さんからお腹いっぱいになるほどの満足感をおすそ分けしてもらった生徒たちは、下船の頃には「えがったえがった」と口々に言いながら笑顔を浮かべていた。
8月5日⑥ 呉超巨大決戦
■13:50
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うおっ、でっか。
艦船ツアーを終えた足で向かったのは、大和ミュージアムこと呉市海事歴史科学館。
入ってすぐ1/10の戦艦大和が出迎えてくれます。いやおかしくね?さっき乗ってた船のが多分小さいぞ?
大和のことだけでなく、船の動力についてや、明治期以降栄えた呉の歴史、そして戦争のことなどを展示している地域の博物館です。
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平和記念資料館でも感じたけど、広島の人たちは戦争の時代を生きた人たちに敬意がある。だから、どこに行っても「可哀想でしょお涙頂戴」「大和万歳!鬼畜米英!」といったノリはない。戦争を美化する雰囲気もない。
瀬戸内海の水面のように穏やかな心で戦争を見つめたからこその、非道を許さず、平和を訴える偽りのない心がある。
大和は兵器だが呉の人々みんながお腹を痛めて産んだ子供なのだ。だから、みんな大和が好きなんだね。知らんけど。
■15:40
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だいたいこんなサイズ。
大和ミュージアムを出て、道路の反対側の「てつのくじら館」こと海上自衛隊呉史料館へ。トイメンの大和ミュージアムが「呉のこれまで」の博物館なら、こちらは「呉の今」を伝える史料館です。
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海上自衛隊の、主に潜水艦任務中の生活について詳しく学べま……食べ物の写真ばかりだって?またまたぁ。
陸を離れてもしっかりと健康でいられるような工夫。エモですね。タムラ料理長もこれなら大満足でしょう。塩が足りているのですよ!
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さて、てつのくじら館をてつのくじら館たらしめているのが、このバカでっけえ潜水艦あきしおである。本館の順路を進むと、あきしおの中に進めます。が、残念ながら写真不可!
今だ火を吹けトラベラーズノート!!
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なんか書いとけや私。
そんなわけで、あきしおの中については「君の目で確かめてくれ!」。こっちの言葉のがワクワクするよね。
8月5日⑦ 海自カレー
■16:10
その時、食い意地が張っている私は思い出した。昼食を取っていない恐怖を。美味しいものを見逃している屈辱を。
いざ進めや呉の街、目指すは海自カレー(キテレツ)。進撃のアラサーは大和ミュージアムの隣にあるSEASIDE CAFE BEACONへ向かう。入口にはご丁寧にお迎えが立っていた。
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「いよう。食ってくか?(CV.大塚芳忠)」とでも言い出しそう顔でこちらを見る船長。口の穴にはかつてパイプか何かがあったのかな。左目の傷は長年ここに立ち続けている勲章みたい。勇ましい。
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呉には海上自衛隊員のマッチョを作り上げている海自カレーを食べさせてもらえるお店があります。ここで頂けるのは護衛艦さみだれで食べられている「さみだれカレー」。に、呉のソウルフード"がんす"を載せていただきますでごんす。
説明しよう!(CV.富山敬)
がんすとは!白身魚のすり身にパン粉を纏わせて揚げたものである!
白身魚の甘さとだしの風味が合わさって、優しい味なのにビールを飲みたくなるようなパンチを噛ましてくる軽量パワー型の揚げ物である!
カレーと合うのかって?(あ)ったりめぇよ!!
(ちなみに海自の食事の一部はレシピが公開されています。こちらからどうぞ。)
8月5日⑧ 夕景・夜景
■18:00
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広島駅に戻り、汁なし坦々麺を頂く。思いのほか辛くて嬉しい誤算。おおっ有難い!! 私は辛い味付けが大好物なのだ!! なんというか生を実感する。
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広島駅からホテルのある中電前駅までの約3kmを歩く。平和記念資料館で過去の広島の様子は知ったけれど、今の広島はよく知らない。8月5日という日が、呉へ足を伸ばした体験が、広島の町を見ておきたいという気持ちにさせた。
と、おセンチに進めてもいいんだけど、この時期の広島はとにかく暑い。この時間でもとにかく暑い。松岡修造が隣歩いてんのかってくらい。東京の暑さが1松岡だったら、広島は3松岡くらいある。せめて風よ吹け。みんなどこへ行った(中島みゆき)。あら?いつの間にか腕が濡れてるわ?とか思ったそれは汗。湧き水のように延々と汗が吹き出て日に焼けた真っ黒い腕を潤していく。砂漠だったら嬉しいかもだけど今その泉はいらないのだ。助けてクラシアン。
■20:20
ホテルで汗を流して、広島最後の夜は原爆ドームの隣にあるおりづるタワーへ。
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エレベーターで屋上へ上がると……
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夜景!
ポテト(オレンジのモルカー)がいい表情してます。
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夕方までの暑さが嘘のように、涼しい夜風が吹いている。君たち、今までどこにいたんだ。
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夜の街を見下ろしてお酒を飲みながら、権力者ごっこをひと通りやり終える。
ふと、耳を澄ますと、眼下の平和記念公園で行われている「かがり灯の祭典」の喧騒が、祭りの熱気と共に届いてくる。
「何て言うかさ、平和だよね。これ」
隣のモルカーに心の中で語りかける。
酔ってるんだ。許してくれよ。
光も熱気も少しずつ空に溶けていって、広島の夜は更けていく。
■ ■ ■
今回もここまで読んでいただきありがとうございます。ちょっと長くなりすぎたので、雑記は次回に見送ります。
前2回と合わせて約11,000字です。旧ジャニーズのアイドルグループによくある10,000字インタビューにオマケが付いたくらいです。
ちなみにここがだいたい折り返し。フォッフォッフォ。もうチョットだけ続くんじゃ。