笙野頼子「続・女性文学は発禁文学なのか?」(「文藝家協会ニュース」令和(2024)6年10月号VOICE欄より転載)
二〇二一年十一月、このVOICE欄で、私は日本の女性の根源的な危機を訴えた。
海外では、女という言葉、実体、客観が隠され、医学的性別より本人の自己申告による、「魂の性別」が優先されていると。その結果女性スペースから母体保護までも奪われており、奔流は日本にもやって来ると。一見、デマのような怖い話。なのでまず「デマではない」と書いた。そう、真正、デマではなかった。当時マスコミは沈黙していた。告発する女性たちは干され罵倒され恫喝された。「terf」と呼ばれ「人ではない、顔に入れ墨しろ、収容所に入れろ」と嘲られて、私も「本を捨てろ、書店に置くな」と言われ始めた。私は仲間に導かれ海外ニュース等から三十の事実を選び、圧縮して貴重な当欄に詰めた。壊れるものは——女湯、女子トイレ、女子更衣室、授乳室、女子採尿室、女子大、女子スポーツ、女子刑務所、女、母、妊婦という語、さらに医学に基づいて語る書き手の言論の自由、ていうか近代のすべてが危機にあった。その後、私たちは未成年への不可逆な危険医療も告発した。事態は既に事実として国会答弁で論じられ、危険医療についてはBBCやガーディアンが報道した。この現象を「女消し」と私が名付けた時、既に、海外には#BidenErasedWomenというタグまであった。で、現在二〇二四年、——世界の富豪、日本のめぼしい企業大半、有名女子大、東京弁護士会、早稲田大学、電通、NTT、日本財団、経団連までがこの女消しに賛同する。そして運動の先端部分は、ハイデガー的団結形式を持ち、反対意見を悪と見做し、議論は放棄。質問もヘイターと決めつけ黙殺するもの。
なお、前回VOICE欄で述べたように、三年前のこの「魂の性別」に基づく悪法は保守議員と女たちの連帯で阻止されていた。が、昨年六月に再来、毒は薄まったものの成立した。とはいえここまで、頑張って食い止めた保守と女の一点共闘(注1)は今回も健在で、例えばすべての国民の不安に留意せよ、という防衛的項目も勝ち取っている。いくらバイデンの世界戦略でも抵抗は止まらない。——海外ではローマ教皇からアリス・ウォーカーまで「魂の性別」に反旗を翻し、最初は女消し一色だった国連まで、個人とはいえ、役員勧告で批判が出た。
前回の拙文は元記事なしで一部会員からネットで誹謗中傷され(注2)その後は別の会員により著作権無視で勝手にネットに出され、私の妄想だという説明が加えられていた。しかし、三十の事実を全部デマという証拠はどこに? あれから二年超、皆様、今ではもうお気付きであろう。(小説家)
◇参考『女肉男食 ジェンダーの怖い話』『解禁随筆集』
追記
(注1)
最近解禁随筆集の帯文について「笙野さんには好感を持っている、しかしこの帯文では保守の女性に言及してくれていない(要約)」というご意見をいただきました。ご教示ありがとうございました。
今後このようなケースは一点共闘→新世紀共闘 と表記いたします。
とはいえ、帯文については受賞、増刷でもない限り変えられませんのでもし対応できるような良い展開になれば
保守議員×市井の女=新世紀共闘 等の書き換えをしようと思います。
(注2)
元記事なしのツイートひとつだけは何らかの理由で削除されていると確認。