
『コンパートメントNo.6』映画感想文
公開中の『コンパートメントNo.6』を鑑賞してきました。2021年カンヌ国際映画祭のグランプリ受賞作品で、ほかにも色々と受賞しているようです。
(上映はミニシアター)
【あらすじ】
1990年代のモスクワ。フィンランドからの留学生ラウラは恋人と一緒に世界最北端駅ムルマンスクのペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く予定だったが、恋人に突然断られ1人で出発することに。寝台列車の6号客室に乗り合わせたのはロシア人の炭鉱労働者リョーハで、ラウラは彼の粗野な言動や失礼な態度にうんざりする。しかし長い旅を続ける中で、2人は互いの不器用な優しさや魅力に気づき始める。
ときはソビエト連邦が崩壊したあたりの年代。3~4日の寝台列車の旅です。
その道中で登場したSONYウォークマンがとても懐かしかったです。小学生の頃に憧れた品でした。でも、あれ?90年代でしたっけ?という疑問もよぎりましたが、ロシア市場が開放された以降に普及したと思えば90年代以降だとしてもおかしくないのですね。ふむふむ。
主人公とは、ほぼ同世代なので『あるある』と思う描写が満載でした。
誘われたパーティなのに、なぜかひとりポツン子さんになっていたり。公衆電話で順番待ちをしているおじさんがジワジワとプレシャーをかけてきたり。配線を直結してエンジンをかけてみたり。寝台列車の結露のついた車窓から降りしきる夜の雪を見たり。はじめて合った人の何でもない優しさに、ありとあらゆるトゲが溶かされてるような瞬間だったり。猛吹雪の中で笑い合ったり。
そんな描写の数々が、映画の内容とは全く関係ない自分の記憶と紐づいてしまって、なかなか映画に集中できなくて、本編と外れた本当にどうでもいいことばかりに気を取られてしまった。
たとえば寝台列車のドアの絵柄が銭湯のロッカーに使われている柄によく似てるとか、列車の2等車は4人定員だったから本来は対角の席だったねとか、3等車は通路は真ん中で仕切りがなく両サイドがベッドだったね。とか、大ピッチャーみたいなグラスでロシア人は、お茶を嗜み、ピッチャーは片づけないで、どんどん増えてるねとか、寒い地域の人は部屋では薄着だとよく聞くけど、ロシア人は半袖なの?とか、ロシア人はシャイだけど、すごく優しいひとが多い国民性なのかな?とか、早口言葉みたいなペチカの後なんて言ってました?とか
変なところが気になるのはロシアという国を知りたい気持ちなのかな?
印象的だったシーンは、寝台列車を途中下車して立ち寄ったおばさんの家で、おばさんが主人公のラウラに『女の人は賢いから誰の言うことも聞かなくていい』みたいなことを言って。そうだ!そうだ!と心で拍手した。
もうひとつは、終着駅に着くちょっと前の食堂車でラウラが、リョーハに似顔絵と連絡先を書いてとねだるシーンで、苛立ち怒って席を離れるリョーハ。観ている方は『いい感じだったのにどうした?』となるんだけど、これから炭鉱で働くリョーハは住所不定だから連絡先を書けない。書けない苛立ちから怒ってしまう、男のプライドみたいな切なさに『きゅん』としてしまった。
あと港の尋常じゃない暴風でじゃれあうシーンは良かった。強風に吹かれると、自分に憑りついているものが、全部吹き飛ぶみたいで、わたしは強風に吹かれるのが大好きなんだけど、その感覚を監督も持っているのかなって勝手に想像して、うふふとなった。
今回は映画の予約を入れたあと、主人がめずらしく一緒に映画を観ようかなって言って、普段は観たい映画も趣味趣向も違うから、なかなか一緒には観にいかないけど、この映画は一緒に観ました。
フォローしているsekkyさんの『コンパートメントNo.6』の記事の中で「そのタイミング」で満たされることは、とても大事。って書かれていて
主人が放った『一緒に行こうかな』の、そのひとことは、そのタイミングだと察知してのことかと、じんわり思わせてくれる作品でもありました。
この映画の旅の目的でもあったペトログリフは日本にも多く存在しているようです。そんなに興味があるわけでもないですが、旅先にあったら見てみたいなと思いました。
いつも読んでくださり
ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶