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『岸辺露伴ルーヴルへ行く』映画感想文

公開中の映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を鑑賞してきました。

この作品は、2009年に発表されたフルカラー描き下ろし漫画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を映画化したものです。

映画は、年末に放送されているNHKスペシャルテレビドラマ『岸辺露伴は動かない』のキャストがそのまま出演しています。きっとドラスの反響が大きかったから、この映画化が実現したのでしょう。作品の発表から時を経て、こうして実写版を観れるのはうれしいです。

フランス圏では、漫画もひとつの芸術として扱われていて、ルーヴル美術館は、2005年にルーヴル美術館を題材にした漫画制作を、バンド・デシネ(フランス圏コミック界)に依頼しました。このプロジェクトにおいて、日本人として、荒木 飛呂彦先生にオファーがあり『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の漫画は制作され、作品はルーヴル美術館でも展示、販売されました。依頼元がルーヴル美術館の為、漫画制作時も、映画撮影時も、全面的に協力しています。

舞台がルーヴルなだけに、映像はテレビドラマと同じ鮮明な4Kを期待して行ったのですが、映画館の映像は、そんなに鮮明ではありませんでした。宣伝用の映像は鮮明なので、大きなスクリーンで鑑賞しているから、そう観えるのかもしれません。

原作漫画は単行本1冊よりもやや薄い、123頁の作品なので、2時間の映画にするには全然尺が足らず、映画ではエピソードを大幅に追加しています。

アニメ版『ジョジョ』の脚本を多く手掛ける、小林靖子さんが担当していたので『ジョジョ』の世界観を崩さない、素晴らしい脚本でした。凝った音源も、衣装、美術にも文句はないのですが、荒木先生は極限までエピソードをそぎ落とし作品をつくる方なので、効果音として使われている音楽の大きさや、今回メインテーマの黒の使い方などは、気合が入り過ぎてしまったのか多用してしまい、『ジョジョ』らしさが損なわれてしまったような感覚は、少々ありました。

とはいえ、大満足。

岸辺露伴のミステリー要素は存分に楽しめたし、テレビシリーズのみでタッグを組む、天真爛漫な担当編集者、泉京香役の飯豊まりえちゃんの存在が、今回もいい味を醸し出していました。映像での新たな岸辺露伴の世界をつくっていて実に良いです。

『ジョジョ』の登場人物がよくとる、ポージングの描写は、西洋美術の彫刻作品の影響を受けていると『ジョジョ』関連の書籍で読みました。

『すべての恐れから それが何であろうと あなたを守ってあげたい』と露伴が奈々瀬に語ったあのシーンの構図は、ルーヴル美術館の所蔵『アモルの接吻で蘇るプシュケ』とシンクロしているのだとか。アモルはビィーナスの息子のキューピッドです。この神話の、愛の世界観も作品にのせてくるとは、さすが荒木先生です。

ルーヴル美術館 『アモルの接吻で蘇るプシュケ』


岸部露伴シリーズの愛蔵版として出版されてた漫画も、とても美しい作品です。ご興味のある方は、映画と共にぜひお楽しみくださいませ。

【あらすじ】
漫画家の岸辺露伴は、読者に「この世で最も『黒い色』という色を見たことがあるだろうか?」と問いかけ、自分のその問いに関する体験と、そこまでのいきさつを語る。

発端は10年前まで遡る。当時17歳の露伴は漫画家デビューを目指しており、投稿用の原稿を執筆するため、祖母の経営する元旅館アパートに夏休みの2か月間移住する。そこで入居者の女性・藤倉奈々瀬から、この世で最も黒く、最も邪悪な絵の存在を聞かされる。その絵はかつて彼女の地元の地主が所有しており、彼女自身も遠目で見たことがあったが、買い取られて今はルーヴル美術館にあるという。奈々瀬は後に失踪したうえ、露伴もデビュー後は仕事に夢中になり、絵と奈々瀬のことはいつしか忘れていた。

10年後、27歳となった露伴は億泰らとの世間話をきっかけに絵と奈々瀬のことを思い出して好奇心と青春の慕情に駆られ、絵を見るためにルーヴル美術館を訪れる。


過去ジョジョ関連の記事はこちらから
↓ 2021年に放送された劇中に登場したケーキの紹介

↓ 2022年ジョジョ35周年のふりかえり記事


わたしにとって、この世で最も『黒い色』は何なんだろうな?
あとでゆっくり考えてみたいなと思いました。

いつも読んで下さり
ありがとうございます。

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