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孤独のグルメ【映画感想文】
1月10日公開の劇映画『孤独のグルメ』を鑑賞してきました。まずは、めっちゃニヤニヤする楽しいコメディ映画でした。漫画『孤独のグルメ』の劇場版ではなく、主演・監督・脚本を松重豊さんが担当した作品です。
映画は、ドラマの世界観のまま、パリ・五島列島・韓国・東京で腹が減る。食事のシーンはいつもより短めだ。五郎さんがまた無茶ぶりされ、スープの出汁を探す冒険をしながら、ラブストーリーも一緒に展開していく。
五郎さんの言い回しに便乗するなら『この映画かなり好き』。鑑賞後『腹が減った』とならぬように食事を済ませてから映画館に行ったのに、結局腹が減ってきて、北海道物産展で美味しいものを爆買いしてしまった。
隠れキャラの善福寺六郎(遠藤憲一)が登場したカメリハのシーンで、六郎が食事中の呟きを声に出すのだけれど、そのときはじめて、松重さんの食べているお芝居は、声に出さなくても、台本通りに心の声を出して、五郎のキャラを演じているのだと気づきます。
役者なのだから当たり前なんだけど、松重さんのお芝居があまりに自然だから、これまで現場で食べて、後から独り言を入れているくらいにしか思ってなかった。ドラマ『孤独のグルメ』の魅力は料理もさることながら、松重豊の一人芝居に尽きるなあと改めて思う。
ドラマといえば、2024年のドラマはいつもと違っていた。五郎さんは登場するけれど、ゲスト中心に物語が展開する流れで、ゲストが食事しながらの心の声を呟いていた。特にやや金髪の黒木華ちゃんが大型トラック(デコトラ)の運転手に扮し、ドライブインで飯を食らう回は良かった。(光る君でまひろと話したタイミングだったから、そのギャップが面白かった)いつもと違うこの演出は、より多くの料理を紹介するためにゲストにも食べさせたのかと単純に思っていたけど、それだけじゃなかった。
松重さんは映画公開のインタビューで、ドラマはシーズン10(2022年)で、作品としてはひと区切りで、映画は最後に広げる大風呂敷のようなものだとを仰っていた。実在する飲食店に協力して頂くにはスタッフの繊細な対応が必要で、長い歳月の中でスタッフが流出したり世代交代があり、それが難しくなったのだそう。被災した石川県穴水町まで映画を届けた大晦日のスペシャルドラマも、この映画も松重さんが先頭に立って作品づくりをしていたのか。
サブカル界隈をこよなく愛する松重さんが、作り込んだ作品が面白くないわけない。40年来の友だちにつくってもらった主題歌もカッコイイし、エンドロールに流れるピアノの曲もこれまた渋い。
コメディ映画だと思っていたのに、ラストシーンの『ありがとう』で思わず涙ぐんでしまった。どんな願いでも、やれるところまでやろうとする日本のビジネスマンの姿が、働くみんなへのありがとうにも聞こえた。
いつも読んで下さり
ありがとうございます。٩(*'ω'*)و