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パクチーはコリアンダー

新鮮な野菜が手に入る産直のお店に並ぶことから、週末が始まる。順番を待つだけの何もない時間は、夫と空や鳥を見たり、人間観察をしたり、日々のたわいもないことを話したりして過ごす。

いざ、店内に入ってしまうと、別々に行動する。急がないと売り切れちゃうから、あなたはキャベツ、私はハクサイ、と分担することもあるし、基本それぞれが好きに好きなモノを見て回る。

カゴは夫が持っているので、時々合流してカゴに放り込む。後ろから近付いてきたのが夫だと思って、ノールックでカゴに入れそうになったら別人だったり、似たような色の服の人に話し掛けそうになったりする。

先日は、珍しくパクチーが売りに出ていた。しかも大容量パクチーだ。


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NHKの『世界はほしいモノであふれてる』は、夫婦で楽しむ番組だった。

夫が先に「これ、なんかおもしろいんだよね~」と気に入って、「あらほんとだ~」と二人で好んで見るようになった。

ただ流れるものを流されるままに、流れるプールを漂うように、ゆったりゆるゆると見ていた。

去年の夏、それまでとは違う緊張感を持って見るようになったときのこと。細かいことは覚えていないのだが、それまでの放送の思い出深い料理を、コース仕立てにして紹介し、そのうちの何品かをMCのお二人が食べる回だった。

その中で、コリアンダーペーストまみれの緑のリゾットみたいな料理が出てきた。夫が「コリアンダーってパクチーだっけ?」と言ったけれど、私もわからなくて「どうだろうね~」と答えた。

春馬は「コリアンダーが強い」みたいなコメントをしながら、いつものとおり爽やかに食べていたように思う。


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私は一人で車に乗るとき、気分やお天気で音楽を選んで、大きめの音量で聞くことが多い。その時は宇多田ヒカルのアルバムだった。

『パクチーの唄』ご存じでしょうか。NHKのみんなのうたなのか知らないけれど、入っててもおかしくない感じの曲だ。

その『パクチーの唄』の冒頭、セリフがある。

こりゃなんだ? こりあんだー

”みんなのうた”だから(知らないけど)こんなおどけた感じなのか~と思って、意味も考えずさらりと流していた。ずっと聞いていたけど、聴いてなかった。知っていたけど、わかってなかった。

「こりゃなんだ?」のセリフのあとは、

パクチーぱくぱく

と歌が始まる。「パクチーぱくぱく」の繰り返し。

ん?・・・うわっ、そういうことか!

わかるときって突然だ。ピカっと来る。突如、コリアンダーはパクチーなんだ、と繋がる。


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夫と車に乗っているときに、たまたま宇多田ヒカルが流れていて、あ、そうだ、と思い出して、私の大発見を語った。

「コリアンダーってパクチーなんだよ。パクパクパクチーの歌の最初に『こりゃなんだ? こりあんだー』って言うのは、コリアンダーとパクチーが同じだからなんだよ」

「せかほしで見たコリアンダーご飯は、パクチーご飯だったんだね。で、確か春馬はパクチーが嫌いって何かで読んだんだよね~」

「そっか~」と夫。

「食べてたね」「うん食べてたね」「嫌いに見えなかったね」「嫌いじゃなくなってたのかもね」「気を遣ったんじゃない?」「わからないね」「俳優だからね」わいわい。


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大盛り増量パックでパクチーが売られていた日、会計を終えて、「パクパクパクチー」を鼻歌で歌っていたら、夫の鼻歌も「パクパクパクチー」で笑った。

「あれ見た?大量パクチー?」「見た見た、だからこの歌なんだってば」「パクチーであの量でどうするんだろう」「冷凍するのかな?サラダか、ソースにする?バジルみたいに?」「いやいや、それはちょっと」「ジンジャらーみたいにパクチらーみたいな人はいるんじゃないの?」「パクチらーって、コリアンだーでいいんじゃね?」「まんまじゃん」わいわい。

わいわいしながらも、思いだす。コリアンダーご飯食べてたなぁ、って。


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