マンション悲喜こもごも
ぼんやりと信号待ちをしているわたしの耳に飛び込んできた会話。
「さっきいってたのってあのマンション?」
「あぁ、あれ?(やや遠くの方を指さしながら)あれは母が持ってるマンションなの。さっきいったのはそれとは別のマンション」
なんだか景気のいい話をしてるなぁと視線を合わせると、ママ友風情のお二人が、自転車に跨りながらそう話していた。こんないい方をしたら失礼かもしれないが、全然セレブ風ではない。長めの黒髪を一つに縛って、UNIQLOとかで売ってそうなシンプルなトップスにパンツ。すっぴんではないと思うけど、お化粧もとてもナチュラル。どこにでもいそうな(こういう表現もアレなのか?)パート帰りの30代くらいのお母さん、みたいな感じの人。
そして今わたしが立っている都内某所のとある地点は、最近駅直結の高級タワマンが完成したかと思ったら、それに連なるような形でまた別のタワマンが建ったような場所だ。めちゃめちゃキラキラしているようなところではないが、都内では住みやすい落ち着いた街として人気であり、不動産にはうといわたしでも、この辺りの地価(というか賃料?)相場がかなり高いのはなんとなく知っている。へえぇ、母親が所有してるってことはこれらの新しいタワマンではないのかな。でも、マンション持ってるなんて羨ましいよなあ、、、
そんなわたしは生まれたときから賃貸暮らし(両親ともに残念ながら土地に縁がなかった)で、今日も更新料を払わなくちゃいけないってときに。と小さくため息をついてたら
「で、また別にもう一室持ってるんだけど」
え? さっきいってた(その人の)お母さんがさらに持ってるの??すげぇなゴッドマザー!!!! と俄然ダンボになってしまう。しかも「うわ〜それって嫌味ぃ〜??」って感じが全くせず、なんだろう、棒読みというか「ハンカチ持ってるよ」と同じくらいのトーンでいっているような調子で聞こえてくるのがすごい。
「そこ、誰も住んでないのよ」
「住んでないの?」
「そう、だーれも」
さすがにママ友らしきもうひとりが驚いた声を上げたが、その瞬間に青信号に変わり、続きはもう聞こえなかった。
あぁ、あなた何者ですか、あのよかったらご近所さんになりませんか、なんならわたし、そこに格安で住まわせてくれませんかね、えだって誰も住んでないのでしょう?家って人が住んでないと傷みがはやいらしいですし、、、って心のなかで叫んでいるうちに、わたしも駅の改札に着いてしまった。なんだろ、夢だったのかなぁ。
アメブ○(←ビミョーな伏せ字感)とかインスタ(最近ほとんどのぞかないけど)を見ていると、お金持ち自慢みたいなことをしている人が多くて、不景気なのにほんと?って思ってしまうけど、ほんとうに豊かな人っていうのは、派手なものばかり好むのではなくて、こんなふうに日常に溶け込んでごくごく普通に暮らしてるんじゃないかしら。いいなぁ、わたしもマンションそんないくつもいらないから、一つくらい持てる人生を送りたかった、と思いながら更新料を振り込みましたとさ。