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Barへの憧れは、カカオ沼の道中で叶う~memento mori~

おや?ここは2022年の日本であってる??

私はお酒が好きな大人だけれど、Barという世界をほとんど知らない。
憧れはある。
けれど少し、敷居が高い。
女性1人でフラッと入っても大丈夫なの?
色々なお店があるけれど、素人過ぎて「良い」の基準が分からんな。

悶々と考えていると結局「家で飲んだ方がずっと安いし、好きな野菜たっぷりと合わせて食べられるし、満足度高いだろ」という結論に落ち着いてしまう。

それでもやっぱり、Barという世界に抱く憧れは薄れない。
行ってみたいな。

そんな折、なんと薔薇とカカオを使ったカクテルを提供しているお店があると噂を聞きつけた。何それ、超行きたい。

行きたい、行きたい、行きた…行った。


memento mori

あぁ、カウンター席で目の前に並ぶ本やお酒たちも大変良い感じ。
今回気になった薔薇とカカオのお酒を抜きにしても、どこかで聞いた覚えのあるBarだった。きっと私の普段から目にするチョコ情報の中でも時々扱われるお店だったのだろう。

凄かった。とんでもなかった。
全てのメニューが、カカオを使ったものなのだ。
合わせるデザートもそうだが、数多くのカクテルたちも含めて全て、カカオのお店だった。

どひぇ…なんだそれ好き過ぎる。
「選ぶ」なんてできない。

いくつかコースが用意されていて。
とりあえずはコレだろう。私のようなご新規のお客向け、オススメを楽しもうぜみたいなコース。

3杯、4杯、5杯というコース。
お酒だからな、人によって飲める量をしっかり見極めて注文しないといけない。Barが扱うカクテルなんて度数も結構高めな可能性があるし。

…………。
「5杯のコースで、お願いしますっっっ!!!!」
まあ私の場合は自分のペースで飲めばそれなりに強いお酒でも5杯くらい全然余裕な確信はある。

まあお酒で幾度となく様々な後悔を重ねてきた私はお酒に「確信」なんて使うべきではないのだろうが。さすがにもう経験上自分の許容量は分かってきた。…と、思う。
大丈夫、であるならば…できるだけ色々、飲んでみたいものよ。

このコースはカクテルのみ。
酒には塩があれば十分、という人もいるようだけれど、私は合わせて何か食べたい派なんだよな~~~。

店員さん「それぞれ、おすすめのペアリングもありますよ」
私「!!!ぜ、全部…5杯それぞれにペアリングお願いします。もう全部おすすめでお任せします」

ええいままよ。
カクテルコースだけで1万円近くするけれど。
ペアリングで付けてくれるやつでいくらかかるか皆目見当もつかないけれど。ええい、ままよ!!!

「お任せで!!!!」

〜1杯目〜
カカオパルプフィズ
withパッションフルーツのボンボン(アーティチョークチョコレート)

本物のカカオポットからカカオパルプのカクテルを飲む。
カカオ好きとしてこんなに贅沢で楽しい名誉極まることはない。

ん?お酒?
ってくらい凄くカカオパルプで。いや、あのトロンとした甘みがもう少し爽快感あるサッパリ具合になってるかな。カカオパルプらしい爽やかな味わいしっかり、後からホロンとアルコール感が漂ってくる。
あぁ、やっぱりちゃんとお酒だ。
ベースにはウォッカを使っているらしい。
カカオパルプの繊細な味の印象を壊さずに活かす。これはなかなかできることじゃないよ、多分。凄い。

トロピカルな味わいに、黒胡椒のようなスパイシーなコク深さが折り重なる。カカオパルプの爽やかさとも当然のようによく合い、その中でもしっかり存在感を放つ。

爽やかでインパクトのある、良い始まりだ。

〜2杯目〜
果実とカカオのカクテル
with苺&ワインのボンボン( アーティチョークチョコレート)

苺のお酒って度数も弱いイメージがあるけれど、なかなかどうして結構かなり、アルコール弱めの人ならフラッときちゃうくらいには強い感じがする。

それでいながら甘い甘酸っぱい苺の風味がしっかりで度数の高さに全然気が付けず飲んじゃう危ないヤツだ。

苺の粒々までしっかりたっぷり入っているジューシーな果実酒感がある。
余韻に、カカオの風味がふんわり漂ってくるから不思議だ。

赤色の味わいにスルリと異なる色が混じってくる、単に可愛いだけじゃない深い美味しさが染み渡る。

ボンボンショコラもまた、やっぱり当然のように美味しい~。
薄いパリッの中からトロンと溢れ出る瑞々しいソースは、可愛らしい苺だけでなく大人の雰囲気を醸す麗しい赤ワインの風味もたっぷり。
苺のお酒とはそりゃあ相性よく、その中に埋もれてしまわない強さも兼ね備えている。

〜3杯目〜
カカオワイン
withソシソンショコラ

香り良過ぎでは????
はっ…???香りだけで、滅茶苦茶カカオの香りがたっぷり漂う。
うっっっわ、飲んでも口の中にたっぷりカカオが広がる。
カカオニブを漬けたワインというのは飲んだこともあるけれど、その比でなく香りが良過ぎる。

2本のワインに75gのカカオニブを2日間浸して、さらに新しくカカオニブを追加して香りを逃がさない工夫を―――というようなことを教えてくれた。
凄い、とんでもないワインがあったものだ。

大きなグラス中で香りはどんどん開いていくので、提供後すぐと少し経ってからとでまた印象は変わってくる。
だからこそ、ゆっくりゆったりグラスを揺らしつつ楽しむ。

ソシソンショコラって本当にバレンタインシーズンくらいにしか食べる機会がないから、なんだか嬉しい。大きさに比して、マシュマロが大きく面積を占めていて印象的だ。意外とギュッと詰まったしっかり弾力ある歯ごたえで、そのシンプルな甘さが周りのナッティーな独特の甘いポテンシャルを引き出す。

軸のしっかりした複雑な味わいは、カカオの香りがする面白いワインとの相性もばっちりだ。

〜4杯目〜
テオブロマ
withテリーヌ(カカオハンター)

……うっっっまい。
最初から美味しいが、感動がどんどん積み上げられていく。店員さんが「○杯目は特にオススメで〜〜」とか時々予告的に話してくれて「楽しみ〜♪」と期待値を上げていく。この4杯目は特に特に推されていたやつ。分かる。これは押したくなるよね。

コロンビアカカオウォッカをベースに、ヴィンテージのポートワインとカシスと…もう説明書きだけでも美味しい。飲むともっと美味しい。
王の飲み物か、とでも言いたくなるような複雑で高貴な味がする。

以前、珈琲の赤い実の果肉を乾燥させた"皮殻"を使って作るギシルコーヒーというのを飲んだことがある。普通の珈琲とはガラリと印象の異なる、様々なスパイスをふんだんに用いたような豆の味。
それに、少しているなと思った。
味覚は時に、思いがけない記憶の扉を開ける。

カカオハンター様のテリーヌは、そりゃあもう美味しい。やや酸味の強めな、花の舞うような香しさの果実味のカカオは、テロワールがしっかりと感じられる本格派。一度食べたら舌が記憶すること間違いなしだ。カカオハンターのチョコは食べたことがあるから、「あぁまた会えたね!」と口の中が喜ぶのが分かる。そしてその食感がまた…。

テリーヌとは仮の名。
その正体はもはや生チョコである。

何度か、カクテルもペアリングも全てが全てチョコだから、もたれたり飽きたりしないか心配いただいた。まさかのカカオばかりを扱うお店の店員さんに。

私はチョコが好きだからもたれない、なんてことは言えない。ずっしり甘ったるいのがズンズンきたら無理。それこそチョコレートドリンクなんて大抵は半分も到達せずに諦めるくらい、私のチョコ許容量は人並みよ。

それでも一つ一つが尊すぎて、こだわりが深すぎて、さすがに永遠と倍量でも食べられるかといえばそうはいかないものの、提供されるくらいの量ならば幸せにペロリだ。

……本当にこの4杯

〜5杯目〜
薔薇とアマゾンカカオのカクテル
withピスタチオのソシソンショコラ

これだ。
SNSでこいつの存在を知り、お店に足を運ぶに至った。カカオ沼の味を知ってしまった者は、カカオパルプに惹かれる。カカオポットに惹かれる。そして、アマゾンカカオに…ぐはぁっ!!!(吐チョコ)

さて…すっごいローズの香りがする。食べると、口いっぱいにローズの味が広がる。
よく口を切った時なんか、「うへぇ…鉄の味がする」とか言う。そして「おめえ鉄食べたことあんのかよ!!」と突っ込まれる。

まあそれよりは私は薔薇の味を知っているかもしれないが、でも考えてみると「ローズ風味」とかはそれなりに経験はあれど、薔薇食べたことなんてそんなに無いぞ…?
それでも確信的に、これは薔薇の香りで薔薇の味だと本能的に分かってしまう。
魅惑に酔いしれる、ロマンスな雰囲気をプンプンにまとった香りの爆弾だ。

おおっと、やっぱり印象が特に強いから薔薇ばかりい語ってしまうけれど、カカオの味わいもその強い風味に全く負けていない。
薔薇の香りを居心地良い場所に収めるのは、この良いカカオだからこそ成せる技だ。
尊い。やっぱりカカオ好きぃ〜…。

ペアリングにはまたしてもソシソンショコラが登場。が、同じじゃないのよ、全然。
今度はピスタチオが主体。
濃いナッツ感は独自の甘さを貫く。
だからこそ、香りの強い薔薇やカカオに相対する役割を全うする。

テイストは同方向では無い。
1杯目、2杯目の類似性を意識したペアリングとは違う。だからこそ、最後としての華やかな印象が際立つのだと思う。

全てのペアリングを終了してお会計…と先を急いでしまったが、おっとおっと、もうひとつ。
多分カカオティーかな。
なんとなくお会計後にゆったり居座るのもなと思って慌てて飲んでしまったけれど。ふんわりとやさしいカカオの風味が中からじんわりと体を温めてくれる。癒し…。

そうそう、私としたことが写真を撮り忘れてしまったけれど、お通しもカカオ。なんとドミニカ産・ペルー産と、食べ比べができるやつ!!

それに、マンゴー・パイナップル・ココナッツも。ほろ酔いになってきた頃に染みる凝縮した果実感が本当にたまらない。


お会計の際には見ずにクレジット一括で。
お店を出てからそっとレシートを開けると、2万円だった。
(追記:その時は確かに2万円と思ったのだけど、後日改めてレシートを見たら1万円ちょいでした。…なんでだ?やっぱり酔っぱらってたのかな)

ふ〜〜〜〜ん。
わりとミシュラン星付きのレストランでも行けちゃうくらいのお値段だけど。
後悔は、無い。
というか通う、絶対。
ここまでフルコースで注文する機会はなかなか無いかもしれないけれど、サクッと1、2杯でもいいじゃないか。好き過ぎた。

Barに通うことは憧れだった。
感じていた高い敷居は、カカオの誘惑が飛び越えた。

カカオが好きだ。お酒が好きだ。
この先、ここよりも好きだと思えるBarに出会うことはあるだろうか。それは行ってみないと分からないよね。行ってみよう。
ただそれよりも、まずはこのお店との出会いを大切にしたいなという気持ちで今はいっぱい。


何かを好きでいることは、やっぱり素敵なことだ。
それは知らなかった世界に繋いでくれたりする。

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