AI に絵を描かせる、という事
新約聖書のヨハネの福音書の最初に、
「初めに言(ことば)があった。言は神と共にあった。言葉は神であった・・」
とあります。
ギリシャ語の原文では、
"Ἐν ἀρχῇ ἦν ὁ λόγος"
と記されており、ここの "λόγος" を「言(ことば)」と日本語に訳しています。
元々の発音は、「ロゴス」であり、単なるコトバでは無いのです。
古代ギリシャの哲学からはじまってキリスト教の教義にも取り入れられた深淵な概念であります。
ギリシャ哲学では、「世界万物を支配する理法や宇宙理性」とされ、キリスト教に至っては「ロゴス=神であり、その子であるイエスもロゴスである」という解釈になります。
日本にも似て非なる概念や考え方があります。
「言霊(ことだま)」です。
ロゴスが、宇宙の秩序や理を表す原理、あるいは神の言葉や理性を指すのに対して、言霊は、言葉に宿る霊力が現実に影響を及ぼすという考え方であり、共通する部分もあるが根本的に異なった考え方です。
違う考え方とは言え、言葉が創造に関係しているのは面白いです。
AI画像生成では、「スズメが飛んでいる光景を描いて」と書けば、その絵が出てきます。つまり言葉によって絵が創造される、という神の業にも等しい結果を見せてくれるのです。
ロゴスもしくは言霊が、その明確な証として画像生成AI をこの世にもたらしたのかも知れません。
これが、現時点ではまだ2次元の世界に留まっている訳ですが、近い将来、精巧なAI搭載の3Dプリンターが登場したならば、「唐草文様のマグカップを3客創って」と命じたならば、ほどなく目の前に3つのセラミック製マグカップが現れるのでしょう。
そんな遠い将来ではない様に思えます。明治時代の人が見たら「神の御業」であると思うでしょう。
私は、現在、Dalle と Leonald.ai で作画をしていますが、Dalle というAIは面白いです。
時々ゴネます。つまりオヘソが曲がる時があるのです。
「2人のスーツ姿のビジネスマンが握手をしている場面を描いて。その場合、腕の部分だけ表示して」という指示をしました。
ところが、「何らかの理由でエラーが発生して描けません」のような英語のメッセージを出してきます。なんど同じ命令を出しても描いてくれません。
そこで、「絵を描けない理由を示せ」と指示をしたら・・
「私は、直接絵を描くことは出来ません・・云々」と延々と人間の様に腕が無いからなんちゃら・・と変な回答をしてきました。
私も頭にきたので、
「あなたに直接絵を描けと言っているのでは無く、言葉というものを介在して描いてくれとお願いしている。それが出来なければ絵を描くというDalle の本分を放棄したことになる。そんな画像生成AIなど不要である・・」
という大人げない対応をAI様にしたのであります。そしたら今度は、
「指示した文言の中に、ポリシー違反があったかもしれません・・・
特定の個人を描写することはポリシー違反にあたる場合があります・・」
とまたまた、頭にくる回答。
で、私「ビジネススーツを着た2人が握手をしている場面、それも腕の部分だけの表示指定の一体どこに個人を特定する描写があるのか? 何処にポリシー違反があるのか教えて・・」
AI 「ポリシー違反は無いように見えますが、例えば、その握手が自然なものでは無く、強制的に握手を強要された場合は、ポリシー違反となります・・」
こんな暖簾に腕押しの問答を小一時間繰り返して、結局、絵を描いてくれませんでした。
時々、こんなオヘソの曲がる時があるのです。
次の日、朝一で、全く同じ指示をしたら、なんと一発ですんなり絵を描いてくれました。
昨日のAI は、一体何だったのか?
AIでない私には良く判りません。
さて、「Ἐν ἀρχῇ ἦν ὁ λόγοςを絵にして」と指示したら、以下の2枚の絵を描いてくれました。