共創プロジェクトでコミュニティを活性化!土→種→芽→実 のプロセスで育てよう
コミュニティを活性化し持続的な発展を遂げるには、長期的で安定感のある日々の交流の繰り返しだけでは少し足りません。ときには集中的に熱量が生まれるような期限付きのプロジェクトも必要です。そこで今回注目したいのが「共創」という概念です。
共創とは、コミュニティメンバーと運営者、もしくはメンバー同士が協力して新しい価値やアイデアを生み出すプロセスを指します。本記事では、コミュニティ内で「共創の種(アイデア)」が生まれ、「共創の芽(プロジェクト)」が出て、「共創の実(プロダクト)」が成るための方法について探っていきます。
成功しているコミュニティには共創の文化がある。そういったコミュニティですら、共創のプロセスは自然に起こるものではありません。良い作物には良く耕された土が必要なのと同じように、共創にも適切な文化と環境が必要です。奇しくも、Culture(文化)とCultivate(耕す)はラテン語に同じルーツを持つ言葉です。
では、どうすれば共創が生まれる豊かな土壌のようなコミュニティを作れるのでしょうか?そこに蒔いた種が発芽し成長するにはどのような働きかけが適切なのでしょうか?
共創の土壌を耕す:コミュニティの文化づくり
コミュニティにおいて共創の文化を根付かせることは豊かな土壌を耕すことに似ています。適切な環境が整えば、そこからアイデアという種が芽吹き、やがてプロジェクトという芽が出て成果という実を結ぶでしょう。では、どのようにしてこのような土壌を作り上げていけばよいのでしょうか。
まず重要なのは、オープンな対話の場を設けることです。メンバー全員が自由に意見を述べ、アイデアを共有できる環境を用意するのです。オンラインであれば、専用のフォーラムやチャットルームを設置し、定期的にテーマを設定してディスカッションを促進することが効果的です。オフラインでは、カジュアルな雰囲気のミーティングやワークショップを開催し、メンバー同士が気軽に交流できる機会を作りましょう。重要なのは、これらの場が社会的な立場や属性に関係なく、誰もが平等に参加できることです。
次に、失敗を恐れない空気の醸成が不可欠です。新しいアイデアや挑戦的なプロジェクトに失敗はつきものです。しかし、失敗を恐れるあまり誰も新しいことに挑戦しなければコミュニティは停滞してしまう。だとすれば、失敗を学びの機会として捉えて共有し、次の成功につなげる文化を育てることが重要でしょう。例えば「失敗談共有会」のようなイベントを開催し、失敗から得た学びをメンバー間で共有し称賛し合うことで、挑戦を奨励する雰囲気を作り出すことができるかもしれません。
多様性を尊重する価値観の共有も重要です。異なる背景、経験、専門性を持つメンバーが集まり共創することで、より創造的なアイデアが生まれる可能性が高まります。だからこそ、各メンバーの個性や独自の視点を尊重し、それらを積極的に活かす姿勢が必要なのです。多様な背景を持つメンバーによるパネルディスカッションを定期的に開催したり、異なる専門分野のメンバーをペアにしてプロジェクトに取り組む機会を提供することで、多様性の価値を実感できる機会を作ることができるでしょう。
これらの要素を組み合わせることで、共創の文化は徐々にコミュニティに根付いていきます。ただし、文化の定着には時間がかかることを忘れてはいけません。継続的な努力と粘り強さが求められるでしょう。コミュニティのリーダーや運営者も、率先してこれらの価値観を体現し模範を示すことも重要ですね。
共創の文化が根付いたコミュニティでは、メンバーが自然とアイデアを出し合い、お互いの意見を尊重しながら新しいプロジェクトに挑戦する姿が見られるようになります。そこでは、失敗も成功も含めた全ての経験が、コミュニティ全体の成長と発展につながっていくのです。
ではそのような共創の始まりとなるアイデアの種を蒔く方法について考えていきましょう。
アイデアの種を蒔く:創造性を刺激する仕掛け
共創の土壌が整ったら、次はそこにアイデアという種を蒔いていく段階です。ここでは、コミュニティメンバーの創造性を刺激し、新しいアイデアを生み出すための効果的な方法について探っていきましょう。
ブレインストーミングセッションの効果的な運営
ブレインストーミングは短時間で多くのアイデアを生み出すのに効果的な手法です。しかし、ただ単に「アイデアを出し合いましょう」と言うだけでは十分な成果は得られません。以下のポイントに注意して運営することで、より効果的なセッションを実現できるでしょう。
明確なテーマ設定:漠然としたテーマではなく具体的で挑戦的なテーマを設定しましょう。例えば「新商品のアイデア」ではなく「高齢者の買い物を楽にする新商品のアイデア」というように、焦点を絞ることで参加者の思考が活性化します。
判断の保留:アイデア出しの段階では質より量を重視します。「それは難しい」「実現不可能だ」といった否定的な発言は控え、どんなアイデアも受け入れる雰囲気を作りましょう。ダメそうなアイデアを出し合う時間を取るのも面白い場になります。
アイデアの可視化:出されたアイデアはホワイトボードや付箋紙に書き出し、全員が見える形で共有します。これにより、他者のアイデアから新たな発想が生まれやすくなります。また、アイデアと人格を切り離すことができ、不要に傷ついたり傷つけたりすることも避けることができます。
タイムボクシング:時間制限を設けることで、参加者の集中力が高まり、より多くのアイデアが生まれる傾向があります。人間の集中力は長く続かないので、15分から30分程度の短いセッションを複数回行うのが効果的です。
異分野交流イベントの企画
異なる専門性や背景を持つメンバー同士が交流することで、思いもよらないアイデアが生まれることがあります。以下のようなイベントを企画し、異分野交流を促進しましょう。
クロスオーバートーク:異なる分野の専門家によるパネルディスカッションを開催し、それぞれの視点からテーマについて議論します。
スキルシェアワークショップ:メンバーが自身の得意分野や専門知識をお互いに教え合うワークショップを開催します。
ランダムペアプロジェクト:異なる背景を持つメンバーをランダムにペアリングし、短期プロジェクトに取り組んでもらいます。
これらのイベントを通じて、メンバーは新しい視点や知識を得ると同時に、自身の専門性を異なる文脈で活かす方法を学ぶことができます。
オンラインとオフラインの特性を活かしたアイデア創出
オンラインとオフラインそれぞれの特性を理解し、適切に組み合わせることで、より効果的なアイデア創出が可能になります。
オンラインの利点:地理的制約がなく、多様なメンバーが参加可能・アイデアの即時共有や編集が容易・匿名性を活かした率直な意見交換
オフラインの利点:非言語コミュニケーションによる深い理解・偶発的な対話からの予期せぬアイデア創出・実物や空間を活用した体験的なアイデア出し
例えば、オンラインでアイデアの初期段階を共有し、投票などで絞り込んだ後、有望なアイデアについてオフラインでさらに深掘りするといった組み合わせが考えられます。また、オフラインイベントの様子をオンラインでライブ配信し、リモート参加者からもリアルタイムで意見を募るハイブリッド形式も効果的でしょう。
アイデアの種を蒔く段階では、量を重視することが重要です。多様な方法でメンバーの創造性を刺激し、できるだけ多くのアイデアを生み出すことを目指しましょう。次の段階では、これらのアイデアの中から実現可能性の高いものを選び、具体的なプロジェクトとして育てていくことになります。
プロジェクトの芽を育てる:アイデアの具現化
アイデアの種が蒔かれたら、次はそれを具体的なプロジェクトとして育てていく段階です。この過程は、芽吹いた植物を丁寧に育てることに似ています。適切な環境と世話があってこそ、アイデアはいずれ実を結ぶプロジェクトへと成長していくのです。
コミュニティでの共創プロジェクトとして取り組むアイデアの選び方
全てのアイデアをプロジェクト化することは現実的ではありません。限られたリソースを効果的に活用するため、以下の基準を参考にプロジェクト化するアイデアを選びましょう。
コミュニティの目的との整合性:そのアイデアがコミュニティの目的や価値観に合致しているか。
メンバーの熱意:そのアイデアに対してメンバーが強い興味や情熱を持っているか。
実現可能性:現在のリソースや技術で実現できるか、または近い将来に実現可能になるか。
革新性:既存の解決策とは異なる新しい価値を提供できるか。
社会的インパクト:コミュニティ内外に対してポジティブな影響を与えられるか。
少なくとも1,2,3を満たしていればOKでしょう。これらの基準を元にメンバー間で議論し投票を行うなど、透明性の高いプロセスでアイデアを選定することが重要です。
チーム形成とリーダーシップの育成
選ばれたアイデアを具現化するには、適切なチーム編成が不可欠です。ここでは、多様性とバランスを考慮しましょう。異なるスキルセット、経験、視点を持つメンバーを組み合わせることで創造的なチームが生まれます。
また、各プロジェクトにはリーダーが必要です。ここで注意したいのは、必ずしも経験豊富なメンバーがリーダーを務める必要はないということです。新しいメンバーにリーダーシップの機会を与えることで、彼らの成長を促し、コミュニティ全体の成長機会にもつながります。
リーダーの選出方法としては、自薦他薦を募った上で、チームメンバーによる投票や、運営側との面談を組み合わせるなどの方法が考えられます。もしくは、企業が運営するコミュニティであれば該当部署の社員がプロジェクトリーダーになるケースもあります。
目標設定とタイムラインの作成
プロジェクトの成功には明確な目標設定が欠かせません。ここではシンプルに SMART というフレームワークを活用するのがいいでしょう。SMARTは以下の目標設定の5つのポイントの頭文字を取ったものです。
Specific(具体的)
Measurable(測定可能)
Achievable(達成可能)
Relevant(関連性がある)
Time-bound(期限がある)
例えば「コミュニティメンバーの交流を活性化する」という漠然とした目標ではなく、「3ヶ月以内に、週1回のオンライン交流イベントを立ち上げ、毎回10人以上の参加を達成する」といった具体的な目標を設定します。
目標が決まったら、それを達成するためのタイムラインを作成します。大きな目標を小さなマイルストーンに分解し、それぞれに期限を設定します。このとき、チームメンバーの意見を取り入れ、全員が納得できるスケジュールを作るとベターです。
プロジェクトの芽を育てる過程では、失敗や挫折を恐れず、それらを学びの機会として捉える姿勢が重要です。時には当初の計画通りに進まないこともあるでしょう。そんな時こそ、チーム全体で状況を振り返り、コミュニティ全体にプロセスを共有し、必要に応じて目標や方法を柔軟に修正していきましょう。
このようにして丁寧に育てられたプロジェクトはやがて実を結び、コミュニティに大きな価値をもたらすことでしょう。次の章では、そうして生まれた成果を共有し、祝福する方法について探っていきます。
収穫の喜びを分かち合う:成果の共有と祝福
共創プロジェクトの成果が実を結んだとき、それはコミュニティ全体で祝福し、喜びを分かち合うべき瞬間です。この段階を適切に演出することで、メンバーの達成感を高め、コミュニティの結束を強めることができます。さらに、次のプロジェクトへの意欲を喚起することにもつながるでしょう。
プロジェクト成果発表会の企画と運営
成果発表会は単なる情報共有の場ではありません。それは、チームの努力を称える祭典であり、コミュニティ全体で学びを深める機会でもあります。以下のポイントを押さえて、有意義な発表会を企画しましょう。
まず、発表の形式を工夫します。従来のプレゼンテーションに加え、デモンストレーション、インタラクティブな展示、短編動画など、プロジェクトの特性に合わせた多様な表現方法を取り入れましょう。例えば、新しいアプリケーションを開発したチームなら、参加者が実際に触れて体験できるブースを設けるのも良いでしょう。
次に、外部の視点を取り入れることも検討してください。関連分野の専門家や潜在的なユーザーを招待し、フィードバックをもらうことで、プロジェクトの価値をより客観的に評価できます。また、こうした外部との接点はプロジェクトの次の展開のヒントになることもあります。
発表会の最後には、必ず質疑応答の時間を設けましょう。これは単に疑問を解消する場ではなく新たなアイデアが生まれる機会にもなります。質問者の視点から、チームが気づかなかった可能性や課題が見えてくることもあるのです。
成功体験の可視化と共有
プロジェクトの成功を一過性のものにしないために、その体験を可視化し共有することが重要です。これにより直接プロジェクトに関わらなかったメンバーもその過程から学ぶことができます。
具体的な方法として、プロジェクトストーリーの作成が挙げられます。プロジェクトの開始から完了までの道のりを、課題やその解決方法、チーム内での工夫なども含めてストーリー形式でまとめるのです。これをブログ記事や連続投稿の形で公開することで、コミュニティ全体の知識として蓄積できます。
また、プロジェクトで使用したツールやプロセス、得られた知見をテンプレート化し、誰でもアクセスできる形で共有するのも効果的です。これにより次のプロジェクトチームがゼロからスタートする必要がなくなり、コミュニティ全体の効率が向上します。
次のプロジェクトへのモチベーション維持
一つのプロジェクトが終わっても、共創の流れを止めてはいけません。次のプロジェクトへのモチベーションを維持するために以下のような取り組みが効果的です。
まず、成果発表会の場で次のプロジェクトのアイデアを募集するセッションを設けましょう。直前のプロジェクトの成功体験が新たな発想を刺激し、次への意欲を高めることがあります。
また、プロジェクトの成果を基により大きな課題に取り組むための長期ビジョンを提示することも重要です。個々のプロジェクトがコミュニティ全体のミッションにどうつながっているかを示すことで、メンバーは自分たちの活動の意義をより深く理解できます。
さらに、プロジェクトに貢献したメンバーを表彰する制度を設けるのも良いでしょう。ただし、競争を煽るのではなく、多様な貢献を認める形にするのがオススメです。例えば、「最も創造的な問題解決」「最も効果的なチーム支援」など、様々な角度から評価することが大切です。
最後に、プロジェクト終了後もメンバー間のつながりを維持する仕組みを作ることが重要です。定期的な同窓会的イベントや、プロジェクト横断的な交流の場を設けることで、次のプロジェクトでのコラボレーションの素地を作ることができます。
収穫の喜びを分かち合うこの段階は単なるプロジェクトの終わりではありません。それは次の共創プロセスの始まりでもあるのです。適切に演出し、体験を共有することで、コミュニティ全体の成長と熱量の増幅につなげていきましょう。
まとめ
本記事では、共創プロジェクトを通じてコミュニティを活性化させる方法について考えてきました。土壌を耕すところからスタートし、種まき、芽の育成、そして実りの収穫まで、一連のプロセスを詳しく見てきました。
これらの知見を活用することで、コミュニティ内での共創プロジェクトをより効果的に進められるでしょう。共創プロジェクトによって短期的に高めた熱量は日々のコミュニティの熱量につながり、さらにまた次の共創プロジェクトの種子にもなります。こうしたプロセスを繰り返すことで、コミュニティを螺旋状に発展させていくことができるのです。
共創プロジェクトの発展型として、以下のような発展的な取り組みも考えられます。最後にその可能性を挙げておきます。
クロスコミュニティ共創:異なる目的や背景を持つコミュニティ同士が協力し共創プロジェクトを行うことで、さらに革新的なアイデアや解決策が生まれる可能性があります。例えば、技術系のコミュニティと環境保護のコミュニティが協力することで、環境問題に対する新たな技術的解決策が生まれるかもしれません。
AI活用による共創プロセスの最適化:AIを活用してアイデア創出やプロジェクト管理、さらには成果の分析までを支援することで、共創プロセスをより効率的かつ効果的に進められる可能性があります。過去のプロジェクトデータを分析し成功確率の高いチーム編成を提案したり、リアルタイムで進捗状況を分析し、リスクを早期に警告したりするAIツールの開発が考えられます。
ブロックチェーン技術を活用した貢献度の可視化:プロジェクトへの貢献度を透明性高く記録し、それに応じた報酬や権限を自動的に付与するシステムを構築することで、より公平で効果的なインセンティブ設計が可能になります。これにより、メンバーのモチベーション維持と適切な評価が両立できるでしょう。
オープンイノベーションプラットフォームとの連携:コミュニティ内の共創にとどまらず、企業や研究機関、さらには政府機関とも連携し、社会的課題の解決に向けた大規模な共創プロジェクトを展開することも考えられます。これにより、コミュニティの活動が社会に直接的なインパクトを与える機会が増えるでしょう。
これらの発展的な取り組みは、コミュニティにおける共創の可能性をさらに広げ、その影響力を大きく高める潜在力を秘めています。私たちは今、かつてないほど複雑で予測困難な時代に生きています。このような時代だからこそ、多様な視点と知恵を結集させるコミュニティでの共創が、これまで以上に重要になってくるかもしれません。
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