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2025年のトレンド予測!コミュニティは顧客起点経営のベースキャンプになる

現代のビジネス環境は、顧客ニーズの多様化、市場構造の変化、デジタル技術の進化などにより、かつてないスピードで変化しています。そのため、企業が持続的な成長を遂げるには、「良い商品を作って売る」だけでは不十分な時代になりました。

ここで重要なのが、顧客起点経営です。カスタマーレッドグロース (Customer-Led Growth, CLG) とも呼ばれるこのアプローチは、顧客をビジネスの中心に据え、顧客の行動や声を経営判断にダイレクトに反映させることを特徴とします。顧客起点経営を効果的に実践するには、顧客からの意見収集やエンゲージメントを深める仕組みが不可欠です。そのための有効な手段が「コミュニティ」の運営です。コミュニティは、顧客同士がつながり、情報や体験を共有する場です。企業がコミュニティを運営することで、顧客理解を深め、共創によるイノベーションを促進し、ブランドロイヤルティを高めるなど、多くのメリットが期待できます。

本稿では、顧客起点経営の考え方、コミュニティが果たす役割、そしてコミュニティ運営が企業にとって不可欠な戦略となる理由を、顧客起点経営の観点から解説します。それではいきましょう!


顧客起点経営とは?

あらためて説明すると、顧客起点経営とは企業活動のあらゆる意思決定プロセスを「顧客の声や行動」を基軸に据える経営手法です。従来の製品主導(Product-Led Growth, PLG)や営業主導(Sales-Led Growth, SLG)のアプローチでは、企業が考え出した商品や施策を市場に対して一方向的に提供し、顧客はそれを受け取る存在に過ぎませんでした。しかし顧客起点経営(CLG)は、この構図を根本から変えます。顧客を経営パートナーとして捉え、顧客の声をリアルタイムで経営に反映することで、企業自身が常に変化に対応し続けることができるのです。

顧客起点経営が求められる背景には、デジタル化により顧客一人ひとりの意見がソーシャルメディアやオンラインチャネルを通じて簡単に発信・共有されるようになったことが挙げられます。マスへのアプローチでは知り得ない個々のニーズや疑問、不満を可視化し、それをもとに商品開発やサービス改善を行うことで、顧客との長期的な信頼関係を築くことができるようになってきました。

ただし、顧客からのデータ収集・分析だけでは不十分です。重要なのは、そこから得られる「顧客インサイト」を企業活動のあらゆる場面で活かし、顧客の存在そのものを成長エンジンにすることです。顧客が“声”を届ける受け皿を整え、顧客が発言しやすく、企業が素早く学びを得られる体制を整えることが求められます。

コミュニティと顧客起点経営

では、この顧客起点経営を支える具体的なプラットフォームとして、なぜコミュニティが注目されているのでしょうか。コミュニティとは、共通の目的や興味関心を持つ人々が集まって交流する“場”を指します。企業が運営するコミュニティでは、顧客同士が自由に意見交換を行い、その過程で新しい発想や情報を創出することが可能です。これが顧客起点経営の加速をもたらす大きな理由となります。

1つ目の役割として、顧客理解の深化 が挙げられます。顧客は実際に製品やサービスを使用している当事者ですから、どこに価値を感じ、どこに不満を持っているかを最もよく知っています。企業側がコミュニティでの顧客同士の対話を観察・分析することで、表層的なデータだけでは見えない“リアルなニーズ”を把握できます。アンケートやインタビューとは異なる、自然発生的な会話から得られるインサイトは、商品企画やサービス改善の質を一段と高める力を持っています。

2つ目の役割として、エンゲージメントの向上 があります。企業と顧客のコミュニケーションが一方通行ではなく、顧客同士が双方向でやりとりするようになると、企業に対して自発的に情報を提供する熱心な顧客(いわゆるアドボケイト)が現れます。また、顧客同士で解決策を出し合うことで企業のサポート負荷が軽減されるだけでなく、「このコミュニティに所属していると豊かな情報が得られる」という肯定的な感情が、ロイヤルティや購入継続につながっていくのです。

さらに、共創による新たな価値創造 においても、コミュニティの存在は大きいでしょう。顧客起点経営が目指すのは、企業側が用意したプロダクトを顧客が受容するだけでなく、顧客自身もアイデア提供やユーザー生成コンテンツ(UGC)などによってブランドや商品の進化に参画することです。コミュニティはこうした共創活動を活性化し、顧客が「自分もブランドをつくっている」という意識を強く持つ機会を提供します。それにより、企業と顧客の距離は大幅に縮まり、結果として独自性のあるサービスや強力なブランド力が構築されるのです。

コミュニティ運営が企業の当たり前になる

ここまでコミュニティが顧客起点経営で果たす役割を見てきました。ここからは、「コミュニティ運営」が企業にとって当たり前になっていく理由をお伝えしていきます。

まず、既存顧客の重要性が増している ことが大きな要因です。市場が成熟化するなか、新規顧客を獲得するコストは以前にも増して高騰しています。長期的な事業継続の観点では、既存顧客との関係を深め、LTV(顧客生涯価値)を高める方が合理的であるとする企業が増えているのです。こうした状況下で、顧客との継続的な接点を生み出し、商品やサービスの価値を都度認識してもらえる最適な“場”が、コミュニティです。

次に挙げられるのが、顧客エンゲージメントの差が競争優位を左右するようになったことです。広告やキャンペーンなどの一方向的なコミュニケーションだけでは、顧客との本質的な結びつきは築きにくくなっています。顧客同士が生き生きと交流するコミュニティが整備されている企業は、顧客の満足度だけでなく口コミによる新規顧客獲得にも有利です。実際、多くのユーザーは公式広告ではなく他のユーザーの体験談や評判を重視する傾向が強まっています。コミュニティ運営を通じて高められるエンゲージメントこそが、企業の成長エンジンへと変わるのです。

また、顧客との共創がもたらすイノベーション も注目すべき理由でしょう。企業が顧客の声を素早く取り入れ、新機能や新規サービスへと反映できる体制を持つかどうかは、激化する市場競争で生き残るかどうかを左右する大きなポイントになります。コミュニティによって形成される顧客ネットワークでは、製品の欠陥や改善策だけでなく、新製品のアイデア、さらにはサービスの新しい使い方などが提案される可能性が高いものです。コミュニティは企業の“共創プラットフォーム”として機能し、顧客起点経営というコンセプトを具体的な成果に結びつけてくれるでしょう。

こうした流れのなかで、コミュニティ運営を軽視する企業は、顧客との結びつきが弱く、新しい価値創造の機会も逃してしまうリスクが高まります。従来は一部の先進企業だけが取り組んでいたコミュニティ戦略が、今やあらゆる企業にとっての基本的な経営インフラになっていくのは、必然と言えるのです。

まとめ

本稿では、顧客起点経営に焦点を当て、コミュニティがどのようにその成功を支えるかを解説してきました。市場が成熟し、広告手法や販促施策のみでは差別化が難しくなるなか、コミュニティこそが持続的な成長を支える重要資産となるのです。こうした流れはすでに世界的に広がっており、「顧客起点経営を実現するにはコミュニティ運営が欠かせない」という認識が一般化していくのが2025年のトレンドの1つになるでしょう。

もしあなたの会社がこれから顧客起点経営を推進しようとするのであれば、まずは自社製品やサービスに強い愛着を持つ顧客が集まるコミュニティをどのように構築・運営するかを真剣に検討してみることが重要です。そのためのナレッジはこのCommune Community Lab というnoteマガジンで今年も発信し続けるので、ぜひフォローしてチェックしていただけたらと思います。

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黒田悠介|コミュニティ研究家|Commune Community Lab 所長
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