『短歌往来』2022年7月号
①葉桜は風に揺れをり野獣派の時代たちまち終へにしマチス 栗木京子 マチスが野獣派と呼ばれる絵を描いていたのは三年間ほどらしい。葉桜を見ながら思っているのは後年の切り絵のような作品だろうか。たちまち、に葉桜に通じる、画家の生命力を感じる。
②ジャングルジムのほのあかるめる天主堂(エクレシア)―天体はいつも半裸である 井辻朱美 夜闇の中でジャングルジムを透かし見た時、その形に天主堂を思ったのだろう。ジャングルジムの骨組みを通して天体を見ているのだろう。下句が魅力的。どう半裸か分からないが惹かれる。
③星の無い夜に落としたものがある二度と拾えぬ分かっていたさ 川本千栄 特集「天体のうた星座のうた」に十首載せていただきました。連作として自分なりにかなり工夫したつもりです。お読みいただければ幸いです。
④星形の星が球体なることのうつつ寂しくなりて目を伏す 冬道麻子 自分の十首と「天体の愛誦歌」とその鑑賞文というページでした。私の選んだ愛誦歌は冬道麻子の一首。認識と現実のずれについて私の読みを書きました。寂しさが読む者の心を打つ歌です。
⑤わが恋をみちびくほしとゆびさして君ささやきし浜寺の夕 与謝野晶子 山口美加代の愛誦歌は与謝野晶子の一首。出典は「明治33年大阪浜寺の寿命館の歌会」とある。歌集名が無いのは未収録だからか。最初期のものだろう。ちょっと気恥ずかしいような若さに満ちた「君」は鉄幹か。
⑥吉川宏志「連載 結社の顔 塔」〈「塔」は1954年に、高安国世を中心に結成された。〉主宰・吉川宏志の語る「塔」。この連載は結構なボリュームがあり、「塔」の歴史から、まさに今、現在までたっぷり語られている。「塔」の会員にもそうでない人にもぜひ読んでほしい。
2022.7.16.Twitterより編集再掲