ササッと紗季のひとりごはん☆蒸し野菜で乾杯!
34歳のシングルウーマン・紗季の簡単ごはんを短編小説形式で綴ります。
「あ~、やっと帰れる」
金曜日、紗季が社を出たのは9時過ぎだった。
同僚に「飲みに行こうよ」と誘われるが、「いや、今日は早く寝たいわ」と断る。
「今日こそはもっと早く帰れると思っていたんだけどな…」
つぶやきながら電車に乗る。今週は11時近くまでの残業が続いていた。
ようやく一つ仕事が片付いた。と言っても終わってはいないが、こちらからの提出物第一弾は終わった。
近所のスーパーは10時までだ。何とか間に合うけれど急がなくては、と駅から小走りになる。
飛び込んだら、閉店まであと15分。
野菜コーナーへ。
「最近野菜を食べていない・・・。体が潤っていない感じがするな~」
すでに棚はスカスカだ。
あまりいいものが残っていない。
ペタペタとシールが貼られているお惣菜には、手を出す気にはなれない。
ここ何日か、出来合いのお惣菜やコンビニ弁当ばかりだった。
ふと見ると、しっかりした大きめのとうもろこしがある。1本200円。
「うん、安くないけどいいや、これにしようっと」
皮にくるまれているが、黄色い実を想像して食べたくなった。今年はまだとうもろこしを食べていない。
「1本でいいや。すぐ食べないと身がやせちゃうから」
それと、オクラ、キャベツの半分、ナス、プチトマトをポイポイと買い物かごに入れる。
家に何があったっけ?
すぐには思い出せない。
玉子はあったはず、でもお肉類はない。
豚肉と唐揚げ用のもも肉、ベーコンを買い物かごに入れたら、閉店の音楽が流れ始めた。
あとは、え~っと豆乳でも買って、もう終了。
エコバッグに入れたら、結構重くなった。
仕事バッグにも資料と本が入っている。足が重いが、「あと少し」と言い聞かせながら歩く。
「疲れた~」
でも今日はとりあえず、家でご飯が食べられる。そのあとすぐに眠れる。
自宅につくと、小さなキッチンにドサリとエコバッグを置く。
やることとやりたいことがたくさんありすぎる。
まず、何か食べよう。
さてどうしよう。そうだ、蒸すぞ。
とうもろこしを出して、皮をむく。
3つに切って、折りたたみ式の簡易蒸し器を出す。
鍋に水を入れて、火をつけて、蒸し器をのせる。
すぐに着替えて、化粧を落としてシャワーを浴びる。
出てくるとシュンシュン鍋から蒸気が出ている。
「あと、なににしよう。とうもろこしだけっていうのもねえ」
買ってきた野菜をしまいながら、冷蔵庫を見る。
大したものはないけれど、にんじんが見つかった。
「そうだそうだ」と思いついて、しまったばかりのオクラとキャベツとプチトマトを出す。
ニンジンは1本の半分、皮をむいて5ミリ厚さに切る。
キャベツは外側の1枚だけはがして、中の2,3枚をむいてちぎる。
オクラはヘタを切り落とす。
にんじんをポイポイと蒸し器に入れる。
バッグを片付けてから、キャベツとおくら、プチトマトを入れる。
小さな簡易蒸し器はぎゅうぎゅうだが、押し込んでふたを閉める。
「今日はお肉はもういいや。野菜だけで!」
たまった郵便物を片付けながら
「もういいかな~?」
と蒸し器を覗き、竹串でにんじんをチェック。
「よし、火が通ってる」
鍋つかみでそろそろと蒸し器を持ちあげる。
「あちち~、でもおいしそう!」
蒸し器には、キュッとしまった山吹色のとうもろこし。オレンジ色のにんじん、薄緑のキャベツ、濃い緑色のオクラが色鮮やかに並んでいる。
「よしよしよし」
お皿を出して、ゴロゴロ乗せる。
「え~っとどうやって食べるか考えていなかった。そうだ、オリーブオイルと塩が簡単でいいや」とにやり。
以前にレストランでホットサラダを食べたことがあった。そのときにオリーブオイルとスパイスソルトで食べておいしかったのを思い出したのだ。
そこにはトレヴィスやパプリカ、ミニコーンなどがあってずっとゴージャスだったが、温かい野菜という点では同じだ。
「だったら白だよね。冷蔵庫の中は寂しくても、ワインはあるぞ」
ふっふっふと白ワインを出して、開ける。スクリューキャップだからすぐに開く。
紗季はひとりで
「かんぱ~い!」
「ふわ~、冷えてる! 効く! いい香り~」
安物だけど、きりっとした酸味がジュワッと広がる。草みたいな香りと、グレープフルーツみたいなさわやかさ。
「お~、疲れが飛んでいく」
カラフルな野菜たちにオリーブオイルをたら~りと、かける。
塩をお皿のはしっこにのせて。
「とうもろこしはまだ熱そうだから、にんじんから」
「お、甘い!」
次にキャベツ。そしてオクラ、プチトマト。
「オリーブオイルが合う!」
塩が野菜の甘みを引き出していた。
「いけるね。それで、最後にとうもろこしっと」
両手で持ってかじる。
ガシガシガシ。
「んまっ!」
一粒一粒の中からプチプチうまみと甘みがはじけてくる。
オリーブオイルをまぶすととうもろこしの熱で、いい香りがふわんと立つ。
またかじると、なめらかな、少し優しい味わいに変わっていく。
ワインをゴクリ。
「あ、いいな。すっごくおいしくて幸せ」
「ひと仕事終えた後の一人乾杯、最高!」
友人や家族や恋人(今はいないけど)との乾杯も、すごく好きだけど、一人の乾杯っていいよね。こんな一人酒もいい。
「今日もお疲れさま、私! 自分に、乾杯!」
さて、撮りためた番組を見るか、ゆっくり音楽を聴くか、本を読むか・・・。いずれにしても、早めに寝落ちしそうな予感。
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