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紅を差すときの胸の高鳴りがまたほしくて
私は口紅を差さないと、顔色が悪く見えて。
暗~い感じになってしまう。
だからメークの基本は、ボヤボヤの眉を整えて、口紅を塗ることだった。
ずっと。
だんだんといろいろ塗るようになっていったけれど。
でもマスクで隠れてから、口紅を手に取ることはほとんどない。
紅筆も、化粧品ケースに埋もれたまま。
もともとあまり化粧をしない方で。
というか、とてもヘタで。
買っても使いこなせない化粧品が、引き出しにいくつもある。
数少ない「最後まで使いきる化粧品」が口紅とアイブロウペンシルだった。
でも一昨年買った口紅は使いきれそうもない。
口紅の消費は6割減とも、7割減とも、聞く。
紅を刺す、という表現が好き。
女になる瞬間、みたいな気がして。
女の子が、女になる。
小さな時に母の鏡台を覗いて、初めに手に取ったのは口紅だった。
華やかなローズ色。
ちょっとだけ、つけてみる。
かいだことのないような香り。不似合いな、鮮やかさ。
悪いことをしたような気になって。
胸が痛いくらいドキドキした。
アルバイト代で自分の口紅を買ったのは、大学に入ってから。
オレンジ系か、ピンク系か。悩んで、ちょっと安いピンクにした。
それが正解だったようで、ほめられた。
でもつけるのはお出かけデートの時、くらいで。
気がつくと忘れている。
そんなことを繰り返した。
化粧がようやく身に着いたのは、社会人になって少しして。
先輩にやんわりと「メークした方がいいわよ」といわれてから。
ものぐさの、遅咲きだ。
出かけるときには口紅を携えるようになって、久しいのに。
今はZOOM会議の時、色付きのリップをサッと塗るだけに。
紅を差さなくなって、忘れたのは女になる瞬間の、ときめき。
眉を描く時にはない、高鳴り。
また、いつか。
遠くない日に。
花を咲かせるように、紅を差したい。
出勤しても、ササッと支度して、サッと出る。お出かけはほとんどなくて。
玉に着物を着るときだけ、おしゃれを思い出すけれど。
口紅を忘れて、長い、です。
キスマークとか・・・なつかしい響き。
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