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第2部 『地方から都市へ』都市へ飛び込んだ自治体職員 インタビュー

編集長@吉田です。

前回の第1部では地方における人材不足という課題への取組として「地方自治体職員育成研修プログラム」を紹介した。

今回は、2023年4月よりこのプログラムを実践している長野県高森町宮澤歩夢さんとのインタビューをもとに、このプログラムの内容や成果について改めて考えてみる。

自治体職員育成研修プログラムと長野県高森町

今回、長野県高森町がこの研修プログラムへ参加した背景には、弊社プラットフォームサービス株式会社の取締役であり、地方連携特命官である寺本英仁が、長野県高森町で若手職員への人材育成研修を行うこととなったことがあげられる。

この若手職員への人材育成研修の一環として、自治体職員に外から自治体を見直すというきっかけを与えることを目的に、高森町町長と話し合った結果、今回の研修プログラムが作成された。

長野県高森町は長野県南部に位置し、中央アルプスと南アルプスに囲まれた自然豊かな地域。
東京まではバスで4時間ほどと、頑張れば日帰りはできなくもないが、遠くはないが近くもないという距離。
人口は1万人程度と、周辺の市町村に比べると比較的小規模な町である。

今回、研修プログラムへの参加者は1名。期間は2年間とし、受け入れ先の企業は様々な地方連携事業を行っている「ちよだプラットフォームスクウェア」を運営するプラットフォームサービス株式会社とした。

高森町から研修生としてきたのは20歳の「宮澤歩夢」さん。
最初に会ったときには、まだ20歳になったばかりの若さ溢れる雰囲気と、初めての東京の民間企業に緊張している姿が印象的だった。

しかし、とても明るく、何にでも物おじしない性格なのか、すぐに東京の職場にもなじみ、明るい笑い声と共に、毎日研修に励んでいる。

また、物事を吸収するスピードも速く、業務もそうだが、物事に対する考え方など、最近では見違えるほど成長し、自分から積極的に物事に取り組んだり、様々な事業を推進したりと、大活躍している。

そんな彼女にまずは、「高森町役場勤務への想い」と「今回の研修への参加を希望した動機」を聞いてみた。

※インタビュアー:編集長@吉田

高森町への想いと東京への想い

吉田>
なぜ高森町役場に勤めたの?

宮澤>
志望動機は「働く女性の味方になる」を目標にした街づくりをしたかったからです。

高森町自体は子育てとか女性起業支援などに力をいれていて、この町であれば自分の目標の達成に関わることができるのではないかと考えました。

現在は共働きの時代なので、子育てをしながらも女性が輝いて働いていける街を作りたい、働く女性を応援してくれる街で力になっていきたい、そういう思いで高森町役場へ就職しました。

例えば学童クラブなどは、他の市町村だと低学年までしかみてくれないのですが、高森町の学童クラブは対象が小学1年から6年まですべてを対象としていて、働く家庭に優しいものとなっています。これを目当てに町外から移住してくる人もいるぐらいに好評です。

しかし、一方で、現場では指導員が不足しており全学年の小学生に対して運営するのが難しいという問題もあります。
その問題を解決するため課内で話し合いをした際に、対象を3年までにしたらよいのではという案を出しましたが、今までの対象範囲より狭くなるということを住民のみなさんに理解してもらうのはなかなか難しい、という意見もあり、問題解決には至りませんでした。

やはり良い取り組みでも、それを持続させていくことの難しさということを改めて実感させられました。

吉田>
確かにリソースが無尽蔵にあるのであれば、良いと思える取り組みをなんでもできる部分はあるかもしれないけど、限られたリソース、限られた条件の中で、どのようによい取り組みを持続させていくかは難しい問題だね。
そこには新たな視点が必要となるかもしれないね。

では、なぜ今回の研修プログラムへの参加を希望したの?

宮澤>
高森町では高卒で入った職員を1回外に出すという出向制度を取り入れており、その出向先はだいたい長野県庁や行政職に行ったりします。
今回、高卒で入った自分が対象者となったわけですが、出向し他の現場で働く経験をするのであれば東京がいいと思い、町長へ伝え、今回の研修プログラムへの参加となりました。

吉田>
なぜ東京がいいと思ったの?

宮澤さん>
まずは東京への憧れがありました。
おじさんが東京に住んでいるので、年に1回程度訪れる機会はあり、その都度、自分の住んでいるところにないものがたくさんあるな、と感じていました。

高いビル、大きな会社、様々な人、先進的、日本のトップ、他にはない情報
そんなものが東京にあると。

また、同じ県の中で働くよりも、日本の中心地である東京で働いた方が、色々な刺激を受けることができるとともに、今までにない視点を得るなど、自分のためにもなると考えました。

今は地方でもネットで様々な情報は入手できるし、購入もできるし、オンラインでセミナーも受けれるし、ミーティングで色々な人と出会うことができますが、実際に東京に来て実際に会ったり、面と向かって話してみたりしなければわからないことが多々あると思っています。


高森町への想いをしっかりと持ちながらも、環境を変え、自分自身を変えていきたいという想いも感じられた。
自分たちの町をよくしていきたい!
そういう想いのある自治体職員の方にこの研修プログラムは参加してもらいたい。

次に、今回の研修によって東京での暮らしが始まったのだが、その暮らしの中で感じたことや、研修先で気づいたことなどを聞いてみた。

『地方と東京』そして『自治体と民間』

吉田>
実際に東京の会社に勤めてみてどうだったか?

宮澤>
日常生活の中の小さなことにも新鮮さを感じていました。

例えば、朝コーヒーを買いにコンビニや近くのお店に行く、ということ自体にも自分の今までの生活とギャップを感じます。
地方では近くにコンビニがなく、買いに行くにも時間がかかる。地方の多くの人は自動販売機で購入したりインスタントですませたりするのですが、東京ではどこでもコーヒーを買うことができる環境がある。

あとは、プライベートな出会いが増えました。

高森町にいるとプライベートでも知っている仲間と遊んでばかりで、新たな出会いの場にはあまり期待していないし、時間をかけようとも思わなかったです。
どこかに出かけて誰かに会っても、その人は結局知り合いの誰かと繋がっていたりと、地方特有の世界の狭さを感じてしまって。
5日間働いて2日しかない休みで、知らない人と過ごすのに時間をかけるのであれば、気の許す友達と過ごしたいなと思ってしまっていました。

けれど、東京に出てきたら新たな出会いを求めるパワーがでてきました。

もともと私は人の目を気にするタイプでしたが、誰も自分が思っているほど自分に興味がないから別に何を思われてもいいし、というある意味「開き直り」ができるようになりました。
東京ならではの人と人との距離感が自分を行動的にさせているなと感じています。こういうメンタル的に強くなった部分は東京に出てきてよかったと感じます。

吉田>
それでは仕事場はどうですか?高森町役場と研修先の企業とでは?

宮澤>
自治体と民間企業の働き方の違いは想定はしていましたが、改めて違うことを実感しました。

自治体では、前年度のうちに事業が計画され、予算が確保され、来年度のスケジュールがあって、それをもとに事業が行われていきます。
民間企業は、上がこうやろうと言ったらすぐに予算がついて実行されたりと、予想していない事業が増えたりと、スピードが速く臨機応変な対応が行われていると感じます。
どちらが良いというわけではなく、それぞれに良い部分があると思うので、良い部分を自分の中に取り入れていければと思っています。

今回、プラットフォームサービスにおいて仕事をしている中で、一番感じているのは「何のためにその作業をしているのか」を意識することです。
本当にやる意味があるのか、もっと違うやり方はないのか、など一回冷静に考える力がついたと感じています。

プラットフォームサービスの社員と真剣に意見を交換し
よりよいものを作り上げていく姿勢がにじみ出ている!

今振り返ると、役場にいた時は何のためにとか目的とか考えながら仕事をすることができていないくて、とにかく目の前のことを片付けていくという感じで、計画性なく仕事をしていたなーと。

こういう部分は今回東京で仕事をするという環境を変えることが、自分自身の仕事のやり方を見直すいいきっかけになったと感じています。


気心が知れる同じメンバーで働くことは楽しいし楽なのだが、その環境に慣れてしまったときに、色々なことに疑問を投げかけたり、考え直してみたりという行動が起こりにくくなってしまう。

この研修プログラムで、普段過ごしている場所や普段働いている場所とは異なる環境に身を置くことなどで、様々な気付きを得ることができる。

次に、今回の研修の中で長野県高森町として職員に都市で研修を受けさせるという目的にはどのようなものがあるのか、その目的は達成することができたのか、を聞いてみる。

外に出て高森町と接することで見えてきたこと

吉田>
今回、都市で研修を受けることによって実現したい目的は?

宮澤>
目的としてはやはり高森町をPRすることです。
こんなに素晴らしい高森町を知ってもらいたい、という思いでした。

今回、東京で開催した「ちよだグルメショップでのマンスリーフェア」や「ちよだプラットフォームスクウェアの入居者による忘年会」「地域の飲食店に協力してもらい高森町の特産品を使った料理を提供したグルメナイト」など、様々なイベントで高森町を知ってもらうことができたというのはとてもよかったと感じています。


これらのイベントを行う中で、高森の事業者の方々と交流を持つことができたのもよかったです。改めて高森町の良さを認識することもできたし、人の温かさも感じることができました。

その一方で、高森町のことをPRしようとして逆に自分自身が高森町のことをあまり知らなかったことを痛感しました。
高森町役場にはいましたが、それだけで高森町のすべてを知れるわけでもなく、従事していない業務のことは全然知らないことが多いことが改めてわかりました。

また、東京の人を連れて高森町を案内したこともありましたが、その際にも高森町の良さをどうやって伝えたかよいかわからず、結局あまり良さを伝えることができませんでした。改めて、良さを伝えることって難しいなと実感しました。

高森町のキャラクター「柿丸くん」と
高森町への愛が溢れている!

今回の経験をもとに、高森町に戻った時に、あの部分はこういうことだったら解決できるんじゃないかとか、こうだったらやれるんじゃないかと思うようになれる気がします。
そういう考えを高森町にフィードバックできることが、自分が東京で研修を受けている意義になるなと感じます。


外から自分の自治体を見ることによって、今までは考えなかった新たなる視点が生まれ、その視点で自分たち自治体を見直すことができる。
そういう機会を創出することができるのも今回の研修プログラムの醍醐味だと感じる。

最後に、研修は2年間なのであと1年残っているわけだが、あと1年の間でやってみたいと考えていることは何か?について聞いてみた。

そして2年目の野望

吉田>
研修はあと1年だが、そこでどんなことをやっていきたいの?

宮澤>
1年目では食を通じて高森町をPRすることはある程度できたと思うので、今年は今までやってきたことを継続しながら、高森町へ若者を取り戻していく活動を行っていきたいと思います。

高森町のような地方の町では、若い人たちはみんな都市(東京、名古屋など)に出て働いていしまっています。自分の同年代も半分以上は都市へ出て行ってしまっていて、戻ってこない。そういう人たちに高森町に帰ってきてほしい。若い人たちが戻ってきて、高森町がより活気溢れる町にしていきたいと思っています。

高森のよいところは人が温かいところ。けれどそれだけでは街に人は戻ってこないし、そもそも温かさは実際に伝わりにくい。

それじゃどうすれば戻ってきてもらえるのか?と考えた時にやっぱり仕事なんだろうなと感じています。魅力的な仕事、条件のよい仕事がなければやっぱり戻りたいとはならない。

プラットフォームサービスに勤務している中で、シェアオフィスに入居している様々な企業の方と会う機会があり、世の中には様々な仕事があり、様々な人が楽しそうに働いているんだな、と感じていました。
そんな様々な魅力的な会社が高森町に来てくれると、若者にとっても魅力的に見えるのではないかと。

以前にプラットフォームサービスの社員旅行に同行させてもらった際に、
秋田県五城目のババメベースという施設を見学しました。

ああいう様々な企業が集まってどんどん町おこしをするような場所があり、働く場所が生まれていけば若い人たちも戻ってくるのではないかなと考えています。

最終的にはこの2年間で培った都市との関係性を継続していけるような都市と地方が相互に連携できるプロジェクトを立ち上げていきたいと思っています。


研修期間である2年間のうちの1年間が終了したが、この研修プログラムを経験する中で得られたものは大きかったことが感じられた。

残り1年で、どのようなチャレンジをし、たくさん成功や失敗を経験しながら、地方と都市の連携を担っていけるような人材へと育ってもらいたい。
そのためにも様々なチャレンジに対してプラットフォームサービスとしては協力を惜しまず、一緒に進んでいければと考えている。

そして研修を終えて高森町へ戻った時に、いい意味での異質な存在として、周囲へ影響を与えることができるようになっていってもらいたいと思う。

1年目でこれだけ職場になじめているのも凄い!
2年目のさらなる飛躍に期待してます

この研修プログラムについて詳細を聞いてみたいという自治体の方々のお問合せについては随時以下のフォームにて受け付けております。

どのようなプログラムなのか?
どのような契約となるのか?期間や人数などは調整できるのか?
などなど、お気軽にお問い合わせください。


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