密室大阪城 安部龍太郎
大坂夏の陣、淀殿と秀頼の物語。一般的には、秀頼のひ弱で頼りないイメージが広がっているがそうではないことを実際の文献をもとに忠実に追って行った小説。
淀殿については錯乱して徐々に判断が全くできなくなっていく様子が生々しい。戦をする準備がない者が戦をするといかに脆いか、また赤子の手をひねる用に容易く絡めとられるか理解できる。人間ぎりぎりの瀬戸際まで追いつめられると胆力がものをいうし、その人そのものが如実に出てくるものだ。
大河ドラマ等では淀と大阪城の落城とともに秀頼は亡くなったとする説をとっているものが多かった。実はこれはどうも事実と違うようだ。昭和55年に京橋口三の丸跡より愛馬太平楽と思われる馬の首と、2名の殉教者とともに埋められていた頭蓋骨が発見された。これが秀頼の首と推定され現在、京都の清凉寺に納骨、秀頼公首塚が建立されているとのことだ。切腹して侍として果てたというのが実際のところのようだ。このことは、もう少し広がってもよいと思われるし、京都に行く際には訪れてみたい気にさせる。
安倍氏の小説は、丁寧に調べ上げ、事実をどこまでも突き詰め、その先にある登場人物の心の機微を織り上げていく。非常に説得力を持った小説だと感じさせる1冊。大河ドラマよりも面白い。
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