学校弁護士 神内聡
「スクールロイヤー」という言葉がどれくらい浸透しているだろうか。最近よく耳にすることがある、というわけではない。しかも、そのスクールロイヤー自身が書いた一冊だ。ほとんど知らないが子どもの教育には関心の高い人も少なくない。教育の現場に何が起こっているか知りたくてこの本を手にした。
「学校は大変」ということはよく耳にする。子ども問題の複雑さ、勉強すべきこと自体の混乱、家庭をはじめとする環境の多様化。教育への期待が大きいだけにやらなければならないことは年々増える一方だが、先生の人的な対応には限界がある。そこで、スクールロイヤーという役割が注目を浴びているようだ。
しかしながら、結論から言えば、スクールロイヤーに過度の期待はすべきではない。解決にならないというわけではないが、教育現場と法律というものはなじまないケースが多いようだ。むしろ、法律が現場の感覚からすると間違っていることも多々発生する。法律は万能ではない。理由は法律を作ったものが教育現場を理解しないままに法律としてしまったために大きな食い違いが起きている。
本の内容は、現場で問題となっているいじめ、虐待、不登校、高速、保護者対応、体罰、部活動、学校事故と多岐にわたる。そして、最後の章は「教師の過重労働」実は、さまざまな問題の原因はこれに原因があるといっても過言ではない。「先生」というものに父兄はあまりにも聖域視してしまった。そのため部活動から生徒指導まで期待を寄せ、また、文部省管轄の県、市町村の教育委員会の管轄という一面も持ち合わせている。忙しくならないわけがない。本業である子どもと向き合う時間を持たせるためにどうしたらよいかを具体的に考え、行動する時期。
ますます子どもの格差、先生の過重労働により世の中の格差が広がりかねない状況であることは間違いない。「おわりに」にある、筆者の『今回の新型コロナウィルスの激動の中でわかったことは、「日本の教育政策には子どもたちの目線で考えるスタンスが決定的に欠けている」ということだ』という言葉は重い。どれだけの政策を打ち出したところでこの視点が今まで欠けていたかということ、今後の様々な教育政策が出てきたところでこの視点があるかないかを見ることで有効であるか政策かどうか見極めることが出来そうだ。
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