鬼神の如く 葉室麟

主人公は黒田藩栗山大膳、歴史では黒田家3代藩主忠之とのお家騒動で有名な人物。その黒田騒動を題材に小説としたのがこの一冊。脇役として登場するのが夢想権之助と宮本武蔵、そしてこの時代の将軍家光と聞くと不思議な印象を受ける物語。

これが葉室麟の手にかかると見事な小説となり、栗山大膳の半生を描いている。しかも、鬼神、もののふとして黒田家を建て直す小説である。

大膳については、忠臣、逆臣いずれの見方もあるようだが忠臣とすることによって、黒田騒動は美談となり、なかなか歴史に現れることのない栗山大膳が単なるもののふではなく、鬼神として徳川家、黒田家、細川家など様々な思惑が入り乱れる中で、すがすがしい生き様が何なのかということを見せてくれる。これが葉室麟が理想とする生きざまでもあるのではと思わせる。

葉室氏の小説は、切なくなるような清涼感を持つものが多いが、この小説はドキドキハラハラ、スリリングさをも持ち合わせ、ジェットコースターに乗ったような気分にさせてくれる。これでもかと裏を探り合い、思惑と思惑の狭間で生きていくための指南書でもあろうかのような小説。

歴史小説って面白い!


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