その切符って買えますか…?旅行計画を立てるときに注意すべき、まさかの落とし穴
線路は続くよどこまでも、されど切符は繋がらず。貴方の買おうとしている切符は、本当は買えないかも知れません。今回はそんなお話しをします。
池袋(東京都区内)-関山(えちごトキめき鉄道)の乗車券が買えなかった件について
今回、身内より次のような切符の購入を依頼されました。
普通に考えたらこのような切符の手配は別段難しくはありません。
上野-長野の北陸新幹線の指定席を押さえ、あとは東京都区内-関山までの乗車券を買えば終わりです…と思ってました。
ところが、そうは問屋がおろしませんでした。
そう言ってみどりの窓口職員は次のようなサイトを見せてくれました。
(JR公式ではなく一般のサイトだそうです)
<- JR 連絡運輸 取扱会社線一覧表 ->
これによると…。
つまり東京からだと長野からそのまましなの鉄道に乗り継ぐ切符は買えず、長野で一度下車してから切符を買って乗り直さなくてはならないという…。
何やそれは!!何度も言うけどもともと同じJR(さらに言うともともとは同じ国鉄)やぞ!!
納得いかない私は、みどりの窓口を出て券売機で乗車券だけ買うことにしたのでした。
ほれ見てみいや、出るやないけ。
ちょっと待てや!!
だったら何で切符買うときの行き先に表示されんねん!!
責任者出てこーいっ!!(←嘉門達夫「ハンバーガーショップ」)
それどころか券売機では長野まですら買えず
もうしゃあない、関山まではあきらめたるわ。
長野まで券売機で買おうっと。
「長野」ポチっとな(古い?)。
ん…?
おかしいな、何でルートが全部中央線経由なんだ??
この券売機作った人ってあずさ推しなのかな??
!!!!!!!!
そうか、そこは盲点だった!!
横川-軽井沢間、新幹線の開通と共にレール剥がされとるやん!!
そして軽井沢から先はしなの鉄道…。
そもそも横川-軽井沢がバス輸送となるうえ、軽井沢から先はしなの鉄道なのでさっき書いた乗り入れの規定うんちゃらが関わってくる。だから東京都区内-長野の乗車券は、新幹線特急券とセットでないと販売しないんだ…。
…だけど、えきねっとで指定だけ取って、乗車券だけ後から買うってケースあるよね?(注:えきねっとは購入する指定券と同一区間ではない乗車券を購入できないため、こういうことはよくあると思われます)。新幹線の切符買う画面から乗車券だけは買えないし、こういうときどうする気なのJR?みどりの窓口営業時間外だったらこれ詰むよね?
他の駅でも試してみた
まず豊野。ここは長野から3つ目のしなの鉄道の駅。
JR飯山線との接続駅でもあります。
一応、行き先候補として出てはくるけれど…。
やっぱりだ!!
高崎から上越線で北上し、越後川口から飯山線で行けってよ!!
意地でもしなの鉄道を使わせない気だな…。
直江津はどうだろう。ここは新潟県の駅でも北陸方面と新潟方面、長野方面へのジャンクションとなる交通の要所。ここに東京から一発で行ける切符が買えないようじゃ終わってるとしか思えない。
へー。直江津はさすがにデカい駅だけあって、JRとえちごトキめきに分かれてるんだ…。
まぁ普通はトキめきルート使うよね。ポチっとな。
取り扱い出来ないんかーい!!
だったらここにボタン置いとくなよ!!(激怒)
JR直江津を選択すると、六日町から北越急行(ほくほく線)を経由して行くルートが提示されるね…。これもJRじゃない路線だけど、こっちの乗り入れは認められてるの、なんか釈然としないなぁ。
そんなこんなで、結局券売機では関山行きも長野行きも買うことができず、泣く泣く(怒り怒り)再びみどりの窓口に行って「東京都区内-長野行き(新幹線経由)」の切符を発券してもらったのでした。
新幹線と経営分離(並行在来線問題)
何でこんなことになるのか。私は何となく鉄道側の事情も理解しているのですが、鉄道にあまり詳しくない方には解説が必要でしょう。
実は今回のように「路線が異なっていてひと続きの切符が買えない」という問題が発生するのは、そこに並走するように新幹線が建設されている区間とほぼ決まっています。
新幹線は高速運行させるために在来線とは別の路線を敷いて建設されます。完成すれば高い収益性を確保できる反面、多くの場合新幹線が開通することで並行する特急等の高収益列車が廃止となるため、在来線側の収益が一気に悪化してしまいます。
このため、このような並行在来線は経営上JRから切り離し、第三セクター(国や地方公共団体と民間企業が共同出資して設立される法人)として運営されることとなります。これがいわゆる「新幹線開業に伴う経営分離」というやつです。
新幹線と経営分離(並行在来線問題)については下記サイトが詳しいので、興味ある方は参照してみると良いでしょう。
新幹線の開業に伴い、JRから経営分離した鉄道会社は以下の通りです。
この新幹線と経営分離が引き起こす問題、すなわち「並行在来線問題」についてはピクシブ百科事典に詳しく語られているので一部引用します。
ただしこの話に対しては「それを承知で新幹線をそこに通したんでしょ?」という筋の反論が可能なので(実際そのような論調の記事も見られます)、一方的に「新幹線が我らのインフラを奪った」とも言い切れません。まぁ、あまり恩恵を受けなかった地域にとっては迷惑千万な話だと思いますけど。ただこういうのって多分に政治力で決まるので、地域の人々が何をどう望んでいたとしてもどうにもならなかったりするんですよね…。
あ、でも最後の項目「第三セクター化により「こっぱずかしい名前」になることが多い」だけは同意するわ。ねぇ、どことは言わんけど新○県!!
「えちごトキめき鉄道」とかもうキラキラネーム乙って感じしかしないんですけどー✨駅の職員さんに「ときメキの○○駅」とか言うのめっちゃ恥ずかしい💦ちなみに私はもっぱら紐緒狙いでプレイしてました。あぁでも早乙女さんも好きだったな。それなりに遊んだのですが、あまりにも時間がかかり過ぎるので初代以外はスルー…って何の話してんだよ私は!!!!!
話を戻します。つまり新幹線が通るとその横を走る在来線が経営の問題からJRとは別の路線になっちゃうの。それを四字熟語で「経営分離」っていうわけ。この結果として「切符が直通で買えなくなる」といった影響が出たりするのです。ふぅ、シンプルにまとめたぞ。
このように、鉄道会社側にも事情があるというのは私にも分かります。が、それを承知のうえで、私からはこう言わせていただきます。
でもそんなの関係ねぇ!
諸々の反論もありましょうが、あえてそう言い切ります。
何故か。
連絡きっぷを売れば済む話だからです。
連絡きっぷとは、二路線以上にまたがって列車を利用するとき、路線が変わる度に改札を出なくていいように乗車駅から降車駅まで1枚の切符で乗り通せるようにした切符のことを指します。
首都圏など私鉄が多いエリアに住んでいれば、たびたびこのような切符のお世話になっている思います(最近はICカードで乗ることが多いため気にしていないかもしれませんが、金額的な意味では基本一緒です)。
またJR間でも考え方は同じです。例えば東京から在来線を使用して大阪に行く場合、またがる路線はJR東日本-JR東海-JR西日本の3路線です。すべてJRだからあまり意識することはないかもしれませんが、これだって連絡きっぷと言えなくはないでしょう。
鉄道会社にとって手間?
確かに首都圏などではICカードの普及に伴い、連絡きっぷの範囲を縮小していく動きがあるみたいですね。
首都圏は鉄道の繋がりや運行範囲がカオスすぎるので、券売機に要求されるシステム維持のことを考えたら、それも致し方ないかもしれません。
しかしです。
JRで長距離きっぷを買う仕組みを思い出してみてください。
こんな風に、目的地の駅名を決め打ちして買うのです。
そして、目的地が決まればルートも自ずから絞られます。
その結果、出てくる切符はこのように乗車駅と降車駅が書かれたシンプルなものです。
いかがでしょうか?
首都圏の複雑怪奇かつ魑魅魍魎な路線の中から任意のルートを選定し、かつ「○円区間」みたいな曖昧な指定で売買される連絡きっぷと違い、JRを軸とした長距離きっぷの販売は基本的にシンプルなのです。後は距離と路線の合計で金額を回収し、鉄道会社間で収益を適正に分ければそれで良し。何の問題もありません。
というか、経営分離される前は普通にその区間で買えていたわけですから、「他所の路線になったから知らないよ」というのは、そりゃ会社事情的にはそうかもしれませんが、少なくとも利用者目線で言わせてもらえばサービス低下と受け取らざるを得ないです。
これに対し、鉄道会社側の立場に立った反論は可能でしょうか?
私には「できるのにあえてやってない」という風にしか思えないのですが、いやそうじゃないんだという方がもしおられましたら、ここのコメント欄か私宛のメールフォーム、もしくはTwitterのリプライかDMなどでお伝えいただければ幸いです。
コメント次第ではこれの第2段的な記事やるかもしれません。
続く線路はどこまでか
今回、私が切符を買えなかった長野(しなの鉄道)-関山(えちごトキめき鉄道)という区間は、いまもJRから線路が繋がり、駅構内での乗り換えで乗り継ぎ可能となっています
以前も私、この区間を旅行したことがあるのですが、そのときは新幹線が長野までだったので、普通に関山まで通しの乗車券を買い、長野駅で新幹線を下車してJR在来線の連絡改札にて乗り換えました。
いまだったら一度駅の改札自体を出て切符を買い直さなくてはならなくなったわけです。
まぁ、普通に面倒でしかないですよね。
そしてこのような現状である以上、人によっては切符の買い替えが面倒だという理由で旅行計画自体を見直してしまう人がいるかもしれません。乗り換え時間がシビアなケースの場合、そこで駅を一度出て切符を買い直すという手間がネックになるということもあるでしょう。だったらいっそ、その先に向かうのはやめとこう…想像ですけれども、そうしたリスクだって十分に考えられるのです。
「分断の時代」と言われる昨今ですが、人の在り方だけでなく鉄道までもがこのように分かたれたいま、線路はどこまで続いていると言えるのでしょうか。かつて「その先の日本へ。」という偉大な言葉を残したJR東日本は、その先に行くのを阻むこの現状をどう受け止めているのでしょうか。
そんな気持ちのまま、今回は筆を置くこととします。
心はなおも旅の途中にて。