書籍紹介「ALL ABOUT namco~ナムコゲームのすべてⅡ」(電波新聞社刊)
「ALL ABOUT namco~ナムコゲームのすべてⅡ」とは
本書は「ALL ABOUT namco~ナムコゲームのすべて」の続刊にあたります。
1985年から1987年に発売されたナムコ(現:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)のゲーム作品の紹介ならびに攻略記事、発売されていた関連商品の情報やグラフィックのドット絵、ゲーム音楽の楽譜などが掲載されており、前刊と合わせて文字通り(当時の)「ナムコゲームのすべて」と呼ぶにふさわしい一冊となっております。
▲本が立つこのボリューム、前刊とツーショット。
前刊「ALL ABOUT namco~ナムコゲームのすべて」についてはこちら。
1987年(いまから33年前!)に電波新聞社発行の雑誌「マイコンBASICマガジン」別冊として初版が発行されており、当時は数十万人の方に愛読されていたそうです。本書は「令和SP」として復刻されたものですが、掲載されているスポンサーが異なっているほか、記事が一部追加となっているため、当時の版を持っている方も新たに見る価値がありそうです。
なお、本書の紹介にあたりいくつか誌面を写真で撮っていますが、掲載にあたりましては著作権に配慮し、文章ならびに写真についてはタイトルを除きボカシを入れてありますのでご了承ください(関係者の方、もし問題があるようならなるべく速やかに対処いたしますのでご連絡くださいませ)。
目次抜粋
第1章 ナムコ・ビデオゲームの魅力を探る
楽しさを提供し続けるナムコ(読み物)
<紹介作品>
バラデューク(1985年7月)
モトス(1985年6月)
スカイキッド(1985年12月・[スカイキッドDX]1986年4月)
ホッピングマッピー(1986年3月)
トイポップ(1986年4月)
ザ・リターン・オブ・イシター(1986年6月)
サンダーセプター(1986年7月・[サンダーセプターⅡ]1986年12月)
源平討魔伝(1987年1月)
ローリングサンダー(1986年12月・[NEWバージョン]1987年1月)
第2章 ナムコット・ファミコン・ソフトのすべて
ナムコット・ゲーム㊙情報(読み物)
<紹介作品>
パックランド(1985年11月)
スターラスター(1985年12月)
ディグダグⅡ(1986年4月)
バベルの塔(1986年7月)
ワルキューレの冒険~時の鍵伝説(1986年8月)
スカイキッド(1986年8月)
スーパーゼビウス~ガンプの謎(1986年9月)
マッピーランド(1986年11月)
メトロクロス(1986年12月)
ドラゴンバスター(1987年1月)
第3章 ナムコ・ビデオゲーム ドット絵集
第4章 ナムコ・ビデオゲーム 楽譜集
(これらはいずれも第1章であげたタイトルが対象)
前回の「ALL ABOUT namco」が1978年~1985年とおよそ8年分のタイトルを掲載しているのに対し、今回の「Ⅱ」では1985年~1987年のおよそ3年間となっております。にもかかわらず、本としてのボリュームはむしろ前刊より厚くなっているのです(前刊=414ページ、[Ⅱ=502ページ)。
これはこの時期にソフトとハードの一つ一つの技術革新が急速に進み、ひとつひとつのタイトルに内包するボリュームが増してきたことを意味します。昭和も60年代に入り、まだ見ぬ平成の世がすくそこまで来ていたこの時代にゲームの内容は大きく変貌していきました。多くのタイトルで凝った物語や美しいグラフィック、臨場感のあるBGMがスタンダードとなり、「ゲームは文化だ!」「いや芸術の一分野だ!」などと言われ始めたのがこの1985年~1987年(昭和60年~62年)という時代だったのです。
そしてまた、このわずか3年の間にビデオゲーム、ファミコンとも数多くのタイトル数がリリースされたことも注目すべきポイント。ゲーム業界が大きな産業となっていくのに伴って、ナムコの開発ラインが充実していった様子を本書からうかがい知ることができます。現在のバンダイナムコエンターテインメントは「アソビきれない毎日を」とキャッチコピーに掲げていますが、既にこのころからその傾向は始まっていたのだと考えるとなんとも感慨深いものがありますよね。
本書の見どころ
ここに並んでいるゲーム作品のタイトルに馴染みがあるかないかでオススメポイントが分かれるかと思います。ここでは2つの記事にスポットを当てて紹介していきますね。
「楽しさを提供し続けるナムコ」
もしあなたがここに書いてあるタイトルほとんど分からないようであれば、まずはこのページから読んでいくのをまずはオススメします。
我が国におけるビデオゲーム文化の先駆者として、常に斬新なアイデアと高い技術力で業界を引っ張ってきたナムコ。その初期作品から本書で紹介されているような作品に至るまでの経緯が丁寧に記されています。
特に「高まるゲーム性からハードも進歩」というくだりでは、マザーボード(システム86)やFM音源の搭載によってゲーム表現技術が飛躍的に進歩した様子を知ることができます。何でもそうですが、現代に至るまでに技術的な蓄積の歴史があるわけで、それを知ることは現代の作品に触れるうえでも決して無駄にはならないと思います。
「THE RETURN OF ISHITER(イシターの復活)修正版楽譜掲載によせて」
もしあなたが本書であげられているタイトルを知っていて、何なら当時この本を買って読んだよ、くらいの方であれば、ぜひ読んでもらいたいオススメのページはここです。
この特集は令和復刻版にて新たに加筆されたページで、当時の製作者が作成したゲーム音源用の楽譜を本書に再録するにあたってのよもやま話が関係者の対話ドキュメントにて記されています。
要約すると、
「当時の楽譜は作曲した人のメモみたいなところがあるので、ところどころ間違っていたり、そもそも楽譜に書いた記号の解釈が違うこともある。それをあらためて楽譜に起こすとき、どちらが正しくてどちらが間違い?という問題が発生するが、読者が求めるのはこういうものだろうっていう想定のもと作成し、掲載するに至った」
という内容の、まさにドキュメンタリーな内容となっています。
こうした創作物を人が手書きで記述していた当時、その伝達や再現においてどのような問題が発生し、どのようにクリアしていたか。その様子を作曲者当人を含めた関係者たちが語り合っているこのドキュメントは、当時のモノつくりの有りようをまざまざと見せてくれるものではありませんか。いや、音楽やってなくとも、クリエィティブにかかわる者として、また当時作品を遊んでいたプレイヤーとしても胸アツの記事です。
「何を以って正しい楽譜というの?」
制作物がデジタル中心になった現在ではこうした問題はゼロではないにせよ少なくなっているでしょう。むしろ最近クリエイターになった方は、ここの問いかけの意味がよく分からないかも知れません。
アナログからデジタルに向かう端境期ならではのクリエイターたちによる奮闘記は、まさにそのまま当時のゲームクリエイティブ状況を赤裸々に感じられる貴重な記録ではないでしょうか。
余談ながらここに掲載されている写真には、当時私がお世話になった方やいまも親交を深めている方が写っております。私的にも感無量でございます。
ゲーム記事でのオススメは?
そうですねー、ただこれは人によって当時何にハマったかによってオススメする内容も変わってくるでしょうしね。「みんなオススメですよっ!」って言っちゃうのがカンタンなんだけど(笑)。それじゃなんですので、ここは私的に3つ選んでみました。
「源平討魔伝」
私的には(あくまでも私的にはです)、本作の登場によってビデオゲームの水準が1ステップ上がったと思っています。それくらいインパクトがありました。「これはゲームじゃなく映画をプレイしているんじゃないか」と本当に思ったくらいのもので。大きなキャラクターに和風の音楽、源平の時代に焦点を合わせたストーリー。どれもこれもが感動的でありました。
ただこのゲームは難易度が高くて、私もワンコイン(ノーコンティニュー)クリアは成し遂げたことがありません。信濃の三首竜いまでも一発で倒せたことがほとんどなく、どなたかにレスキューしてほしいくらい(笑)。その意味では本書に記された攻略記事はとても役に立つのではと思います。皆様も滅びし平家の魂を救ってみてはいかがでしょうか。
「ザ・リターン・オブ・イシター」(イシターの復活)
ナムコ作品「ドルアーガの塔」の続編。ひとことで言うとゲームセンターでガチのRPGをプレイさせるゲーム。いやいやいや、それ無理ゲーっしょ!?と当時は私も思ったものです。
何せ膨大な迷宮に膨大なモンスターに膨大なアイテムに膨大な魔法。PCのRPGならまぁそんなもんかなという内容でも、ゲームセンターで1プレイ100円でプレイさせるゲームにそれは…。当時はプレイデータの保存なんてできなかったから、続きをプレイする方法はパスワードによる保存方式でした。いま考えてもそりゃ無理だよと思いますが、でも当時その無理を押し通したことについては素直にスゴイと思います。これもいまプレイするなら本書の攻略記事が役に立つでしょう。
「トイポップ」
私的には人生でプレイしたナムコゲームの中で3本の指に入ると思っているタイトル(残り2つは「ドラゴンバスター」と「メトロクロス」)。
内容としては面クリア型の1画面内アクションなのですが、敵によって倒せる武器が異なり、それを持ち換えていく戦略性がとても奥深し。プレイするたびにより効率の良い方法を試したくなるやめられない、とまらないの典型的なスルメゲーム。
さらにこの作品は2人プレイができ、2人が別々の武器を持つことによって通常1人ではオールクリア(敵全滅)できないような面もやりようによって達成できてしまう(記事によれば全面オールクリアも夢ではないらしい)というやりこみ要素も素晴らしい。それを目指すためにも本書の攻略記事が役に立つことでしょう。
見た目の派手さはないものの、昔からのゲーム好き同士であればこれを肴にいくらでも酒が飲めるくらい想い出の尽きない作品です。
▲当時シャープから発売されていたパソコン、X1でプレイできる「トイポップ」。ちなみにこれも電波新聞社から発売されました。
おわりに
ということでこの手の話を始めると止まらなくなる私ですが、いい加減長くなり過ぎましたのでこのへんにしておきたいと思います。
なおこの「ALL ABOUT namco~ナムコゲームのすべてⅡ」、4月20日より発売されているのですが、早くもヨドバシ、アマゾン、楽天の各ネット書店で完売の様子。ということで早くも増刷確定であり、もういまからでは第1刷の入手は難しいかもしれません。
ナムコのみならずビデオゲームの黎明期からハードとソフトの進化を追っていける本書、昔からのゲームファンから現代を生きるゲームプレイヤーまで前刊含めてオススメします!
(了)
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