書籍紹介「電子工作マガジン 2024秋号」(電波新聞社刊)
電波新聞社より年4回刊行されている「電子工作マガジン」を皆様にご紹介いたします。今回ご紹介するのは2024秋号です。
本誌が発売されたのは9月19日。これを書いている現在は10月初頭。次第に涼しい日が多くなってきました。この表紙を見ていると、もう紅葉の時期はすぐそこであるかのように感じますね。
「電子工作マガジン」について
それでは本誌の中身について説明してまいりましょう。この雑誌、タイトルこそ「電子工作マガジン」ですが、中身は電子工作とプログラミング、無線通信、エレクトロニクスに関する情報などが詰まっています。特にIchigoJamは投稿プログラムのリストも掲載しているので、そうした内容をお求めの方には特にオススメ!IchigoJam関連製品についての記事も充実しています。
それでは今回も、私が特に注目した記事をピックアップしていきたいと思います。基本的にプログラミング記事目当てで買っているので、偏った紹介になっている点はどうかご容赦ください。
まずは巻頭情報から
共立電子産業の取材記事
「共立エレショップ」の名称で知られるこの会社。電子工作関係で何かしら検索しているとだいたい必ずヒットするんですよねここ。名前だけは知っていたのですが、大阪の日本橋にあるとは知りませんでした。
あと共立電子産業と言えば、電子部品の専門店「デジット」ですね。大阪に住んでいたころ、日本橋でたびたびこの看板を見かけておりました。当時は電子工作とか全然してなかったのでスルーしておりましたが…。
記事によれば、「初心者向けに作りやすいこと」を重視して電子工作キットを開発しているとのこと。そのために説明書を分かりやすく作る、ハンダ付けしやすい設計にする、大きめの部品をセレクトする…といった配慮をしているのだそうです。そう言われると、私みたいなド素人もちょっと手を出してみようかな…なんて気にもなります。
PasocomMini PC-8801mkⅡSRの詳細写真がついに公開!
古のパソコンをミニサイズで現代に蘇らせるPasocomMiniシリーズ。これまでにシャープのMZ-80C、NECのPC-8001がミニサイズで発売されましたが、来春ついにPasocomMini PC-8801mkⅡSRが発売となります。
本機については、本年5月に行なわれた「マイコンBASICマガジン」(通称「ベーマガ」)のイベントにて、初めてその情報が公開されました。
PC-8801mkⅡSRと言えば、1980年代のホビーユースPC業界において最もメジャーな路線にいたマシンだったと言って良いでしょう。当時はNECのPC-88、シャーブのX1、富士通のFM、そしてMSXといった勢力が覇権を争っていましたが、発売ソフトの本数や市場シェアにおいてPC-88(SR以降)は頭ひとつ抜きん出ていたように思えます。
(X1派だった私から見ても素直にそう思います)
今回の電子工作マガジンの記事では、様々なアングルから見た本機の写真とともに、主な仕様が一覧表として掲載されています。また出し入れ可能な5インチフロッピー(のミニチュア)など、ディテールの部分についてもかなり詳しく触れられています。
なお本機ではN-88BASIC Ver.2を搭載していることから、BASICでプログラムを作成することが可能です。ということで、電子工作マガジンでは本機の投稿プログラムを募集するとのこと。かつてのベーマガのように、アツい投稿プログラムが掲載される日は来るのでしょうか!?
「令和版 ライセンスフリー・簡易無線マニュアル」メインライター南雲桂一氏の遺志を継ぎ9月5日に無事発売
本書はいわゆるライセンスフリー無線と呼ばれる通信手法について、そのノウハウや使い道、法制度的な部分などについて解説するものです。業務無線やアマチュア無線と比較して規制が少ないことから、使用におけるハードルの低さをメリットとして挙げています。また災害時においては、緊急連絡の手段としても有効なコミュニケーションツールになり得るとか。
ところで何で今回この記事について取り上げたのかというと、実は本書制作中にメインライターであった南雲桂一氏が亡くなられたという記載があったためです。命日は表紙撮影の予定日だった7月3日。享年59歳。別頁の追悼記事によれば、前日まで普通にやりとりしておられたとのことでした。
その時点ではまだ本書は仕上がっておらず、残りのメンバーにて南雲桂一氏の遺志を継ぎ、無事刊行までこぎつけたそうです。私自身は無線についてはまったくの未経験なのでこの書物についてお話しできることは特にないのですが、無線通信、情報通信の業界に対し重要な貢献をされたというお方のご逝去に触れ、ちょっと見過ごすことはできないと感じたので紹介させていただきました。故人のご冥福を心からお祈りいたします。
IchigoJamならびに関連製品で遊ぼう!
「電子工作マガジン」で特に力を入れて取り上げている、プログラミング専用こどもパソコン、IchigoJam。単体で使ってももちろん良いのですが、関連製品と組み合わせて使うことで遊びの幅が広がります。ここではそんな応用について記された記事をいくつか紹介していきます。
時空を超えて!帰ってきたパソコンレクチャー
「DakeJacketで拡張ボードとIchigoDakeが合体分離!」
本誌ではおなじみのくりひろし先生による漫画連載。今回はDakeJacketというオプション機器を中心に、Ichigo関連が持つ様々な可能性について紹介しています。
この話を始めるにあたり、まず「DakeJacketって何よ?」というところから入るべきですよね。私の理解度でどこまでちゃんと説明できるか分かりませんが、まぁとにかくやってみましょう。ちなみにDakeJacketについてネットで調べると、次のような説明がなされています。
ね、普通に意味分からないでしょ?
これを理解する前提として、まずIchigoJam系の派生製品に「IchigoDake」ってのがあるんですね。これはひとことで言うと「IchigoJamの中身だけ」を製品化したもので、各種インターフェースをすべて排除しているため、非常にコンパクトなのが特徴です。
IchigoDakeは中身だけなので、単体で動作させることはできません。なので通常は「IchigoIgai」という、こっちは逆に「IchigoJamのインターフェース部分だけ」を製品化したものと組み合わせて使います(この両者をガッチャンコすると、プログラミング機能のうえではIchigoJam相当になります)。
で、何でこんなものが必要かっていう話なんですが、例えばロボットとかに組み込みたいとき、中身だけ欲しいっていうケースがあるんですよ。事前にプログラミングされたIchigoDakeを持ってきて、別の何かに組み込む際にはコンパクトな方がいいですからね。
で、こういうときはさらに別の何かと組み合わせることが多いのですが、このときに各機器を結合させる道具が要りますよね。そう、ここで登場するのが、今回漫画で紹介されている「DakeJacket」というワケなんです。
こういう性質のものなので、DakeJacketはIchigoDakeと組み合わせ、さらに別の何かと組み合わせることでその真価を発揮する、言うなればIchigo関係の応用的なものづくりのためのツールなのですね。私も自分で使ったことはないのでイメージでしか語れませんが、漫画の説明によればロボットプログラミングにデジタルイルミネーション、サイネージといった使い方が考えられるそうです。Ichigoでサイネージとか、ちょっと夢が膨らみますね!!
IchigoLatteでPythonプログラミング入門
PanCakeでゲームを作ってみよう
こちらはオフィス加減の松下浩則さんによる連載記事。IchigoLatteはIchigoJamにインストールすることでBASIC以外の様々な言語が使用可能になるマイコンOS、PanCakeは4種類の音源や16色のカラー表現が可能となるサウンド・グラフィックボードです。Ichigoシリーズの派生シリーズはどれも美味しそうですね。
この記事ではプログラミング言語のひとつであるPythonを用いたシューティングゲーム作りについて、そのプロセスを丁寧に分かりやすく解説しています。スプライト(キャラクターの表示手法)の設定やプレイヤーの移動、弾の発射、敵の移動、ゲームの終了判定…という具合に、ひとつのゲームが完成するまでのプロセスを学ぶことができる良い記事です!!
電子工作系の記事について
電子工作はあまり(ほとんど)やっていない筆者ですが、私なりに気になった記事を少しだけ紹介します。特集記事の関係でラジオやオーディオ機器を題材にした製作記事が多く掲載されておりますので、興味ある方はぜひ本誌を手に取ってご覧いただければと思います。
エレキットのねこ型をしたメロディークロック2の製作
まぁその、見た目がかわいいから気になったってだけなんですけどね(笑)。やはりニャンコは正義ですよ。難易度は★★(星2つ)とありますが、売り物のキットということなので安心感はあります。基盤がネコの形っていうのが良いですね。ハンダであんまし焦がし過ぎないようにしたいものです。メロディーが4種類搭載されているというのも魅力。
マイクロ・リレーを使った「早押しゲーム機」の製作
本記事では工作に先立ち、リレーというものに対する歴史が少し紹介されています。それによると、米国では1930年に開発され、日本では1953年に電気試験所で開発されたと言われているのだとか。なおゲームの内容は「開始の合図を見て、どちらがより早くスイッチを押したか」を競うというとてもシンプルなもの。リレーという部品がどのような役割を果たしているかについて、詳細な解説がなされています。
2色のLEDで色合いを変えられるLEDデスクライトの製作
職業柄、こういうのには惹かれるんですよね…(私の本職はLEDサイネージ屋さん)。白色と暖色2種類のパワーLEDを使い、それぞれの調整ツマミを回すことで色合いを変えられるという素敵仕様。作者の鈴木覚さんが自身の机に取り付けるためにアームまで作成したという、その個人的必要に迫られたこだわりも良いですね。ケースまで自作という力作です!!
マイコンBASICコーナー、読者投稿プログラム
本誌恒例の読者投稿プログラム紹介コーナーです。今回はIchigoJam系の投稿プログラムが5本。短いリストの作品が多く、「これでゲームになるの?」と思ってしまいそうになりますが、IchigoJam-BASICは使用可能なメモリ容量が限られているので、いかにリストを短くするかも作者の腕の見せどころ。それではさっそく紹介していきましょう。
二階でお詫び(IchigoJam1.4以降)
ゲーム内容は「おじぎを45度ピッタリのところで止める」ことを目指すといういたってシンプルなものですが、特筆すべきはその設定です。
「あなたは政治家。しかし裏金がばれてお詫びするハメに」って、何その意味深な設定!おじぎにそこまでドラマティックな意味を持たせるか?そして何で二階?実在する政治家でも意識したの?そしてお詫びに練習が必要か?何で家族にバレちゃいけないの?投稿プログラムは数あれど、ここまでツッコミどころ満載な作品も珍しいです。
ピッタリ45度におじぎが決まるとストアは0に。ちょっとでもズレるとマイナスになります。政治の世界は厳しいなぁ(笑)。
限界まで頭を下げたの図。
裏金着服の政治家には、こんくらい頭下げてほしいですけどねっ!!
ボケマッチ(IchigoJam1.4以降)
時計の針が何時を指しているかを入力するゲーム。10回正解するとかかった時間が表示されるので、なるべく最速でクリアすることを目指します。
例えばこの画面だったら、時計の針が指している時刻は2時なので、「2」と入力。正解なら次の問題に進みます。画面左上の「●」はクリアした数。
最後にクリアまでにかかった時間が表示されます。あせると時刻の読み違えとかが多く発生するので、なるべくミスがないように…とか思いつつやるとかえってミスが多発したり。なるほどこれはボケ防止に役立つかも。
またたびボンバー(IchigoJam1.4/IchigoJam Web以降)
作者の方のペンネームとゲーム内容はどう考えてもあれをイメージしたものですよね…?「お前も鬼にならないか」的な。
そんなニャン子を爆弾で退治するのは気が引けるのですが、鬼を倒すのが隊の使命なればやむなきこと。X(横座標)とY(縦座標)を入力し、鬼と化した猫をたくさん巻き込めそうな場所にまたたび爆弾を仕掛けると…。
どかーん!!爆発に巻き込まれた猫(鬼)の数が得点になります。
何かこう、もっと他に殺しても良さそうなキャラクターコードなかったかと思ってしまいました…。
フラッシュタイプ(IchigoJam1.0以降)
画面に一瞬だけ表示される英文字を見てタイプするゲーム。どういう感じかというと…。
画面に表示された文字が一瞬で消えちゃうんです!こんな風に。
もちろんここでは「S」と入力するのが正解なのですが、見逃してたら悲惨です。「A」~「Z」までしらみつぶしに打ってみなくてはなりません。
10問終えるとかかった時間が表示されます。ブラインドタッチ?の練習にも最適かも!?
リストがとても短いので、すぐに入力できるのが良きですね。
ミサイル防衛(IchigoJam1.4以降)
セミグラマニアさん本誌2本目の採用おめでとうございます!さっきの政治家謝罪ゲームでは笑わせてもらいましたが、こちらも設定おもしろいです。ミサイル防衛システム「パクリオッテ」って一体何(笑)。
防衛システムの名前はさておき、ゲーム自体はとてもよくできています。ミサイルが右上方面から斜めに降ってくるのですが、これをA~Zまでのキー入力に対応したレーザーで迎え撃つのです。
ミサイルが割と早く降下してくるので、うまく迎撃できるかはひとえにキーの位置をどれだけ覚えているかにかかっています。そう、これもある意味タイプ入力ゲーだったりするのです。
ミサイルを着弾されてしまうとゲームオーバーに。
一瞬フラッシュするところも凝ってます。
余談:一般財団法人IchigoJam財団について
これは「電子工作マガジン」関連の話ではないのですが、IchigoJamにとって主要なトピックスなので、余談として紹介しておきたいと思います。
10月1日に「一般財団法人IchigoJam財団」が設立されました。本財団はIchigoJam創始者である福野泰介代表が代表理事を務め、理事には「マイコンBASICマガジン」でおなじみの大橋太郎氏が名を連ねています。
「電子工作マガジン」が特に力を入れているIchigoJamですが、こうした動きもあり、今後もますます目が離せない分野になっていくことは間違いないと思われます。これについては、次回冬号で何か取り上げられるかもですね。
▼筆者が書いたIchigoJam関連記事。よろしければこちらもドウゾ。
私も何か作ろうかな…?
いつもこの「電子工作マガジン」を読むと「私も何か作ろうかな…?」っていう気持ちが芽生えたりするのですが、ここ最近は自身のプロダクトらしいものがなく、言うだけ太郎になってしまってたりします…。
まぁそうなりがちなのは、自分の中で「これ作りたい!」っていうのが特にないからなんですが、ここ最近ちょっと作りたいものが脳内に浮かび始めています。それも電子工作とプログラミングの両方です。
いまはまだどちらもぼんやりとした、アイデアめいた段階でしかないのですが、もしこれが具現化したらnoteで紹介するかもです。プログラムの方はことによったら「電子工作マガジン」に投稿しちゃったり…いやいや!そんな恐れ多いこと私などが出来ようはずもありません!ないんじゃないかなぁ…そもそもいまの段階でやるかどうかすら決めてないですし。
まぁ本当に投稿するかはともかくとして…何が言いたいかっていうと、この「何か作ろうかな…?」という感情を奮い立たせてくれるのが、この「電子工作マガジン」なのですよ。ということで、ちょっとでもそんな気持ちがくすぶっている方は、本誌をのぞいてみると良いかもです。
何かうまくまとまった気がするので、今回はここで締めとします。
それではまた冬号紹介にて。
(了)