書籍紹介「電子工作マガジン WINTER2022」(電波新聞社刊)
電波新聞社より年4回刊行されている「電子工作マガジン」を皆様にご紹介いたします。
今回ご紹介するのはWINTER2022(2022冬号)です。
見事に冬っぽいキレイな表紙!本誌が発売されたのは昨年(2022年)の12月19日なので、すっかり遅れた紹介となってしまいました。クリスマス関係の記事はタイミング的に時期を逸しており、申し訳ないことこのうえない次第です。ともあれ今回も私が注目した記事を紹介していきたいと思います。
高専ロボコン2022~紙飛行機をロボットが飛ばして目標地点に着陸させるってホントにっ!?
ロボコンっても「0点!」のあれじゃないよ。…あれ、もしかして私スベってる?最近の若い人はロボコン知らないの?わ、私まだ20代だもんっ(虚)。
はい、それでは気を取り直して!!
「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」というのが本コンテストの正式名称。主催しているのは全国高等専門学校連合会、NHK、NHKエンタープライズの3団体で、自らの着想と実践でロボットを作り、その体験を通じて発想する事の大切さ、物作りの素晴らしさを学生諸氏に共有してもらうことを主眼としています。
それでこれ何がスゴイかって、今回の競技内容が、
っていうもので、もう読んだだけで「ムリムリの無理っ!!」って言いたくなるようなシロモノです(…失礼)。
本紙にも書かれていますが、紙飛行機を狙ったところに着陸させるなんて人間がやったって難しいわけで、現に大会関係者からも「これまででの最高難度では」と言われたとか。
うーん、だけどこれ、逆に「だからこそロボット」なのかなぁ?
温度・湿度・気流などの要素もさることながら、人間がやるうえで最も大きな問題は「いつも同じ力で同じ方向に飛ばせるとは限らない」ってことだと思うのですよ。
ロボットであればその「力の入れ具合」的なアナログの部分の再現性をほぼ100%に近付けることができる…それに成功したところが勝利の栄冠を勝ち取ることができる…と、つまりはそういうことなのかもしれません。
なお本大会の結果は「奈良高専がVゴールで優勝、徳山高専が飛行の美しさでロボコン大賞」とのことです。詳細が気になる方はは本紙にて記事をご覧ください。まぁ結果はどうあれ!どう飛んだか、どこを飛んだのか、それが一番大切なんですきっと。本コンテストに挑戦したすべての学生たちの人生に幸あれ。
時空を超えて!帰ってきたパソコンレクチャー 「GIGA IchigoDakeでロボットプログラミングにチャレンジしよう!」
恒例のくりひろし先生の漫画ですが、今回はスペシャルゲストが登場しています。巻頭カラー部分にその謎めいた風貌の女性が…。
私のnoteでも何度か紹介させていただいている都亜紀さん!!
つーか、あきちゃん先生って呼ばれてたんですか!?(初耳)
この方は「電子工作マガジン」において「親子で挑戦!マイファーストパソコンを自作しよう」というコーナーを担当されており、家庭のお子様が自作PCを組み上げる手ほどきをしてくださるお姉さん。2022夏号では当方のライター同志(マイコンBASICマガジンつながり)である荒木さんの息子さんPCを手掛けられました。
そのあきちゃん先生が今回はGIGA IchigoDakeをDakeJaketに組み込んで…平たく言うとプログラミングで動かせるロボットカーを作っちゃったんです!
あきちゃん先生…すなわち都亜紀先生は大阪にてこどもプログラミング講座を開催しており、この「DakeJackeCar」はロボットカープログラミングを通じてプログラムを段階的に学び、じっくり体感できることを目指して作られたもののようです。なんとこれのために既製品の組み合わせではなく専用基板を作り起こしてしまったというから驚き。モーターやセンサーも搭載しているその姿は、自動運転のミニチュア版を見ているかのようです。
「プログラミングの楽しさを知ってもらうにはロボットは最適」と仰る都亜紀さん。未来を担う子供たちのためにこのようなものまで作ってしまうとは本当に頭が下がります。くりひろし先生の漫画に載ったことで、その存在がより広く知られることになるでしょう。ここにYouTubeも貼っておくので、興味ある方(特に親の立場の方)はぜひご覧になることをオススメします。プログラミングって学生にはもうかなり身近な存在になってるんですよ…?
親子でDIY挑戦!マイパソコンを自作しよう
都亜紀さんつながりで今度はこちら。親子で自作パソコンを作る企画記事です。前号からタイトル少し変わりました。
今回はPCパーツ購入編ということで、実際のお店に来て買い物している状況を子細に渡りレビュー。それを通じて「PCがゼロベースから完成形に組み上がるまでには何が必要なのか」について記事中にて分かりやすく解説しています。「コア数はパソコンの脳」「メモリの容量はパソコンの作業台の広さにあたる値」など、分かりやすいでしょう?
またPCを組み上げるにあたっては「何の目的で」ということを意識することが大事。それによって必要な性能が異なるからです。今回のPCでは動画編集に重きを置いており、それだけにハイスペックな性能が必要。この記事では「なぜその性能が必要なのか」について逐一触れており、モノによっては中古を充当する柔軟さも見せています。
OS、CPU、メモリ、SSD、マザーボード、グラフィックカード、電源、ケース、CPUクーラー、キーボード、マウス、モニターと、店舗内を巡りながら買い揃えていきます。今回は自作パソコン・PCパーツの専門店であるPCワンズ社のサポートのもと選定を行ないました。
組み立ては…次号(2023SPRING)に続く…かな?
micro:bitで電子サイコロを作ってみよう!
当方はボードゲーム愛好家でもあるので、こうした記事にはついつい食指が動くのです。実際サイコロ(乱数)ってプログラミングを始めるきっかけとして最適だと思うのですよね。
ところでこの「micro:bit」って何じゃらホイという方も多いと思われます。とりあえずどんなものかをお見せすると…こちらです。
micro:bitというのはイギリスの公共放送局「BBC」(英国放送協会)が開発した教育用のコンピュータの名称。2015年に開発され、イギリスの11歳と12歳の小学生に無料配布されたそうです。このあたりのことは私が以前書いた以下の記事にその詳細を記しています。
この記事ではそのmicro:bitを用いたサイコロ生成のプログラミングについて解説しています。まずは乱数による1~6の出力。5×5のLED表示部が初期搭載されたハードなので、数字もこの通り。
ですが今回紹介するオフィス加減の松下浩則さんの記事では、これをサイコロの目状にし、なおかつスロットマシンのように高速で目が変わりラストで出た目が点滅するというちょっと高度なこともやっています。
思ったんですが、micro:bitのLED配列って絶対サイコロ意識してますよね?
関数や配列の作り方にまで触れているのでかなり読みごたえがあるものの、micro:bitを直接知らない私が見てもどんなプログラムなのかおおよその想像が付くくらい親切に書き込まれています。私もちょっとmicro:bit欲しくなってしまったかも…。
JavaScriptでプログラミングできるIchigoLatte入門 MMLの楽譜を使ってクリスマスソングを演奏
前章の勢いに乗って、もうひとつオフィス加減の松下浩則さんの記事を紹介したいと思います。こちらはIchigoLatteというハード(IchigoJam同じ基板で動作するJavaScriptベースの小型コンピューター)でクリスマスソングを演奏しようというものです。
IchigoLatteで音を鳴らすにはこのような圧電ブザーが必要(IchigoLatteバージョン1.11以降)。私はIchigoLatteは持っていないのですが、昔BASICで音楽プログラムを入力したことはあるので、ドレミファソラシド=「CDEFGABC」だったり、オクターブが「O」で指定だったり、シャープが「+」、フラットが「-」だったりするのが懐かしいなー、前やったのと一緒だなーという気持ちでこの記事を拝見しました。この記事ではリストも載っているので、必要なハードを持っている方なら誰でも演奏プログラミングを楽しんでいただけるのではと思います。
マイコンBASICコーナー、読者投稿プログラム
毎度おなじみマイコンBASICコーナーでは、読者が作ったプログラムを紹介しています。今回は「ヒアリハット」(IchigoJam1.4以降)、「複素関数VIEWER」(プチコン3号)、「猫屋敷 」(IchigoJam1.4以降)の3つが掲載されています。
ヒアリハット(IchigoJam1.4以降)
ヒヤリハットじゃなくてヒアリ(火蟻)ハットなのね。だけどこんなにヒアリが大量発生してたら確かにヒヤリハットな事象の気がします。
プレイヤーはこの山ほどうごめいているヒアリの上から帽子(一番上にある「八」みたいなやつ)を落とし、10回やって何匹のヒアリを退治出来たかを競うゲーム…ってかさ、んな帽子で遊んでるヒマがあったらさっさと害虫駆除業者でも連れてきなさいよっ!!
複素関数VIEWER(プチコン3号)
複素関数とは何か…について解説のひとつも書こうと思ったのですが、正直いくつかサイトを見てみたものの私みたいな数学で何度も留年しかけた根っからの文系人間にとっては何が何やら分からない世界だということがよく分かりました。ただ「数学のなかでも非常に美しい」と言われているのだそうです。このプログラムはそんな複素関数をNintendo3DSの表示機能を用いて視覚的に表示するツールとのこと。私はプチコン持ってないので試してはおりませんが、どなたかのお役に立てていただければ幸いです。
猫屋敷(IchigoJam1.4以降)
「ヒアリハット」に続けてこちらもKFさんの作品。2本に渡る採用おめでとうございます。こちらはナムコのゲーム「マッピー」のようなトランポリン床でジャンプしながら猫を避けてイチゴを取るゲーム。
アクションゲームとしてはかなり高速で動くため、慣れないと10点取るのも至難の技。イチゴは無限に湧いて出る(!)というものの、気を抜くとすぐネコに当たってしまいます。しかもトランポリンは「マッピー」のように3回踏むと底が抜けてしまうという…。
ひぃはぁ、何とかがんばって43点取りました。ホントは100点とか目指したかったけど、床が抜けることを考えるとちょっと無理かも。まぁでもイチゴ狩りだと思えば、そんだけ食べれたら十分ではないでしょうか。
チャレンジ!!電子工作大作戦
ここからは本誌前半のページである電子工作ページより、私がちょっと気になったところをカンタンに紹介していきたいと思います。
以心伝心テレパシーチェッカー
「目指せシンクロ率100%!」ってwww。挿絵のビジュアルも何だか昭和っぽくてイカしてます。
確かにこれ、読み合い要素もあるからゲーム的かも知れません。10回連続で一致したら僕たち付き合おう!みたいなオイシイ展開に持っていけたら面白いかも!?(そんな確率めちゃくちゃあり得ないですが…)。
とりあえずネタとして面白かったので掲載してみました。難易度★なので、初心者にもカンタンに作れそう?なのもグッドです。
余談だけど、なんかこれを思い出してしまったよ…。うわなにこれめっちゃ値上がりしてるやん!みんなそんなに超能力者になりたかったの?
LED光空間通信機
学習ポイントに「光空間通信とは」と書かれているのにそこの説明があまりなかった気がするので、ちょっと私の分かる範囲で補足したいと思います。
光空間通信とは、文字通り空間中にて光を用いて何らかの情報伝達を行なう通信方法の総称です。普通「光空間通信」と言う場合は赤外線を用いるものとLEDなどの目に見える光源を用いるものに大別されますが、後者の方を特に「可視光通信」と呼んだりします。技術系の展示会などでたまに見かけるネタだったりします(私一応LED関連の会社にいるので…)。
この記事の著者であるエレサイくらぶの塚原英成さんはこの仕組みを用いた「光糸電話」と称するフィールド実験を行なってきたとのことです。今回の記事も音声を光空間通信で飛ばすことを試みているようです。
この記事では光ビーコンという送信機テスターを作り、送信側と受信側それぞれにアンプを付けることで、文字通りカンタンな電話のようなことを実現しようとしてるのが読み取れます。ただこれだとお互いが遠くないと意味がないので、距離を伸ばすために昔のフイルム式一眼レフカメラに穴を開けて送受信装置を作るなど、その情熱には頭が下がる思い。ここまでやっちゃうと難易度★★なのかなって気がしますけれども…。
記事最後にちょっと共感できる文章が書かれていたので引用します。
私はアマ無線とかは手を出しませんでしたが、ラジオ趣味人ではあったので言ってることはよく分かります。確かにそう。つながることって、ちゃんと聴こえることって当たり前じゃないんですよ。届かないはずの交信を技術と工夫で実現させたときの喜び…こういうのは何に対してでも言えると思います。プログラミングだって然りだと思います。
Raspberry Pi Picoと無線モジュールでつくるワイヤレスイルミネーション
クリスマス装飾ネタは他にもあれど、本記事はラズパイピコを使用していることとワイヤレスというところがポイント高かったです。ただし割と高額なのと、難易度★★★ですけれどもね…。
Raspberry Pi Picoって何?普通のラズパイと何が違うの?という方もおられることでしょう(ラズパイの小型版だと思ってピコ買って家に帰り紛糾したという話をたまに聞きます…)。ズバリ言うとピコはラズベリーパイ財団が開発ていますがラズパイではありません!マイコンを搭載した開発用ボードであり、その使用用途は電子工作に極めて限定されています。
まぁメリットはこの通り安価なこと。ただしこれ単体で何ができるわけではないので、活用するには「電子工作マガジン」みたいな手引書が必需なのですよ(宣伝w)。
本記事ではラズピコに加え、インタープラン社の無線モジュール「IM920sL」を用い、さらにプログラミングによって演奏している音楽に合わせて付近にあるイルミネーションがすべて同時に点灯・点滅するというスグレモノ。なので同じ受信機基板をたくさん作ることが推奨されています。上の記事では3つ同時に動かしてますね。そこが無線の強みだなぁ。
宝物探しのためのヘテロダイン式金属探知器
記事中では「フリント船長の財宝」(発見された地図をたよりに、フリント船長の財宝を探すボードゲーム)とあります。私は知らなかったので検索してみると、なるほど確かにあるようですね。
本記事はこれを金属探知器を自作して遊べるようにしようというものです。実際に現地(チェコ)ではこのようにして遊ばれている模様。
ということでこの記事では金属探知器の原理や仕組み、実際に作り方などが子細に渡って説明されております。出来上がった金属探知器はこちら。
何と1,800円の予算で作れてしまう金属探知器。このゲーム以外の使い道が思い当たりませんが、自宅におひとつどうですか?の思いで紹介しました。
最後に「世界ロボコン情報」より、心に残った言葉
最後に、本誌の「世界ロボコン情報」のページより、心に残った言葉を引用して本記事を締めたいと思います。
いかがでしょうか。教育者や人の親ならずとも、心に刺さる言葉ではないかと感じます。私自身、好奇心がそこまであるかと言われると思わず自問自答せざるにはおられません。好奇心…失われたのかな子供の頃に比べて。いや、もともと私そんなに好奇心あったか?…というふうに。
この「電子工作マガジン」のような書籍が、子供も含め多くの人々にとって好奇心を呼び覚ますものであることを願いつつ、本文をそろそろ締めたく思います。もし書けばですが、次は「2023SPRING」(春号)にてお目にかかりましょう。今後ともよろしくお願いします。