少しだけユングの分析心理学のこと
エス(Self)をユング的な意味で使うとどうなるか。
ドイツ語では、”Selbst”も、”Unbewusstsein”ともなります。でも、後者は、「無意識」という、「意識」の否定形になるので、個人的には”Self"の方が好きです。
エス(Es)はドイツ語で「それ」という指示代名詞ですが、フロイトの場合には、単なる意識から抑圧された記憶や欲動の奔流に過ぎないわけですが、ユングはそこに人格的なものを見出した。
それは自己の中に秘められた様々な可能性としての人格ということになります。結構肯定的なんですね。
これが個人の中だけで良ければまだしも、「個人的無意識」ではなく、「集合的無意識」のレヴェルとなると、「元型」という、個人を超えた普遍性のある表象の形に行きつくととらえた。
ここからが厄介で、このレヴェルに「憑依」されると、精神病水準の状態に落ちる場合があるとユングは考えたわけですね。
他の人格、特に演劇のような普遍的表象性が高いものに身を委ねることの怖さがこのへんにあるということになります。