心理カウンセラーが、有資格であることの意義を喧伝することによる「反作用」をどこまで認識しているかどうか?
クライエントさんからの「陽性転移」(理想化)が何らかの形で破綻する時に、うまく対応できずに(治療者側に生じる「逆転移」をうまく処理できずに、治療者側が「行動化」し)、クライエントさんを傷つけることしかできなくて、失望させることを繰り返しているケースがかなり多いのではないかという気がしている。
治療者の言うことに「盲従」せず、自分を殺すことなく、治療者の「言うとおりに従わない」で、率直に「疑問をぶつける」「不平を言う」「注文をつけてくる」能力を育成するのでないと、セラピーとは言えない気がしている。
ある意味で「拒否能力」がないからこそ、現実生活の中で苦しむクライエントさんは多いと思う。これは #神田橋條治 先生が述べていること。
だから、治療者は、敢えてサンドバックになって、それでも「生き残れる」ことをクライエントさんに示せる必要があるとすら思う。
クライエントさんは、カウンセラーをサンドバックにして「壊して」しまうことを無意識的には「恐れて」すらいると思う。治療者を「壊す」とことは、治療者に「投影同一視」している自分自身を破壊することになるわけで、それでも治療者が「生き残れる」ことを示した時、クライエントさんの中に、自己と他者への信頼が育まれる。
これについては、すでに以下の記事でも述べた。
心理カウンセラーが、「自分は十分な教育と研修を受けた #有資格者 だから、自分のような専門家を選んでくれ」と「売り込む」ことは、それだけクライエントさんに、自分を高く「売りつけて」いるということだ。 そのことによってクライエントさんに生じる「期待」に答えられない場合のリスクを覚悟しているのかどうか?
この、#資格 という看板に「依存」して「身を守ろう」とすると、逆にクライエントさんを失望させるハードルも低くなるよ、そのことに「防衛的」な反応しかできないようでは、いよいよ資格の権威性を疑わせることになるという悪循環を、特に若い臨床家は自覚すべきと思う。
何回もいろいろな治療者に救いを求めてさまよっては失望を繰り返してきたクライエントさんが、治療者の「あら捜し」に卓越してくるのはある意味で当然のことである。それを、クライエントさんの生育歴に基づく病理の深さ、ましてや「パーソナリティ障害」とすら安易に言い出したくなる誘惑には用心すべきだろう。
いずれにしても、#資格 を持つことを喧伝しようとするカウンセラーは、その資格を盾にした #ナルシシズム への誘惑にも敏感になるべきだ。そうした防衛をうち崩すことなど、幾つもの治療機関を渡り歩いてきたクライエントさんは、容易にやってのけるという覚悟は必要だと思う。
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これは、最近の有資格者論議全体について敢えてマウントを取ってみた考察であるが、実は同時に、治療者に繰り返し被害を受けたというクライエントさんの力動的メカニズムに踏み込むというタブーを犯した内容でもあることに気づく人がどれだけいるだろうか?
見方によれば、カウンセラーの資格、資格ということで、クライエントさんたちに信頼感ではなくて不信感をつのらせ、過去のトラウマの掘り起こすだけになる可能性もあることは必然だと思う。
クライエントさんの側も、その結果「負荷試験」をかけてばかりになり、認知バイアスがかかる誘惑に気づいて欲しいところもある。
これって、過去の治療者遍歴で傷ついてきたクライエントさんのフォロー、フォロアーが結構多い私が「正義の味方」であると自己陶酔せず、同時に(敢えていうが)、クライエントさんに被害者意識に凝り固まって欲しくないから書くことなんですけど。