恋人携帯 勝手閲覧 自殺行為
「まるで僕よりも僕のことを分かっている
ような そんな 変な箱です」
我ら96年組は「RADWIMPSといえば前前前世」という世代とは紙一重で一線を画していると自負している。人は古参でありたがる。僕らが好きだった「有心論」は知る人ぞ知る名曲という扱いになっていたりして。
中学生の頃、RADWIMPSに少しだけハマった。よく聴いていたのは「携帯電話」という曲だ。今思うと全然有名じゃないし、別に歌詞が深いわけでも何でもないのだが、なぜか好きだった。
その中の一節が冒頭の歌詞だ。
PVの主人公は中学生の北村匠海。同じだけ歳を取っているだけなのに、他人のこととなると時間の流れを大袈裟に感じるのはなんでなんだろう。
あの頃はガラケーだった。LISMOが流行っていた頃のauで買った深緑のガラケー。あれが僕の初号機。2号機はもうスマホだった。
3Gの時代ですら、携帯電話は僕よりも僕のことを分かっているくらい情報の塊だった。
世は5G時代。もはやスマホはもう1人の自分だ。僕より僕のことを分かっている程度じゃ済まない。
そんな時代に遠距離恋愛を経験した僕から、みんなに1つだけ当たり前の忠告をしたい。
恋人のスマホを勝手に見るのは自殺行為だ。
なぜなら僕は勝手に見たことがある。
なぜ勝手に見たのか。言い訳を1つだけ。
不安な夜があった。職場の人と飲みに行くと言ったまま朝まで連絡が無かった。
たったそれだけのことだ。たったそれだけのことで情緒が狂ってしまった。遠距離は疑心暗鬼との戦い。完敗した情けない男が僕だ。
答えが知りたかったのだ。勝手に見た理由はそれだけ。あの夜、何をしていたのか知りたかった。
期待していた。何も出てこないことを。
でも分かっていた。何かは出てきてしまうと。
もう一度忠告したい。
恋人のスマホを勝手に見るのは自殺行為だ。
なぜなら、携帯電話は誰よりもその人のことを分かっている、ような、そんな、変な箱だからだ。
もしかしたら少し期待している自分もいたのかもしれない。やっと答え合わせができると。
見たくないと思うほど興味が湧く自分もいた。
ちなみに案の定出てきたよ。
見たくない動画と嫌なLINEのやり取りが。
想像以上にキツいものだ。胸の中にデカい石を落とされたような黒い衝撃が走った。
最後の忠告。
恋人のスマホを勝手に見るのは自殺行為だ。
これは癖になる。
「正解が分かる」ということを心のどこがで頼りにしてしまう。キツいのにやめられなくなる。
何より最もタチの悪い行為だ。
プライバシーの侵害。
悪いことほど癖になる。
弱さを言い訳に人を傷つけてはならない。
携帯電話。
知りたくないと望めば望むほど叶えてくれる。ような、そんな、変な箱です。
みんな気をつけろよ。
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