【文字起こし講演メモ】note CREATOR FESTIVAL Day3.
折り返し地点を過ぎた、note CREATOR FESTIVAL。
ものすごく荒削りですが、文字起こし形式で講演メモを拵えしました。
2日目はツイートまとめ形式に注力していましたが、初日の文字起こしが(荒削りにも関わらず)岸田さんにお褒めの言葉を頂戴したこともあって、3日目は再び文字起こしをすることにしました。
(それゆえ、2日目は文字起こしがアップできるようなレベルに達してませんでした汗)
1日目はこちら
体裁や感想などは後ほど直しますが、とりあえずこのまま公開しちゃいます!!!
Session 6. 体験価値のニューノーマル 龍崎 翔子 × 鳥羽 周作
龍崎さん(以下:り):ホテルプロデューサー。有料マガジン『ホテル経営企画室』を立ち上げ。
鳥羽さん(以下:と):sio オーナーシェフ。Jリーグ練習生から教員を経た異色の料理人。
り:『有料マガジンだと何でも書ける。コロナ禍によってやらなければやらないことが増えた中で本格的に運用し始めた』
と:『店での前後に体験価値を提供するためにnoteを初めた。単純に食べて帰るだけでは伝えられないことを伝えるツールになっている。事前にスープが薄いとnoteに書いておけば本当にスープが薄いんだという体験を提供できる。コロナの中で、実際のレシピを公開するなどを通じて今までのレストランの価値を外に出す機会ができた。テイクアウトなどに提供する上で、8時間後にスープが美味しいかなどを研究した』
り:『ホテルをオンラインに移すという考えはコロナ前からあった。ホテルはメディアだと考えている。リアル空間に客が来れなくてもアイデンティティは揺らがないと思っている』
と『表面的は変化は確かにあったが、会社としてのスタンスは変わっていない。目の前で困っている人が居た時に何ができるかということが念頭にある。ビジネスではなく顧客にベクトルを向けていないとコロナ禍で響くものは提供できないと思う。』
Q.ウィズコロナ前期(4,5月)からの変化はあったか
り『自分たちの中ではコロナ禍によって業界が変わるとは思っていない。むしろ原点回帰。自分たちがコロナによってなにかしたかと言うと、無い。コロナ以前から取り組んでいたことがハマった。旅行以外でのホテルのあり方にフォーカスした取り組み。』
Q.冬の時期に4,5月に上京が戻る可能性もある中でなにか行動を起こしているか。
り『これまでのホテル業態が観光業に依存しすぎていた。ホテルでエンタメを提供する、シェアオフィスや貸しオフィスのような不動産的活用法もあると思っている。長期的な目で見るとやはり変わっていない。顧客に向けておもてなしをするなどを継続させることに意味がある
と『まずは来てもらったり興味を持ってくれた人に100%のものを提供して喜んでもらうことが重要。これまでレストランやシェフが対面で提供してきたものからの変化。本質的には喜んでもらうコトが大事』
Q.場所を複数持つ中で場所の価値自体が変化した。今後新店舗を出そうと思うか。意識して展開方法を変えたりするか
と・り『すでにめっちゃ決まっている』
と『いいものを作り出していけば認めてもらえる。今だからこそ自身を持ってやっていくべき。沢山の人に知ってもらいたい。そこでしか体験できない価値も重要だと思っている。客が何を求めているかが重要。アーティストワークと言うよりクライアントワーク。求められるものを創る』
り『没入性の高さ、普段とは異なる非日常の世界に引き込めることができるか。体験のカスタマイズ性。一人ひとりが何を思うか、課題意識を持っているかをこちらが返す。体験にコミットする=リアルでできることを提供する。オンラインで繋がっているうえで全く同じUIで情報を受け取っているのでインタラクティブ性が低いと思っている。実際に何を得るかという作り込みはリアル空間を作る上で重要になる』
Q.リアルな環境で出会いを創発する工夫
り『体験やサービスの質が良いのはもちろんだが、基本は人に会いに行く口実としての行動がある。オンライン空間で普段あっている人がリアル出会う場を提供できれば良いと思っている。リアル空間の価値は普遍的でむしろ高まるものだと思っている』
と『改めて食が求められる価値も高くなっていると思っている。レストランと食事を直接結びつけることは難しいと思っている。様々な食の形がある中でどこにアプローチするかが重要だった』
Q.顧客層を複数持つと高級層を毀損する可能性があって持たないところがあると思うが
と『どれも美味しくする、幸せの分母を増やす中でポッドの大きさを保つことが必要だと思っている。そのために技術を持つ料理人というのが姿勢。ロイヤルホストも高級レストランもどちらも存在価値としては等しい。淡々とどのシーンでも美味しいものを創る。』
Q.発信において意識したことは
り『本当に無い。強いて言えば中の人をしっかり見せていくことが重要。ホテルでどういう人がどう思って行動しているかを発信していく。イツメンのグルーヴ感を出すことが強み』
Q.旅行そのものが発信されなくなった最近の環境が与えた影響は
り『確かに投稿の数は減っているが一方でコロナで発信することの意識が変わった。瞬間的に消費されるようなホテルづくりはしない。友達の口コミで広がることが理想』
と『おうちsioの情報をリツイートするだけではもったいない。そう行った自慢よりも体験がつなぐエンゲージメントを求める。普通の会話を食を通じてしている感覚。レシピに縛らせるような書き方はしない。余白を残している。豚肉があれば鶏肉がある家があるように冷蔵庫事情はバラバラ。ハードルを低くしてレシピを育ててもらう。自分が体験したものをダイレクトに伝えられるのはオンラインの強み』
Q.オンラインとオフラインをどう融合させていくか
り『リアルにある事物をオンラインで紹介している以上、自然とミックスされる感覚』
と『融合させるファクターは愛。どちらにしてもお客様に目を向けフォローアップしていく。逆にファンを増やす上ではどちらも大事。スタッフ紹介をnoteでしているのは実際にレストランでそうするよりも価値があるから』
り『あまりにもデジタルネイティブすぎて実感がない。普段のスタンスを客は受け取ってくれていてバイブスが合うと思ってくれる人だけが来てくれていると思っている』
と『自分たちのスタンスを表明することで客にも理解してもらう。そのためにスタンスを強く持つ』
り『事前にどのくらい情報量を持っているかで実際の体験の解像度が違う』
と『情報を相手に与えておくことでホームゲーム感覚により近くなる』
り『ホテル側の人間が裏方だと思っていない。裏側を見せない価値観は客の非日常感を損なわないようにとか、もてなす上での矜持だと思う。自分たちはスタッフと顧客は対等で友達感覚に近い。隙を隠さず見せることにデメリットはなく、むしろ自然体で居られるための要素』
と『結局答えは客が持っている。それに対してどういうアプローチをこちらがするか』
り『果たしてお金をたくさん使う客がいい客なのか。自分たちのサービスを愛でてくれる人が良い客だと思っている。そういう人のためにプロジェクトをやる意味があると思っている。これは本質的に変わらない。自分たちのコアを磨き続けることが大事。新聞受けするようなニューノーマルはない』
Session 7. 人間の輪郭を文学とテクノロジーから読み解く 平野 啓一郎 × 松尾 豊
平野さん(以下:ひ):芥川賞受賞作家。『日蝕』『マチネの終わりに』
松尾さん(以下:ま):東京大学工学部教授。2本ディープラーニング教会代表理事。人工知能のパイオニア
加藤さん(以下:か):noteの偉い人
ひ『マチネーはnoteで連載していたことも大きかった』
ま『身になると思ったら学生はついてくる。まさか加藤さんが講座コンプリートするとは思わなかった』
か『数学的な作業の連続から知性ができていくことに感動を覚えた』
Q.平野さんの新作『本心』に関連して。作品背景に現実性があると思っているが。
ひ『人間が対人のAIとの関係を通じて人間とは何かを問う作品』
ま『脳のパラメータ数と提出するデータを比べると前者が圧倒的に多いからまだまだ厳しいのでは。最近イーロン・マスクが情報を得る技術を目標としているが、それですら取れない』
か『AI美空ひばりは感動した』
ひ『アーティストのホログラムが死後にお金を稼ぐことはすでに起こっている。作品ではSF味を持たせることもできるし近未来的な持たせ方もできる』
Q.コンピュータの言語処理がかなり進んできているが、実際コンピュータの中では何が起こっているのか
ま『技術がかなり向上している。ある部分が別の意味を含意するかどうか。ポジティブかネガティブかといったものが言語処理していく上で必要な要素。結局言語は脳が実際にしている思考のごく一部。無意識レベルの脳内処理をコントロールすることができなければAIの究極的な進化は難しい。GTP-3というAIモデルでは、小説書けるようなレベルにまで成熟してきてはいる。ある部分を隠してその空白を当てさせる学習を施すことで文章や言葉の意味を深堀りさせることができる』
ひ『脳の構造への具体的なアプローチは』
ま『構造的アプローチや産業応用など様々なパターンがある。人間の知性に人工知能が追いつくかというのもそう。人間の知能には早い思考と遅い思考がある。前者は反射、ひらめき。後者は熟考。』
Q.数年前あった時に言語処理はまだまだ難しいという話があったが、現在は?
ひ『単純なやり取りにコンテクストは必要ないが、哲学者の言葉の含意に目を向けるのはまた別の問題だと思う』
ま『基本的な事を言うと、まず言葉の要素を全部外して猿や犬の感覚にもっていく。そうすると入力は視覚や聴覚、出力は行動になる。これに言葉を持ち込むと、言葉そのものが入力要素になる。発話が出力。人間は入出力系統がそれぞれ二つあって複雑に絡んでいる。言葉のチャンネルによって視覚を予測したり、知覚から知覚を予測。基本的に、意味を理解するというのは言葉の情報から知覚の模擬情報を作り上げること。言葉が入ることで情景やイメージを理解する。最下層にグラフィックがある。犬と言われれば犬を思い出すが、動物はイメージできない。ただ真相的な意味で縛られながらもぼんやりとした像は描かれている。』
ま『言葉や知覚の連携は知能の本質的な部分だとされてきたができなかった。最近になるとシステム1は出来上がってきた』
ひ『例えばコンピュータに目をもたせて画像から他の情報に置き換えることはできるのか』
ま『科学者は今そういったデータセットを作りまくっている。平野さんが行ったことをやろうとすると、今度は動画や言葉のそれが必要』
か『松尾先生の講座の最終課題が翻訳システムを創ることだった。驚いたのは30行くらいのデータに日英のデータを持ち込むと翻訳ソフトができること』
ま『子供は自分で教えられないのにちゃんと覚えられる。これが教師なし学習。今のAIの学習法はそれが主流。』
か『教師アリはデータセットが多量に必要だがなしだとそれは必要ない』
ま『会話においては常に予想学習の繰り返し。それがあるから感情の構造を的確に把握することができる。それと同じようなことを画像であれ言語であれ構造の対象を抜き出しさせすればタスクは自ずと現れる』
ひ『人間が例えばペットボトルを認識する時に画像と概念を合致させることはキレイにリンクしている。機会が動画を観て言語処理をしていく中で.....』
ま『例えば画像とキャプションでやると犬が飛び跳ねている画像を見て犬と飛び跳ねている動作を学習させたいのに、他の要素によってズルをする。赤ちゃんが言葉を覚える上でも、まず意味のない言葉を発するだけで親が喜ぶことを覚える。その後に何らかの意味を持つ言葉を発して更に親が喜ぶことを通じて言語習得につながる。それは普段の生活や文化にもリンクしているのでなかなか根が深い。動いているものに注目するということは先験的な知識。人間が色とサイズと種類のなにを優先させるかというものもある』
ひ『絵画は描きたいものにフォーカスしているが、写真はそうは行かない』
Q.人間の心の正体とは
ま『心を持っているというが、心とはなんだろうか?』
か『平野さんの作品の中でも、心がないことに言及する描写がある』
ひ『メディア論においては心理的な問題もある』
ま『本能的な部分は潜在的に進化の過程で人間に組み込まれている。心を形成する上でシステム1と2の両方の要素が必要なのは確か。そこに肉体的要素が必要かはわからない』
ひ『なにかあると胸がモヤモヤするように肉体的な部分もあるのではないか』
ま『通常プログラムを書く上ではアクセスする情報に制限があるが人間の処理には無制限。それによって自身をモニタリングできるので回帰的な学習ができる。自分を概念として取り出す必要はない。人間的にそれが必要なのは言語の存在があるから。それによって報告的タスクが積み重なっている。そのうえで自分に焦点を与える再帰構造ができる』
か『平野さんの分人主義ににたものを感じる』
ひ『自己意識の構造に身体の存在があるから、身体の参照によって相手や自分を認識する』
ま『課される言語タスクが多様であるほど分節が分かれる。コンピュータがアイデンティティを持つことは現在では無理。というかしない。壊れるから』
Q.肉体は?
ま『難しい話。インターネット上では行動認識のサイクルができるので肉体的存在があってもおかしくない。身体性が本当に重要なのかは実際に行動が内在しているか、それを学習させる必要があるかに帰着する。何かを学習するということはコレを観てコレを予測してという問題を創ること。だから行動は組み込まれておかしくない。身体が必要かというよりは学習において環境に入り込んで行くかが問題。人間の行動を観察無しでどのくらい学習できるかというのは相当難しい話』
か『人間の場合は介入によって学習している。ググるだけじゃ無理?』
ま『ビールの栓を触れることなく感覚を理解できるのかという話』
ひ『人間には死があるから個体の生存戦略がある。コンピュータが賢くなるうえでの動機づけはよくわからない』
Q.コンピュータが人事査定をする世界が平野さんの作中に出てくるが
ま『人間がやると相当難しい。様々な要素が影響を及ぼすから』
か『将棋において人間がコンピュータに負けた時にすべてコンピュータが成り代わってもいいんじゃないかと思った』
ひ『実用的レベルで考えると、人間がめんどくさいけどやらなきゃいけないことはある。レジ打ちとかレントゲン検査とか。できたらやらなくて住むことをAIにやってもらうこともできる。もう一つは人間の相手をAIにしてもらうという使い方。AIが世間に出る前に環境的なゴチャゴチャがあまりにも増えすぎている。患者一人とっても、診断する上でのデータ量が増えすぎている。どこかで圧縮しないと処理しきれないはず。それを圧縮することが必要なはずだし。イギリスでも初歩的な問診をやっていたが、そうした部分をAIにまかせてもいいと思う。より人間の世界がヴァーチャルな世界に取り込まれていくはず。対人間主義な思考が強いのも良くない。相手が人間じゃないからといって否定するのはどうなのだろうか。』
ま『本能的な感情は数万年単位で変わっていない。そこに依存した幸せや嬉しさに固執する以上、結局マウント取り合いの世界になる。AIが入ってきてもマウンティングする世界に変わりはない。そこをテクノロジーによってハックされると当人が幸せでもディストピア的な感覚になる』
か『もう半分そうなってますよね』
ひ『コロナもあったし』
ま『それによって知性や....内分泌性を変えると仕事をいくらしても喜びを感じられる人間が出来上がる』
ひ『そういう人いますね』
ま『自分の快楽のためにボランティアしまくる人とか』
か『すでにそういう人も居ますね』
ま『それをコントロールできるようになるとまずい。政治や宗教の世界とつながるとなおさら』
ひ・か『たしかにそうですね』
Q.人間の行方的な部分で創作にAIがつながるといいと思うが
ま『単純な創作はもうできる』
か『それでも創作は人間の専売特許みたいなところがある。良い悪いの判断はコンピュータでできるのか』
ま『それはできない。今までの価値基準でいいものを創ることはできるが、新たな価値基準やより深い部分に触れるのであればまだまだ人間のほうが得意なはず』
ひ『人間だから発想し得るという希望と、結局受け手として人間だからいいという部分もある。今はAIがすごいと思えるけどそのうちAIだからできるという判断軸ができるかも。プロットなどを3割AIがやってそれ以降を人間がやってもいい世界が来るかも』
ま『俺がいいと思うからいいんだという発想が重要』
ひ『音楽みたいに身体的な感動をもたらすものはできそう』
Q.最後に一言。
ひ『勉強になりました。僕は小説家だからAI自体に興味があるというより、それによって人間に光が当たるということに魅力を感じる。そして共存する以上、AIを"知る"ことは必要』
ま『人間の知能の仕組みが近い将来わかるといいと思ってる。わかんないのに生きてるのがもどかしい。何よりもこの組み合わせの対談を設定したということこそが想像力』
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?