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「トンデモ本」からSNSへ
かつては陰謀論やデマの出どころは本であった。
「トンデモ本」と呼ばれる本があふれていた。これらはオカルトや疑似科学を本気で論じているような本を指していたが、最近ではすっかり読まれなくなってしまったようだ。
これらはある意味では陰謀論やデマを扱っていたのだが、今ほどは倫理的な問題にはならなかった気がする。
もちろん差別的なものや、とんでもない医療の本もたくさんあったが、読者はそこに危険な匂いを感じ取れていたんじゃないだろうか。
少なくとも、その本の内容をまるっきり信じるような空気はなかったような気がする。
テレビのUFOや徳川埋蔵金の番組を楽しんでいても、本気にはしなかったように。
ところが最近では、そういった陰謀論やデマをまるっきり信じる人々が顕在化している。
これは、陰謀論やデマの出どころがSNSであることと無関係ではないだろう。
「トンデモ本」をあくまでエンターテイメントとして楽しめていた時代とは違う。
SNS上の陰謀論やデマを真に受けて、それが差別的発言や政治活動、投票行動にまでつながっている。
「トンデモ本」として、コンテンツとある程度の距離感を保てていた時代は終わってしまったようだ。
SNSというフィクションの中に飲み込まれて、陰謀論やデマが思考にこびりついて離れなくなってしまう現象。
この現状に、「本」や「読書」ができることがあるのではないか。
古原大樹/ブックアンカー
1984年山形県生まれ。山形大学教育学部、東京福祉大学心理学部を卒業。高校で国語教師を13年間務めた後、不登校専門塾や通信制高校、日本語学校、少年院などで働く。
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