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90年代後半~00年代ハウス・ミュージック(3):備忘メモ

90年代後半~00年代のハウス・ミュージックは、気付いたら消えていなくなっていたというトラックメーカーやプロデューサーがたくさんいた。それは時代と共に廃れがちなジャンルならではで、意図的に思い出さないと忘れてしまう。
だから埋もれさすには惜しいトラックを備忘のメモとして残す。かつてレコードで購入した音源がメインとなり、これはその記録の3つめ。
(備忘メモの(2)はこちら)


Moving On Up (Mark!s Millennium Vocal)/M People

BMGからから1998年にリリースされた12インチ2枚組の『The Best Of M People (Remixed 2)』へ収録されていた1曲。

シカゴのプロデューサーMark Picchiottiによるリミックスで、こみ上げるようにして盛り上げてからのヴォーカルパートへと導入していく展開が巧い。
オリジナル曲のキャッチーなところと、フロア向けにビートを強調する尺の配分が素晴らしく、なかなかサビへいかない「焦らす」典型的なハウス。

サビへと向かうヒット音が過剰だからダサいようにも思えるけど、ドスの効いたHeather Smallによるヴォーカルが抑制しているから全体としては問題無し。

この12インチのA面に収録されている「How Can I Love You More (Jimmy Gomez 6am Mix)」も突き抜けるような多幸感があって好き。


Do What We Would (Sharp Boys Cyclone Remix)/Aczess

Sony系列のイギリスのレーベルSine Danceから2001年のリリース。

パンチの効いたリズムにのせて気怠げな女性Voで「What We Would~ 」と繰り返されるどこか怪しげなトラック。
テンション高めだけど起伏は少ないから使い勝手の良さそうなリミックスはThe Sharp Boysによるもの。

このトラック、Whosampledで確認するとDavid Bowie「Let's Dance」をサンプリングしているとあり、恐らくリズムにのせて繰り返しループしている揺れるような音色がソレ。


Double Drop (The Sharp Boys Beyond Vocal)/Fierce Girl

ロンドンのレーベルThe Red Flag Recording Co.から2004年のリリース。

こちらもThe Sharp Boysのリミックス。
ユニゾンでのやたらと暑苦しい男性voと、グイグイ迫ってくるベースラインがクセになるリミックスで、大きめの箱でも映えると思う。

下品でむさ苦しいけど一周回って楽しくなってくるノリの良さがあるから誰かと一緒に踊りたくなること必至。
忙し過ぎて頭を空っぽにしたい時には最適なトラック。
トライバル気味のリズムも良くて、ピークタイムへ向けて全体の構成をリフトアップしていくのにも合う。
※残念ながらこの曲はYouTubeで検索ヒットせず。(Spotify、Appleにはアリ)



Ain't No Mountain High Enough (Sound Clash Dub)/Jocelyn Brown

不朽の名曲を1998年にDavid Moralesがプロデュース。レーベルはUKのINCredibleから。

いわゆるダブミックスだからリスニングよりもフロアユースなトラック。
元曲に忠実な「The Classic Mix」(11分超え)はリスニング向きで、踊るという機能性で考えるとこちらのリミックスの方がベター。
張り上げるように歌い上げるJocelyn Brownのヴォーカルを切り分けてループさせた迫力のあるトラック。


Nassau Rules/Knee Deep

ハンブルグのレーベルRecords Of Interestから2002年のリリース。

The Beginning Of The End「Funky Nassau, Pt.1」にハウスビートをのせただけと言ってしまえばそれまでなんだけど、オリジナルへ忠実なのにここまでハマる曲は珍しいと思われ、発掘したKnee Deepを褒めるべき。

かなり気分のアガるラテン・ハウスでありながら、センスの良さが光るのはファンクでありながら、声を張り上げずに淡々と歌い上げているのに存在感の強いヴォーカルのおかげかも。
繰り返すが元ネタになった曲が素晴らし過ぎる。夏に炎天下でビールを呷りながら聴きたい。


Doesn't Really Matter (Jonathan Peters Club Mix)/Janet Jackson

Universal Music Groupの系列、Def Jam 2000から2000年のリリース。

ギターのアルペジオがいい雰囲気を出しており、オリジナルのJanetの歌を引用したお手本のような隙のないハウス。

エスカレーターを駆け上がっていくように歌われるサビがそのまま利用され、キラキラした印象のせいか、明け方とかにフロアで聴いたら泣いてしまうかもしれない美しさがある。


Falling For You (Shelter Falling Mix)/Ananda Project Featuring Terrance Downs

10分超えのリミックスは、USのレーベルNite Groovesから2001年のリリース。

ハズれが少なく、常に一定のクオリティのトラックを提供してくれるChris BrannによるAnanda Project名義のリリース。
さらにこれはBlazeによるリミックスで、この二人が揃ったら取り敢えず及第点は間違いない。

アトランタを拠点に活躍するTerrance Downsの深みのある男性Voが印象的なお洒落ディープ・ハウスで、空間系のパッドと硬質なピアノそして自由に鳴り響くシンセのフレーズにいつまでも浸かっていたくなる心地よさがある。


Dance For Life (Little Big Bee Latin Break Mix)/Kenny Bobien

UKのレーベルDisorientから2003年のリリース。高宮英哲によるユニット、Little Big Beeのリミックスが3バージョン収録されたうちの1曲。

敢えてジャンル分けするならゴスペル・ハウスになると思われ、ラテンぽいパーカッションとKenny Bobienのファルセットボイスが上品なハウス。

ヴォーカルと絡みあるようにサックスの音色も入ってくる後半の盛り上がりは一聴の価値あり。アフターアワーに聴きたくなるようなアンセム感がある。


今回も8枚のレコードの感想をまとめた。
当時購入したレコードの多くは、1枚あたり1,200円くらいするいわゆる12インチシングルだった。
購入したレコードにはリミックス違いで1~3曲くらい収録されているのが多数を占めていたけれど、本当に聴きたい目的の曲はたいてい1曲だけ。
つまりたった1曲のために1,200円も支払っていたわけで、特段稼ぎが良かったわけでなく、モテ無いからデートとかに遣う必要が無かったからというのもあるけど、今だったら躊躇するほど単価が高い。
でも、レコード屋特有の匂いであったり、そこに集う人たちや、レコードを手で触れて、目で大きなジャケットを楽しむという行為は五感が楽しかった。
データとして保持するのは検索性に優れてるし安価だから戻れないけど、失ったものの価値についても忘れないようにしたい。

また気が向いたらストックを掘り返してメモとして残す予定。



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