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春に向けて気分を盛り上げていく音楽(2025年)

寒くて出不精になってしまいがちな時期でも、お気に入りの音楽を聴きながらであれば気分転換に外へ出てみようかなという気分になったりするから、そういう音楽を中心に集めてみた。
とはいえゴリゴリ過ぎたり、イケイケアッパーな感じだけではなく、あまり下世話にならない範囲で、なおかつこの1年以内にリリースされた作品を中心に選択した感想などを。

Hiddo dhawr/Sahra Halgan

東アフリカにあるソマリランドからフランスへ亡命したSahra Halganによる3rdアルバムはDanaya Musicから2024年3月のリリース。

アルバムリリース前にラジオから流れてきた「Sharaf」を聴いて気に入ってしまった。
キレのいいウネるギターサウンドと、跳ねるようにノリのいいリズム、そして疾走するオルガンと力強く絡むおばさんの枯れた感じのヴォーカルという奇妙な組み合わせはとにかく個性的。
歌詞はちっとも解らないけど、おばさんの声に心を掴まれてしまい、気が付くとここ一年くらいアルバムを通して何度もリピートしてしまっていた1枚。

少しダンサンブルでありながらエスニックな薫りも漂うロックはアフロポップとでも形容すればよいのか。どこか牧歌的でありながらもシャープなロックは独自の世界観で、アルバム全体を通して質が高い。


Mr Bongo Record Club, Vol. 7

Mr Bongoレーベルからのコンピレーション第7弾は、2024年10月のリリース。過去作を聴いている人にとっては決して裏切らない選曲となっている。

チルアウトできるような情感のたっぷりの楽曲から、アフリカっぽいリズムでダンスフロアを意識したようなグルーヴの曲まで選曲センスの良さがキラリと光るブラジル音楽。

小さいクラブでかけたら盛り上がりそうなOs Panteras「O Espaço」や、ボサノヴァのノリで後半にリズムが激しくなるRoman Andren「Captain's Sword」がお気に入り。
最近はアルバムを通して聴くことがめっきり減ったけど、総じてクオリティが高いし緩急のある曲順も素晴らしいから通して何度も聴いた。


Glasgow Eyes/The Jesus And Mary Chain

かれこれ結成40年を迎える兄弟ユニットによる8枚目のアルバムが2024年3月にFuzz Clubからリリース。

90年代前半にシューゲイザー・ブームのあった頃はまぁ聴いていたけど、今更JAMCなんて聴かないよな。と思いつつ気まぐれに聴いてみたら1曲目の「Venal Joy」のレゾナンスの効いたシンセ・サウンドにやられた。
脳天を叩くように暴力的でありながらもシンプルで楽観的だから思考を空っぽにできる。そうしてノイジーでありながらもメロディーが意外に良くて聴きやすい。
アレンジや曲としての完成度が過去作と比較して進化しているのは確かなんだけど基本路線は一緒だから昔からのファンも裏切らない絶妙なところをついているのではなかろうか。
そうして40年活動して8枚というスローペースの割には存在感がある兄弟だと思う。


Cartoon Darkness/Amyl and the Sniffers

オーストラリアのパンクバンドの3rdアルバムは2024年10月にRough Tradeからリリース。

郊外と思われる日当たりの良い街のどこかで、おのおのが奇妙なポーズを取り、先頭にいる金髪ねーちゃんのさらけ出した胸にぼかしの入った頭の悪そうなカバー写真に興味を惹かれて聴いてみたのだけど、これがなかなか良かった。

「Chewing Gum」でのキレの良いギターサウンドが好き。野蛮なパンクだけど「Tiny Bikini」など、メロディは総じてキャッチーで「Me and the Girls」ではヴォコーダーを使用していたりと、飽きさせない工夫や創作意欲を感じる。

Rough Tradeはかなり老舗のインディー・レーベルだけど、こういう攻めたバンドと契約するからこそ長続きするのだろうな。


Hit Parade Remixes/Róisín Murphy

元Molokoのヴォーカリストという肩書が霞むほどに個性を放ち続けるRóisín Murphyによる6枚目のアルバム『Hit Parade』のリミックスが2024年9月にリリース。レーベルはMickey Murphy's Daughterから。

オリジナル盤はDJ Kozeプロデュースということで、エレクトリックなサウンドとアナログな質感の音が混ざり方が絶妙だった。このリミックス集も踊らせるよりもリスニング向きの楽曲もちらほら。

下世話で派手目に仕上げたけどカッコいい「The House (System Olympia Remix)」や、シンセのアルペジオが特徴的な「You Knew (Eli Escobar Remix)」あたりが好き。

10分以上も尺があって、Lil Louis「French Kiss」を彷彿させる「Can’t Replicate (Hernan Cattaneo & Mercurio Remix)」なんかは、ダンスフロアで聴けたら気持ち良いだろうな。

『Hit Parade』のカバー写真が完全に笑わせにきていてヤバかったけど、こちらの盤のイラストはMonica Torassoという人のものだけどこちらもインパクト大でGood。
プロデューサー起用の嗅覚に優れている女性アーティストというと、MadonnaやKylie Minogueを想起させるけど、インパクトを出すためにワザとブサイクに見せたり突飛な服装をするRóisín Murphyの方がカッコいいと思う。

残念ながら、本アルバムはSpotifyに無い。


Songs About You Specifically/Michelle

NYの6人組Michelleによる3rdアルバムは、2024年9月にAtlanticからリリース。

甘くソフトな質感の女性ヴォーカルを中心に、浮遊感のあるR&Bやファンク・ミュージックが聴ける。それは耳当たりの良いポップスでもあり、インディーバンド特有のプリミティブな質感もある。
シングルカット曲「Oontz」のこなれたメロディーのセンスとか素敵で、全体的にポップだけどダサくならないギリギリのところで踏みとどまっているところが良い。
カバー写真からは小難しいアート寄りの実験的な作品を想像したけど、いたってまっとうなポップスだと思う。


Tensnake Pres. Best Of True Romance 2024

ベルリンのレーベルTrue Romanceから2024年12月にリリースされたコンピレーション。
Tensnake(本名Marco Niemerski)の選曲となり、ディスコの影響をモロに受けたイケイケなハウスが20曲収録。

とりあえず、Paul Rudder & Tensnakeによる「Nostalgic Feelings (Tensnake Remix)」の軽快な女性voとキレの良いピアノサウンドが気分を上げてくれる。
Street Player & KLPによる高揚感のある「Something Beautiful feat. KLP」もベタだけど好き。
Claus Casper「Take Me」の電子ピアノのループや、スネアロールを聴いていると90年代ハウスかよ!とツッコミたくなるほど古典的だけれども、2000年前後のハウスにどっぷり浸かっていた自分にとってはどこか懐かしさもありつつ聴きやすい王道のハウス・ミュージックが収録されている。
逆にEDM以降のサウンドが好きな人には物足りないかもしれない。


Why Is the Colour of the Sky?/Bananagun

メルボルンで活動する5人組、Bananagunによる2ndアルバムがP-VINEから11月のリリース。

ジャンル的にはサイケロックとなり、目まぐるしく展開する60年代ロックを彷彿とさせる「Feeding the Moon」のようなインストが心地よい。

いい感じに肩の力の抜けたロックを気楽に聴きたい時にちょうど良いのと、前作がNMEで高評価だったらしいから、UKのインディーズバンドのサウンドが好きなら気に入ると思う。


このテキストを書くにあたって、ここ1年くらいにリリースされた様々な楽曲を聴き直してみたのだけど、今回選択した8枚は軽く聴き流すだけでも気分が高揚してくる。
自分の身の回りには何かと暗い話題が多くて、だからこそ気分のアガる音楽を聴いてセルフで気分を切り替えていこうと思う。


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