マガジンのカバー画像

ゲームの感想

49
新旧問わず、プレイしたゲームの感想について 購入したのにまだプレイ出来ていないゲームもたくさんあって、どこから手をつけたものか。
運営しているクリエイター

記事一覧

さよならを教えて(感想3)_社会から受け容れられないこと

『さよならを教えて』は、2001年3月2日にCRAFTWORKから発売したノベル主人公、人見広介の内面の写し鏡のように存在する各ヒロインたち(上野こより、田町まひる)についての感想を個別に深堀りしてみる。 巣鴨睦月、高田望美、目黒御幸の感想はこちら。 以下、ネタバレを含む感想などを。 上野こよりへの暴力行為から想像すること弓道場で出会う上野こよりは弓道部員ということで登場するが、実際は人形。 人見くんの印象では”今時のコには珍しい”や”クラシック”と形容されているから、古ぼ

さよならを教えて(感想2)_現実へ引き戻されることへの拒絶

『さよならを教えて』は、2001年3月2日にCRAFTWORKから発売されたノベルゲーム。 主人公、人見広介の内面の写し鏡のように存在する各ヒロインたちについての感想を個別に深堀りしてみる。 以前に書いた作品全体に対する感想はこちら。 以下、ネタバレを含む感想などを。 最終的な辻褄の合う巣鴨睦月とのコミュニケーション巣鴨睦月は5人のヒロインで唯一現実に存在する生身の人間。しかしいくつかの登場シーンでは人見くんの妄想する睦月が混ざりあっている。 そのため睦月の行動や態度には人

天使のいない12月(感想2)_恋愛の自己中心的な側面について

『天使のいない12月』はLeafより2003年9月に発売された美少女ゲームで、企画・シナリオ担当は三宅章介。 感想は登場人物たちへ批判的なことを書きがちなのは、出てくる言葉と本音の乖離が自己中心的な性格にあるからで、作品そのものに対しては好印象。 前回書いた、栗原透子と榊しのぶルートの感想についてはこちら。 以下、麻生明日菜、葉月真帆、須磨寺雪緒ルートのネタバレを含む感想などを。 淋しさを埋めるために、優しくしてくれる麻生明日菜麻生明日菜には、時紀がバイト先で出会った瞬間か

天使のいない12月(感想1)_刹那的な幸せとその先の不安について

天使のいない12月』はLeafより2003年9月に発売された美少女ゲームで、企画・シナリオ担当は三宅章介。 恋愛ものにしては拗らせ方が他作品と比較して突出しているのがユニークで、作品タイトルどおり救いの無いエンディングが多いから冬にプレイすると身も心も寒くなれる。 以下、栗原透子と榊しのぶルートの感想についてネタバレを含む感想などを。 現実逃避を目的とするセックス木田時紀は学生でほとんど家にいない両親と年子の妹、恵美梨と暮らしている。 主人公の時紀を含めて5人のヒロインもす

月姫(同人版)(ゲーム感想3)_復讐後の告白について、翡翠/琥珀ルート

『月姫』は2000年にTYPE-MOONから発売されたビジュアルノベルとなり、シナリオ担当は奈須きのこ、原画は武内崇。 前回書いたシエル/秋葉・ルートの感想はこちら。 以下、旧版の翡翠/琥珀ルートについてのネタバレを含む感想などを。 槙久の悍ましさが際立つ翡翠・ルート翡翠・ルートでは、翡翠が主役なのに物語後半の盛り上がる場面を琥珀の告白に持って行かれるのと、他ヒロインが不幸自慢のチキンレースをしているせいか翡翠への印象が薄いというか、翡翠に対する感情移入がしづらい。 志貴

月姫(同人版)(ゲーム感想2)_手にしたものの代償を考えるシエル/秋葉ルート

『月姫』は2000年にTYPE-MOONから発売されたビジュアルノベルとなり、シナリオ担当は奈須きのこ、原画は武内崇。 前回書いたアルクェイド・ルートの感想はこちら。 以下、旧版のシエル/秋葉ルートについてのネタバレを含む感想などを。 シエル・ルート、死ねない女の選択シエル・ルートでは、アルクェイドを一度殺してネロ・カオスを倒すくらいまでは、アルクェイド・ルートとほぼ似た物語の展開となる。 シエルは以前にロアとして覚醒しており、その際ロアの魂のみアルクェイドに倒されるも、シ

月姫(同人版)(ゲーム感想1)_真っ直ぐな性格が魅力のアルクェイド・ルート

『月姫』は2000年にTYPE-MOONから発売されたビジュアルノベルとなり、シナリオ担当は奈須きのこ、原画は武内崇。 2021年に発売されたリメイク版はルートが少ないことを差し引いても馴染めず、改めて旧版(同人版)をプレイしてみたらリメイク版よりも好印象だった。 旧版はかつて秋葉原中央通り沿いにあった路面店にて2,000円くらいで購入した記憶があって、シナリオの出来は当時の他作品と比較して抜きん出ていたと思う。 以下、旧版についてのネタバレを含む感想などを。 表側2つと、

どうして、そんなに黒い髪が好きなの?(感想)_美人過ぎても、またはブサイク過ぎても生き辛いこと

『どうして、そんなに黒い髪が好きなの?』は2014年10月にファイヤワークスから発売されたビジュアルノベルで、シナリオ担当は籐太。 黒髪好きというネタ感満載なタイトルからは想像しづらいほどシナリオはまともで、まぁまぁ楽しめた。 以下、ネタバレを含む感想などを。 かつてはおかめ顔が美人とされた黒髪への拘りについては主人公の神前春人による嗜好によるものでしかなくシナリオそのものに大きな影響を与えているものではなく、むしろ日本神話に登場する姉妹、コノハナノサクヤヒメとイワナガヒメ

MUSICUS!(感想2)_人々の共感を得られる表現について考える

『MUSICUS!』は2019年12月にOVERDRIVEから発売されたビジュアルノベルで、シナリオには瀬戸口廉也が関わっている。 以下は長くなった感想の続きで、花井三日月、香坂めぐるルートの感想はこちら。 なお、感想にはネタバレを含む。 バンド活動を諦めることで失い、得たものを考える、尾崎弥子ルート馨が弥子の家に招かれ、売れない画家のまま亡くなった弥子の父親のエピソードを聞いたうえで、「どんな形であれ、自分の人生をギャンブルにするなんてあってはいけない」を選択するルート。

MUSICUS!(感想1)_貪欲に何でも利用するか、または自分さえ楽しめればよいのか

『MUSICUS!』は2019年12月にOVERDRIVEから発売されたビジュアルノベルで、シナリオには瀬戸口廉也が関わっている。 音楽の持ついくつかの”価値”や付随するコンテキストをテーマに、4つのルートそれぞれが異なるあり方を提示してくれるのは好印象。 以下、ネタバレを含む感想などを。 提示されるいくつかの音楽の価値本作のヒロインは全部で4人。主人公の対馬馨が人生の分岐点で決断することで物語は各ヒロインのルートへと分かれていくのだが、これらの選択肢それぞれがいくつか提示

英雄伝説 空の軌跡FC(感想)_主要キャラの魅力が高いRPG

『英雄伝説 空の軌跡FC』は2004年に日本ファルコムからWindows OS向けの発売されたRPG。英雄伝説シリーズとしては、初期2作品とガガーブ3部作の後発となるため通算6作目となるけど、シリーズとしての物語や設定の繋がりは特に無い。 本作は後にWindows 8対応版、PSP、PS VITA、PS3、モバイルなどに移植されてヒットしたことで、PC向けのメーカーから脱却したという印象がある。 以下、ネタバレを含む感想などを。 どんな依頼でも引き受ける本作はエレボニア帝国

Swan Song(感想2)_人間同士の軋轢と、その先にあるものについて

『Swan Song』は2005年7月に発売されたビジュアルノベルで、シナリオライターには瀬戸口廉也が関わっている。ブランドはLe.Chocolatから。 以下、本作の中心人物となる6人についての感想を深掘りすることでネタバレを含む感想を。 作品全体についての感想はこちら。 八坂あろえ雲雀の解釈によれば、あろえはナカマが不在のため周囲から孤立しているとある。善悪やモラルについての判断や思考は出来ないが、あろえなりの確固たるルールは存在する。行動理由はほぼ欲求に素直で、存在そ

Swan Song(感想1)_おぞましいほど醜い地獄絵図のなかで、見いだす希望

『Swan Song』は2005年7月に発売されたビジュアルノベルで、シナリオライターには瀬戸口廉也が関わっている。ブランドはLe.Chocolatから。 ゲーム内はたいてい曇天か降雪のため、冬の寒い時期にプレイしたくなるゲーム。年末から2週間くらいかけて久しぶりプレイしてみたが、精神的に削られる場面が多数あるためどうしても時間がかかる。 以下、ネタバレを含む感想などを。 過酷な環境で問われる人々のモラルクリスマスイブの雪深い温泉地の地方都市、大学生の尼子司は自販機へ飲み物

大戦略II(感想)_ユーザーを巻き込んだ優れた拡張性

『大戦略II』は1988年にシステムソフトから発売で、実際の兵器を扱ったSLG。戦場マップや戦闘シーンは似たようなイメージだが、ゲームシステムとしては前作の『現代大戦略』から大幅に刷新されている。 私が当時プレイしたのはPC-98の『大戦略IISP』というマイナーチェンジ版だった。 前作から大幅に刷新されたシステム64☓64のHEXで構成されたマップ上を、ターン制で各陣営がユニットを動かして戦闘する仕様は前作と同様。各ユニットにはじゃんけんのように得手不得手があって、マップ