アホとバカにみる「方言の境界線」を考えてみた
私は録画した番組で「これは!」と思うものがあればとにかく「保護」するのですが、それもかなり貯まってきたので、先日それらを一気に整理してみました。
その中に昨年の5月に亡くなった上岡龍太郎さんの追悼番組があって、再度じっくり見入ってしまったのです。
そこには当然ながら、彼の看板番組である「探偵ナイトスクープ」も紹介されていて、懐かしさが蘇ってきました。
これは関西ローカルなのでしょうか?
簡単に説明すると、視聴者からの素朴な疑問に、お笑いタレントたちが「探偵」となって調査し、結果報告をするという実に面白いバラエティ番組で、私などは、特に上岡さんが司会の時代には欠かさず見ていたものです。
あくまでもお笑いバラエティなのですが、そんな一言では片づけられないぐらいの人生ドラマがあり、どんなバカバカしい依頼であってもいつの間にか泣かせられている事もありました。
この番組は笑わせながら泣かせるという、高度な「ノンフィクション感動番組」だと思っています。
上岡さんの後、西田敏行さんが局長を引き継ぎ、松本人志さんへとバトンタッチされましたが諸事情により、今は固定された局長はおらず、出演メンバーらが週替わりで局長を務めています。
「なんや華が無くなってしもたなぁ」と、番組ファンとしては嘆くしかない状態に寂しさを感じているのは私だけではないはずです。
アホとバカの境界線をさがせ!
番組調査の大抵はバカバカしいものではありますが、その中でもいわゆる神回といわれるものがあって、さらその中で34年も前の平成2年(1990)に伝説に残る超神回となった「アホとバカ」の地理的な境界線を調査するものがありました。
担当の探偵は当時、中途半端な調査で知られていた北野誠さんでした。
一大プロジェクトに発展
「アホバカ」は、ほとんどの人が予想していたのは、おそらく「関ケ原」あたりで西と東に分布は分かれるのではないかと思っていたところ、調査を東京から始めてみると、静岡あたりまでは順当に「バカ」だったのが、突然「名古屋」で「たわけ」が登場して番狂わせとなります。
そういえば、歴史小説の織田信長のセリフで「たわけ」はよく登場します。
中途半端さには定評があった北野探偵、そこを単にスルーした調査結果を持ち帰り、上岡局長の鋭いメスが入りました。
「『たわけ』の境界線はどこやねん!ちゃんと調べんかい!」
この一言のツッコミにより、上岡さん率先によるそれらの分布を調べる言語の学術的調査ともいえる一大プロジェクトが始動することになり、その精査した結果が特別番組として放送されたのです。
アホバカだけではない
とんでもない種類があった
真剣に調べてみると「アホバカ」の方言は全国で約320種もあるそうで、当初、簡単に考えていたものと大きく違っていたことがわかりました。
録画したテレビの画像を載せてもよかったのですが、細かいのもあってかなり不鮮明になるので、私なりに見やすい画像を探してみました。
関西などの「アホ」、関東などの「バカ」、愛知県などの「タワケ」以外に、石川県・富山県・島根県などの出雲や北陸地方に「ダラ」があると判明!
その中に、やや例外的に兵庫に「ダボ」岡山には「アンゴウ」が存在していたのです。
私は兵庫県に住んでいた時期もあったので、「ダボ」は知っていましたが、岡山の「アンゴウ」はまったく初耳でした。
その他の全国の一般的な言い方は次の通りだそうです。
北海道や東北の山形と遠く離れた九州の福岡と熊本が同じ「あんぽんたん」なのは不思議です。
この理由は何なのでしょうか?
特に北海道は本州から入植した人々が多いためか、基本的な「バカ」を使うところもあるのですが様々な方言があり、特に「はんかくさい」は関西人にとって、もはやわけがわからず、完全なカオス状態です。
沖縄に至っては、これは全く通じません。
宮崎や大分の「しちりん」は魚を焼く「七輪」しか浮かびませんし。
とにかく同じ日本でも、日本語として成立していないのではないかと思うほどの言語が散見します。
ところ変われば言葉も変わる
関西人にとっての「バカ」
不思議なことに関西人は「バカ」や「バーカ❕」「バカじゃない?」とか言われると、必要以上にカチンと来ます。
同じ人を見下した言い方でも圧倒的に「アホ」「アホちゃうん?」の言葉にはどこか温かみを感じるのですか、関東圏の「バカ」は本当に下に見られたと受け取ってしまうのです。
これは以前も方言の記事で書きましたが、関西人の関東圏に対する一種の対抗意識が根強く残っているせいかもしれません。
体調が悪い時の言葉
体調が悪い時や疲れた時にどんな風に伝えますか?
大阪人は、ダントツで「しんどい」を使い、この一言で体調が悪いことが伝わります。「だるい」「えらい」や「きつい」でも通じるのですが、これらは別の意味で使うことがあるので、使い方は要注意です。
例えば、
「しんどい」性格が合わない・嫌い
「だるい」やる気がない
「えらい」億劫である
「きつい」気が強い
などなど、体調ではない別の意味で使うこともあります。
Jタウンネット調べのデータをまとめたathomeによると、以下の通りです。
・こわい [北海道・南東北・茨木・栃木]
・だるい [群馬]
・えらい [東海・甲信・福井・滋賀・中国・香川]
・しんどい [関西全般・香川以外の四国・新潟]
・きつい [九州]
・その他、つらい・せつない・たいそい など
地方からの人たちが集まっているためかバラバラである首都圏と北東北を除くとほぼ境界線が見えてきます。
民俗学者・柳田国男の「方言周圏論」よると、
文化の中心地だった京都は関西圏なので「しんどい」で、波紋状にその周辺には「えらい」が存在しているのをみると、確かにこの説に当てはまるようです。
だとしたら、関西圏の「しんどい」は時代のトレンド的な新しい言葉だったのかもしれません。
会話で使うちょっとした方言
ついでに会話の中で無意識に出てしまう大阪の方言を挙げてみます。
・あんなぁ(あのね・あのさ) 大抵は言いにくい事の前置きの方言
・ほな(それでは・じゃ) シチュエーションに応じて微妙に意味が変わる
・うそやん(うそでしょ) 驚いた時の決まり文句
・なんでやねん(なぜ?) ツッコミの代名詞だが憤りを表す時にも使う
・ええやん(いいね) 「エエ」は日本語本来のもので「ヨイ」より古い
note版
方言リサーチにご協力ください
さて、もしかしたら上記以外で境界線が存在する方言もあるかもしれませんので、皆さんにご協力を仰ぎたいと思います。
以下に挙げた記事内の方言についてコメント内でお答えください
①アホバカの方言
②体調が悪い時の方言
③会話で使うちょっとした方言
④境界線がありそうな言葉
以下の順でお答えいただいたら助かります。
上記番号:都道府県:方言
今後、私も調べるつもりですが、皆さんのご協力にも期待しております。
◇◇◇
優しさと厳しさを備え、誰にでも遠慮なく物言うけれど、自分を甘やかすこともありませんでした。
本当に上岡龍太郎さんは一流芸人だったなと痛感します。
もう今後、こんな人は出てこないだろうなぁ。
【参考】
・大阪弁ミュージアム
・『探偵ナイトスクープ』のアホバカ分布図 各地方の「アホバカ」表現編
・athome
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