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本の苦手なわたしが本のイベントに行ってみたら

本の苦手なわたしが 本のイベントに行ってみたら……
夢が少しふくらんだ。
記念日になった。
カラフルな思いが溢れて楽しくなった。


わたしは 半年前の七夕の日に、思いきって自分の夢を呟いていた。
その夢が、さらにもう少しふっくらとした。
未来を思い描くというのは 自由でとても楽しい。

わたしの夢や願いのベースは変わっていない。

自分の言葉をかたちにする
必要な言葉を必要な人へ届けたい

それは、エッセイでも物語でも 詩でも短歌でもいい
それぞれでもいいし、混ざり合っていてもきっと楽しい
とにかく 自分の言葉であればいい
その言葉を 触れることのできるかたちにする
本でも紙芝居でもいい

そして たとえばそこに音や声、絵や写真や映像を合わせる
目の不自由な父も 耳で聴くことができる
耳の不自由な友人も 目で見ることができる
みんなでいっしょに感じることができるものにする

小さなおはなし会をひらこう
小さくていい
小さい方がいい
声がよく届くくらいの
顔がよく見えるくらいの
わたしもあがり症だし
大勢の人前に立つのは苦手

たくさんの人と触れ合いたいのなら
小さな会をたくさんひらけばいい
100人の前には立てなくても
10人の会を10回すればいい
出てこられない人のところへはわたしが行くよ
賑やかなのが苦手な人はひとりでもふたりでもいい
無理はしないで

老若男女、パパやママやお子さんたちも
心のある人なら どなたでも
物語や詩を朗読したり、いろんなお話もしよう
みなさんのお話も聞いてみたいな

ぬくもりを感じる空間がいい
木や花があるとほっとするかな
おいしいお茶やおやつもあるといいね
楽しい時間になりますように、さあ、
乾杯!

気持ちのいい日は外でもいいな
その時の空もきっと思い出になる
最後には 一緒に記念写真を撮りましょう
掛け声はアレよ、
「ハンバーグーー!」

みんなが心からリラックスして
笑顔になってくれますように
あしたへつながりますように
合言葉は「Smile!」

ちるnote 『願いごと 〜新月と七夕〜』より


そしてその根っこはこう。

今の生活にとくに不満はないし
自分を変えたいわけではなくて
生まれ変わりたいわけでもない
生きてきた自分を活かせるといいなと思う


自分の生まれた意味を、自分の歩んできた時間、道のり、経験を活かしたい。
できる限り あらゆる境遇の人へ届くようなかたちにして、必要な人に必要な言葉を届けたいなと思う。

わたしが書くものは、身近に起きた小さな出来事ばかりだけれど、言葉にして残しているものは、喜怒哀楽のいずれにしても心が大きく動いたときのもので、誰かに伝えたいと思うこと。
写真を撮るのも同じで、心が動かなければ 残さない。

感じた心の動きを誰かに共有したい。
そして気持ちと表情をゆるめてほしい。
街には険しい顔で歩いてる人が多すぎる。
無理をして頑張りすぎている人が多すぎる。
ちゃんと笑えてる?
ちゃんと泣けてる?
ちゃんと息できてる?
ほんと余計なお世話なのだけれど、心配性のわたしは勝手に心配してしまう。
わたしは、拗れたかたまりを安心してほどけるような場所になりたいのかもしれない。


“自分の作品を形にするとしたら、絵本のような小さな物語にしよう”

エッセイにしても、短歌にしても、それはわたしの人生のストーリー。
できるだけわかりやすい言葉で、小さくてやわらかい物語仕立てにしたい。
絵本って自由なのがいい。どこを開いても、そのシーンだけで楽しむことができるし、お気に入りのページを見つけたら ただそこを眺めてるだけで癒されたりする。
小さなこどもも、同じ絵本の同じページばかりを開いて見ていたりする。好きなページはみんなそれぞれ違う。

わたしみたいに本を読むのが苦手な人でも、気楽に、簡単に楽しめるものにしたい。
そのジャンルに苦手意識のある人にも、難しく考えず 何となくぼんやり佇んでもらえるといい。
BGMのような、そんな感じで。

わたしの夢はささやかなようでいて、大きい。

この夢は、小さなこどもに携わる今の仕事をしているうちに叶えられたらベストだなと思う。
こどもたちは間違いなく 一番大きな笑い声と笑顔を向けてくれるはずだ。
おはなし会のお客さまは、まず関わっているこどもたち、そしてその子たちを守ってる人たち、それからわたしを見守ってくれている人たち…。
あがり症のわたしだけど、その人たちの前では緊張しないんじゃないかな。いや、するか。たぶんするけど、泣き出したりはしないと思う。いや、泣くかもしれない。涙もろいし。でも、泣いてしまったとしても それもまるごと笑ってくれると思う。

そしてそこからゆっくりと広げていけたらいい。
ゆっくりでいい。わたしは走ることも飛ぶこともできない。けれど ゆっくり歩くことならできる。ちゃんと前へ進むことはできるのだから。

わたしの夢は、わたしをあたためてくれている。


***


本のイベントに行くのは初めてだった。

絵本なら仕事でも毎日触れるし、大好きだし、苦手意識もないし、生活の一部なのだけれど、それ以外の読書がどうも苦手で、読まない、というか、読めないというか…。
どこまで不器用なのかと自分がほとほとイヤになるのだけれど、なかなかスムーズにうまく読み進めることができなくて、一冊をきちんと読むのに人の何倍もの時間とエネルギーが要る。
これまでの人生で読んだ本は おそらく極端に少なくて、そのことはずっとコンプレックスみたいに感じているけれど、どうしようもない。
日常生活の中では、本にまで気持ちが届かないままその日が終わる。

本がキライという訳ではなくて、昔から強い憧れもあるし、その魅力もちゃんと理解している。
読んでみたいと思うし、つい買ってしまったりもする。
時間ができたら読むから! って買うのだけれど…それが…なかなか…。
本棚に仕舞ったらそれっきりになるからって、机の上に置いて毎日目にはしているものの、横倒しで積み上がっていくばかり。
「もう、これ以上はダメです。ここにあるものを読んでからじゃないと買ってはいけません」って、ドクターストップならぬ ブックストップがかかり自粛モード。
読みたいんですよ、読む気持ちはあるんですよ、と心の中で言い訳をしながら、毎日一番上の本を撫でて見えない埃を拭う。

結局やっぱり、去年買ったエッセイ、小説、歌集は、パラパラとめくっただけで ちゃんと読むことができなかった。
ああ、お恥ずかしい……それになんだか申し訳ない。

そんなわたしが本のイベントに行くなんて、想像するだけでちょっと場違いな気もするし、気後れもしたのだけれど、わたし自身もこうしてエッセイや、短歌や、詩や物語を綴ってきて、いつの日か自分の言葉を形にしたいという夢をもっている。
それはまだ どんなものか、どんな形なのかはぼんやりとしているけれど、まずはどんな人たちが、どんな思いで、 どんな形にしているのかを知りたいと思った。
そこで、ZINE FEST TOKYOという本のイベントに思い切って出向いてみた。
ZINEジン”とは 個人やグループで発行する少部数の自主的な出版物をいう。
普段わたしは 本は書店やネットで買うけれど、本を書いている 作っているご本人にはなかなかお目にはかかれない。けれど、こうしたイベントではそれが叶う。
行ってみようか…。
“本と人混みが苦手”を公言しているわたしにしてはとても珍しい気持ちがぴょこっと突然芽を出した。


初めて耳にするこのイベントは、 とき子さんつる・るるるさん のnoteで知った。
おふたりはこれまでに それぞれご自身の本を作って  『つるる とき子書店』として各地の文学フリマでも出店されている人気のクリエイターさんで、コンテストで受賞されたり、note創作大賞では揃って中間選考を突破される実力派。
とてもパワフルに活動されていて 心からリスペクトしている。
その絶妙のコンビネーションは最強のバディで、勢いと無敵感がある。
そんな憧れのおふたりに、直にご挨拶と応援をしたかった。頑張ってこられているのを知っているから。わたしもずっと応援してもらっているから。
もしもちゃんと辿り着けたら、ご褒美にあのパワーをちょっとずつ分けてもらおう。


SNS上で知り合った方に実際にお目にかかるのは初めてのことだった。オンラインでもどなたにもお会いしたことはなくて、声で言葉を交わすのは初めてだった。
お互いのことは、それぞれの記事と交わしてきたコメントで 人物像と信頼感はコツコツかたまっていて、いつかその時がきたら会える気はしていた。

「はじめまして」

自分で自分のことを “ちる” と呼んで自己紹介をするのも初めてのことで、声が小さくなる。
なんだか思った以上に恥ずかしいぞ。ひとりで勝手に照れて、体がじんわりと熱くなっていた。
そんな初めて尽くしのこの日は、もう記念日と呼んでもいいと思う。


ドキドキした。
会場には馴染みのない人と本が溢れていた。
こんなに本を作ってる人がいて、こんなに本を求めてる人がいるんだな。
星の数ほどに溢れてるものの中から巡り合うことは、運命的で奇跡的だ。大袈裟ではなくて、ほんとにすごいことだと思う。

届ける人がいて、受け取る人がいる。
言葉で、表情で、心がつながる。
素朴なことだけれど、純粋で自然なことだなと思う。人間らしくてとてもすてきなこと。
デジタル化、AI化…めまぐるしくネット社会となったけど、やっぱり、だからこそ、必要なことなんだと思う。
わたしたちは人間だもの。

その場所はエネルギーに溢れていて、そこにいた人たちはみんな笑顔だった。それぞれがパワーを与え合っている、そんな感じだった。
何かを生み出すというのは本当に大変なことで、その巡り合わせもまた奇跡みたい。
そうして生み出したもの、交わし合えたものを、お互いにずっと大切に思えたらいいなと思う。


なんだか終始 緊張していて、その場の熱気や眩しさに、喉はカラカラになるしクラクラと目眩がしそうだった。
本が好きで本を目的に来ている人みたいには、そのイベント本来の楽しみ方はうまくできなかった気がする。
けれど、行った意味はとても大きかったように思う。

ああ、サインペンをしっかり持参していたのに 本にサインしてもらい忘れたことだけは心残り。
「サインください!」もちゃんと頭の中でシミュレーションしていたのに。
せっかくの記念日だったのに。

なにごとも経験をして学んでゆく。

とき子さん、るるるさん、どうもありがとうございました。
夢を一緒に追いかけたり 分かち合える仲間ってすごいね、すてきだね。そんなことも感じさせてもらえました。




去年の秋、童話を書いて公募に出した。
そしたら よりによってクリスマスイブに落選の通知が届いて、結果の早さに驚き、なんでわざわざこんな日に…ってちょっと拗ねた。
現実は厳しくて、時にイジワルだったりする。
そんな簡単じゃないことは わかっているつもりなのだけれど。
そこには、『これからも頑張ってください』みたいなことが書かれてあって、通知の常套句なのだろうけど、応援のクリスマスレターかって思えたら、ありがとうございます!って笑えた。

その童話のストーリーも、思いを込めて一生懸命に書いたもの。
童話だけど、こどもだけじゃなくてみんなへ届けたい物語。
捨てずにあたためていたいなと思う。
いつの日か 形にできるといいな。


どういうわけか、本の苦手なこのわたしが お正月休みに小説3冊をきっちりと読んだ。読めた。
一年でもほとんど読まないこのわたしが、年明け一週間で3冊も。
首を捻るほどに珍しいことだけど、なんだか幸先がよいではないの。
突然 本を得意になったはずはないけれど、気持ちにほんの少しゆとりができたということなのかもしれない。
だから行ってみる気にもなったのかな。
ZINE FESTで新しい本もいただいたし、今年はたくさん読めるといいなと思う。


そろそろ大寒… みなさんも夢を描いてみたら、ちょっとあったかくなるかもしれません。
のんびりと 心の赴くままを楽しんで。
どうぞ よい一日を、よい一週間を。

今週の短歌は♡のなかに…


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