続・カタツムリ 〜おかえり マイマイ〜
元気ですか
笑ってますか
今、幸せですか
*
遠くのほうで何かが欠けた音がした
どうしたの しょげた顔して
ちっともらしくないじゃない
いつもの笑顔はどこへいったの
雨も上がって晴れてきたよ
外の空気を吸ってごらんよ
とっても気持ちがいいからさ
久しぶりにしゃぼん玉でもしようか
あれもこれもしゃぼん玉に込めて
吹いて飛ばしてみるといいよ
空に届けば思い出になるしね
途中でわれてしまったのなら
それはいらないものなんだよ
さぁ 出かけよう
ほら いつかのあの日みたいに
一緒に空を見上げよう
空がまあるい笑顔にしてくれるから
***
2年前の夏の終わり
わたしは一匹のカタツムリに出会いました
ほんの5ミリの小さなまるが
ある日突然 目の前に現れたのでした
“マイマイ”と呼んで うちで2週間をともに過ごし、長野県の高原でバイバイしました
(※ カタツムリが苦手な方はご注意ください
たくさん登場いたします
とてもちっちゃくてかわいいんですけれど…念のため)
時々思い出します
元気かな って
かわいかったな って
いえ わたし、虫は苦手なのですけどね
マイマイは とっても小さくてのんびり屋なので大丈夫でした
このマイマイとバイバイをしてから ほどなくして、大阪で一人暮らしをしていた母が他界しました
明るくて元気だった母が 嘘みたいにいなくなって、周りの誰もが信じられずにぽかんとしました
わたしは、あのマイマイは母だったのかもしれないななんて思っています
馬鹿げてるかもしれないけれど だいぶ本気でそう思っています
会いにきてくれたんだなって
伝えにきてくれたんだなって
だから、ちゃんと見つけることができて、少しでも一緒に暮らせて、最後に旅ができてよかったなって思っています
“魂”って言うとちょっとこわいかもしれないけれど、“思い”ってかんじかな
大切な思い出です
*
お彼岸には 母の命日もあって、今年はちょうど三連休にもなっていたのですけれど、帰省を見送りました
仕事も入っていたし、ここのところちょっと疲れ気味でした
うまく回らないことが重なって しょげしょげしてて
大阪へは落ち着いたらゆっくり帰ろうと思います
仕事もプライベートも なんだか手に負えないことが嵩んで、ゴタゴタに時間ばかりが取られてしまって
まぁ今に始まったことではないのですけれど
今まで自分のやってきたことに意味があったのかよくわからなくなっちゃって
もう全部 放り投げてしまいたくなると
心のどこかが 小さくポキッっと鳴りました
おまけに、去年買い替えた洗濯機が修理対象製品だという通知がくるし、
アイロンと掃除機が突然動かなくなるし、
お気に入りの器は割れるしで
ふぅ…
そうだよ、わたしにだって限界ってもんががあるんだよ
魔法使いじゃないんだから
永遠にここにいるわけじゃないんだからね
そう思いながらも ひとつひとつを処理していくしかなくて
「潮時」という二文字が点滅しました
笑いたくてつけたテレビは 悲しいし切ないし
眠れてないのに 目覚ましは起きろっていうし
いや、テレビも目覚ましも悪くないな
わたしも自分勝手なことを言ってるな
あぁ しょげしょげ…
そうだ、花を買おう
かわいいバラがあるといいな
母の命日の前日、いつもの花屋さんへ寄りました
母の好きな花を数本と、紅葉していくグリーンを少し買いました
家に帰ると さっそく花瓶に挿していきました
ん…?
細い葉っぱの裏側
なんか ぽこっとしている違和感
既視感… déjà-vu?
まさか…
いや、まさか… ねぇ…
びっくりしすぎて、ちょっと息も思考も止まりました
あっ …
マイマイにお部屋を!!
我に返ってバタバタと入れ物を探します
とりあえず ぶどうのパックでいいですか
ちょっと ぶどうさん、どいてくれる?
マイマイにお水とごはんを!!
野菜と卵はあったっけ
大好物はアレ、ですよね
はい、たっぷりとありますとも!
早送りみたいに動く
経験はつよい
でもなんで ここにいるの?
なんで このタイミングなの?
タイミングがすごすぎてこわいよ
あの日のマイマイと同じ種類かな
でもよく似てる
もう マイマイと呼んでいいですか
*
母の命日
その日は仕事で、帰ってきてからマイマイと少し遊びました
きっと傍から見たら、ただのおかしな人ですね
けれどわたしは至極マジメです
話しかけてみたり
ピアノを聞かせてあげたり
バラの花と一緒に写真も撮ってあげました
ツノがピースしてるみたいに見えて
ちょっと笑って 泣きました
さすがに おはぎやおにぎりは食べないよね
フルーツは食べるのかな
特別に 桃と梨をあげました
今度こそは なるべく早く自然に放してあげよう
できればお彼岸のうちがいいな
ちょうど涼しくなってきたしね
明日はお天気どうだろう
晴れたらいいね
*
翌朝パラパラ降っていた雨は昼過ぎに上がると、日が差して一気に晴れてきました
ベランダに出てみると、ひんやり心地よい風が さらりと肌を撫でました
三連休だし道も混んでるかもしれない
もうお昼も過ぎてるけど どうしようか
夕方までに行けるところはないかな
自然に囲まれた 静かで空の広い場所
秋のお花も咲いてるといい
そうだ、秩父へ行こう
急いで準備して出発しよう
ホッとしたら おなかがグーッと鳴って、自分がごはんを食べてなかったことに気づきました
その日は何も考えず、目覚ましをかけずに眠りました
***
3日間のできごとでした
驚かされたけど 感動でした
わたしを外へ連れ出して
きれいな空を見せてくれました
マイマイを物語にしたい
ちいさな夢までくれました
元気でいてね
笑っていてね
ずっと、幸せでいてね
それは マイマイからのメッセージ
それは わたしからのメッセージ
みなさんの心は晴れていますか
どうぞよい一日を、一週間を
ここちよい秋をお過ごしください
#177. 『 秋晴れ 』
⭐︎原っぱの夕焼け 晴れのち曇りより曇りのち晴れのバイバイをする
⭐︎虫の音のちゃんとおなかも空いてきてちゃんと眠れるまじないの如
ー ちる ー
p.s. 今後 投稿をお休みしたり、もしくは不定期になったりするかもしれません
少しゆっくりペースでまいります🐌
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