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初任者のための地域おこし協力隊論 vol.3 ~そもそもどういう制度なの?~

地域おこし協力隊という制度は世間一般にはほとんど知られていません。それどころか、地域おこし協力隊員も意外とどんな制度なのか、よくわかっていないことが多いようです。そこで今回は、制度概要について少しだけおさらいしておきましょう。


地域おこし協力隊の制度概要

地域おこし協力隊は総務省が設計した制度ですので、その概要を知るには総務省のホームページを見るのが一番です。さっそく見ていきましょう。

ページを開くと、地域おこし協力隊について下記のとおり説明がなされています。

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。
具体的な活動内容や条件、待遇等は各自治体により様々ですが、総務省では、地域おこし協力隊員の活動に要する経費に対して隊員1人あたり520万円を上限として財政措置を行っています。また、任期中は、サポートデスクや都道府県ネットワーク等による日々の相談、隊員向けの各種研修等様々なサポートを受けることができます。任期終了後の起業・事業継承に向けた支援もあります。
令和5年度で7,200名の隊員が全国で活動していますが、地方への新たな人の流れを創出するため、総務省ではこの隊員数を令和8年度までに10,000人とする目標を掲げており、目標の達成に向けて地域おこし協力隊の取組を更に推進することとしています。

総務省ホームページ

併せて概要をまとめた資料も添付されています。

出典:総務省ホームページ

これらをもとに、少し詳しく解説していきましょう。

総務省と地方公共団体と地域おこし協力隊員の関係性

まず最初のポイントは制度の構造です。
先にも述べたとおり、地域おこし協力隊は総務省の制度です。それを利用するのが地方公共団体で、実際に地域協力活動を行うのが地方公共団体から委嘱を受けた地域おこし協力隊員です。

総務省による地方公共団体への財政措置

総務省と地方公共団体との関係性はこの一文に表れています。

具体的な活動内容や条件、待遇等は各自治体により様々ですが、総務省では、地域おこし協力隊員の活動に要する経費に対して隊員1人あたり520万円を上限として財政措置を行っています。

総務省ホームページ

地域おこし協力隊制度を利用するにあたって、各自治体には総務省から活動経費に対する財政措置(特別交付税措置)が行われています。一人当たり上限520万円ですが、このうち報償費(隊員の報酬)としては最大320万円、その他の活動費として200万円が充てられます。上限と書かれているとおり、報償費も活動費も各自治体で決めることになっていますので、自治体や活動内容等によってばらつきがあります。簡単に言えば、「国がお金を出すから、それぞれの自治体で工夫して制度を活用してください」ということです。この金額の上限はここ何年かで段階的に引き上げられており、よりよい待遇で隊員を迎え入れられるように制度が変わってきています。
なお、この制度は、国の制度の中でもおそらくトップレベルに自由度が高い、つまり自治体の裁量に任されている範囲が大きいものとなっていると言っていいと思います。有効に活用するだけの自治体の力量が求められているとも言えます。

地方公共団体が地域おこし協力隊に求める地域協力活動

では、国から「工夫して制度を活用して」と言われた地方公共団体は、具体的にどのように地域おこし協力隊制度を活用するのでしょうか。
地方公共団体は都市部から地方へ住民票を移した人を、地域協力活動を行う地域おこし協力隊員として委嘱します。委嘱とは「役割や業務を任せる」ことです。隊員は地域協力活動に従事するのですが、地域協力活動とは何を指すのかを見ていきましょう。

地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。

総務省ホームページ

これを読むと、ほとんどなんでもありのように思えます。もちろんその地方の課題に添ったものにしていく必要はありますが、かなり自由度が高い制度となっていることが分かると思います。実際に全国各地でかなり幅広く、多様な取り組みが行われています。

この制度は何を目指しているのか

次に押さえておきたいのは、この制度の目的です。これが最も重要なポイントです。これはどの立場から見るかによって少々異なりますので、整理しながら見ていきましょう。

地方への新たな人の流れを創出すること

まず、制度設計した総務省の目的、つまり地域おこし協力隊制度の最大の目的ということになりますが、それは「都市部から地方への新たな人の流れを創出すること」です。
都市部に人口が集中し、地方部では人口減少や少子高齢化によって町の機能が急速に失われつつあります。このあたりの背景は多かれ少なかれ皆さんご承知のことと思いますが、これを国として是正していくための1つの施策として地域おこし協力隊の制度が誕生したわけです。
確認のために、もう一度総務省ホームページに記載されている一文を引用しておきます。ここにそれが明記されています。

令和5年度で7,200名の隊員が全国で活動していますが、地方への新たな人の流れを創出するため、総務省ではこの隊員数を令和8年度までに10,000人とする目標を掲げており、目標の達成に向けて地域おこし協力隊の取組を更に推進することとしています。

総務省ホームページ

総務省としては、制度を作ったので、あとはこの目的達成のために地方自治体にどんどん活用してもらいたい、と考えているのです。
先にも触れたように、およそ国の制度とは思えないほど自由度が高い制度設計となっています。それだけ地方自治体に裁量を与えて、その地域にあった独自の取り組みを生み出していってほしい、逆に言えば、それくらいしないと地方への人の流れは作れないと考えているのだと思います。日本全体として、そこまで追い込まれているとも言えるでしょう。

地域への定住・定着を図ること

一方で、この制度を使う地方公共団体としての目的はこちら、再三引用しておりますが、以下の記載のとおり地域への定住・定着を図ることです。

地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。

総務省ホームページ

これは多くの隊員がなんとなくでも持っている共通認識ではないかと思いますが、自治体職員はこれをかなり強く意識している傾向にあります。なぜなら、年度ごとに定着状況を県に報告しなければならないからです。定着率が低いからといって何かお咎めがあるわけではありませんが、数字に表れるものには敏感な自治体が多いので、どうしてもここを強調されがちになります。

地域協力活動を行うこと

最後にもう一度、同じ部分を引用して、この制度の3つ目の目的を挙げておきます。

地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。

総務省ホームページ

地域おこし協力隊として任用された隊員は、当然ですが地域協力活動に従事します。隊員は、その地域協力活動の目的に添って活動することが求められます。
地域協力活動は先述のとおりかなり幅広く多様な取り組みとなっています。そのため一概にはその目的を示すことができません。一体なぜその活動がいわゆる「地域協力活動」として定められたのか、それを理解することが必要不可欠で、隊員にとってはその目的のために活動することが最も重要な視点となります。

国としては「都市部から地方への新たな人の流れを創出すること」、地方公共団体としては「地域への定住・定着を図ること」というように、ある程度明確に目的が示されています。しかし、隊員には「地域協力活動」を行うことは明確に示されている物の、目的は国の制度概要には当然示されていません。隊員には、まずこの地域協力活動の目的の認識が最初のステップとなるわけです。

もう少し詳しく知りたい人は

ここまで大枠の制度概要を見てきましたが、後半で整理した目的については、国、地方公共団体、隊員のそれぞれの目的が実はなかなか整理されていないまま運用されているケースが多く、うまくいっていない自治体にはここに原因があることも少なくないように思いますので、あらためて取り上げたいと思っています。

地域おこし協力隊について、もう少し詳しく知りたい方向けに、一般社団法人移住・交流推進機構の地域おこし協力隊ページと、総務省が立ち上げた全国地域おこし協力隊ネットワークプラットフォームのページもここにご紹介しておきますので、お時間あるときにのぞいてみてください。

今回はここまで。

<つづく>


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石原英明 ―チリチリウォーズマン―
自分の真意を相手にベラベラと伝えるだけが友情の行為ではないということさ。それがわたしの提唱する真・友情パワーだ…(キン肉アタル)