岩波少年文庫を全部読む。(53)メアリー・ポピンズは風の又三郎か? パミラ・リンドン・トラヴァーズ『帰ってきたメアリー・ポピンズ』
この作品は、全部で8冊あるとされているメアリー・ポピンズものの2冊目です。
筆に脂が乗っている
最初の4冊が岩波少年文庫で出ています。
そしてそのうち最初の3冊が、できごとの作中時間順の並びになっているということになります。
本書『帰ってきたメアリー・ポピンズ』(1935。林容吉訳、岩波少年文庫)は、1作目『風にのってきたメアリー・ポピンズ』(1934。同前)が出た翌年に早くも出てます。
そして、前作よりもだいぶ分量も多いんですね。
むかしふうの言いかたをすれば、「筆に脂が乗っている」感じって言うんでしょうか。調子よく気持ちよく書いているという感じがいたします。
前回ちょっと書いたんですけれども、だいたいこの《メアリー・ポピンズ》シリーズというのは、近代文学的な意味からすると、むしろ高く評価されないはずのものなんですね。
というのも、作者のP・L・トラヴァーズという人が、宗教とかあるいはお祭(祝祭)、神事、そういったものの感覚を文章に落としこむことができる奇蹟的な存在だったんじゃないか。
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