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岩波少年文庫を全部読む。(52)これは文学ではなく、お祭りか神事のようなもの パミラ・リンドン・トラヴァーズ『風にのってきたメアリー・ポピンズ』

パミラ・リンドン・トラヴァーズが1934年に書いた『風にのってきたメアリー・ポピンズ』林容吉訳、岩波少年文庫)は、ジュリー・アンドリューズ主演のディズニー映画(1964)であまりにも有名です。

作者がどういう人であるか、このシリーズ(数えかたにもよりますが、全8作)がどういう構成になっているか、ヴィジュアルを決定した挿画を描いたのはどういう人なのか、こういったことすべては、次次回で第3部の話をするときにとっておきましょう。

映画はだいぶ原作と違っているようですね

時代設定は、映画だと1910年となっていて、これは英国ではジョージ5世が即位した年です。
原作ではそれよりもだいぶ前らしい。作中には、時代がはっきりわかるようなことをはっきり書いてないんですけれども、どうやら定説ではヴィクトリア朝(1837-1901)ということになっているようです。
どうしても映画のスティル写真なんかのイメージに引きずられて、原作を読んでいてもあまりヴィクトリア朝という感じはしません。

舞台になる家は、ロンドンの桜町通り(Cherry Tree Lane。実在しません)に設定されています。
家長は銀行家のジョージ・バンクス氏ですね。銀行家で名前がバンクスってほんとにふざけてるんですが。
家族は奥さんと4人の子どもたち(第2部から赤ちゃんがもうひとり加わって5人兄弟になる)。

ツンケンしていて愛想がなくて、子どもたちをビシビシ躾ける

バンクス家では、ナニー(ベビーシッター兼家庭教師みたいな感じの役割)がやめちゃったので募集していました。
そしたら空から、バッグを持って帽子をかぶったメアリー・ポピンズが傘をさして降りてくる。

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