岩波少年文庫を全部読む。(95)怖い。夢を操作してしまうのが怖い。 キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』
僕はこれ、かなり素晴らしい作品だと思います。
キャサリン・ストーの『マリアンヌの夢』(1958。猪熊葉子訳、岩波少年文庫)」は、児童文学だし、なんならファンタジー小説……なんだけど、ホラー的要素が強くて、これはけっこう子どもには怖いんじゃないかしら。
昼間に描いた絵の世界が、夜の夢となる
マリアンヌは10歳の誕生日に発熱し、以後、長期の病気で、6か月にわたって自宅療養の病床を離れることができない、と告げられます。暇なので、曾祖母の裁縫箱で見つけた鉛筆を使って、退屈凌ぎに「建物」の絵を描きました。そして窓にひとりの少年を描きます。
マリアンヌは夢のなかで、自分の描いた絵の建物の前に立っていることに気づきます。
建物に入れてくれるよう、少年に頼みますが、歩けないので降りていけない、と返されました。
繰り返される夢と、気になる少年
翌朝、チェスターフィールド先生という若い美人がやってきます。学校を休んでいあいだ、ホームスクーリングの面倒を見てくれる家庭教師です。
先生はマリアンヌのほかに、マークという少年も教えています。マークは小児麻痺の後遺症で足が立たないのです。
ただ先生は、要は気の持ちようで、マークは努力さえすれば歩けるようになるはずだとつけ加えます。
マリアンヌは夜になると、絵の建物に例の鉛筆でドアと階段を描き足します。
そして夢のなかで、建物に入っていきます。少年は窓枠に横たわっています。病気の後遺症で歩けないのです。
彼はマークなのです。
マークとの軋轢と「目のある石」(怖!)
マリアンヌはマークに、ここは私の夢のなかの世界で、私が描いたものがこの世界に出現する、と告白しましたが、一笑に付されます。
マリアンヌはチェスターフィールド先生の誕生日に薔薇の花束を用意しました。しかし先生は、それよりずっと大きな薔薇の花束をマークからもらってしまっていて、それをマリアンヌにお裾分けに来ます。
プライドを傷つけられたマリアンヌは怒りのあまり、絵の建物の周囲に柵を描き、窓に格子を加え、マークが外に出られないようにしてしまいました。
そして、
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