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岩波少年文庫を全部読む。(58)「出不精な中年」が児童向け冒険譚の主人公に。 ジョン・ロナルド・ルーエル・トールキン『ホビットの冒険』

魔法使いに騙されて

『ホビットの冒険』(1937/1951)に出てくるホビットは、トールキンが創作した小柄な種族で、足の裏に毛が生えています。

主人公のビルボ・バギンズは、つましい暮らしを送る正直者のホビット。地下に作った家に住み、農作業や庭仕事で暮らしています。

ある日彼は、放浪する旧知の魔法使いガンダルフに騙されるような形で、滅んだドワーフ王国の末裔トーリン・オーケンシールドとその輩下の12人のドワーフに食事を提供することになります。

ドワーフは、古エッダ「巫女の予言」(12世紀以前?)に登場する地の精ドヴェルグ、そして『ニーベルンゲンの歌』グリム童話「白雪姫」に登場する小人ツヴェルクの英語名。トールキンはこういったゲルマン系説話から、短軀で髭面の頑健な種族を作り出しました。

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