岩波少年文庫を全部読む。(47)この作品だけは覚えてた ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』
子どものころ、漫画を少し読んでたんですが、いわゆる「本」を読んでない時期が長かったんですね。
そういうなかで大人になってインターネットの時代に入ってから、いろんな本好きな人と交流すると、みなさん子どものころからたくさん本を読まれてて、あー僕は育ちが悪いなと思っちゃったりもするんです。
『不思議の国のアリス』だけは覚えている
子どものころ読んだ本の中で、ほとんど唯一と言ってもいいくらい、例外的にポジティヴな記憶で残っているのが、この『不思議な国のアリス』なんですね。
子どものころ読んだ訳っていうのはね、その当時はもちろん知らなかったんですが、あとになって、あの高杉一郎さんの訳だということがわかったのです(高杉訳はのちに講談社文庫に入りました)。
高杉一郎さんというのはですね、英文学や西洋古典学に非常に詳しい評論家で大学教授でした。哈爾濱(ハルビン)で敗戦を迎えてシベリアで抑留を体験した。
で抑留体験記『極光のかげに シベリア俘虜記』(1950。岩波文庫)がベストセラーになりました。ノンフィクションなのに芥川賞の候補になっちゃったっていうんです。いま考えられないですよね、ノンフィクションが芥川賞候補になるって。これたいへん興味深い本です。
この高杉一郎さんはですね、学術的には怪しいけどとにかく情報量とペダントリーがすごくて文章もカッコいいロバート・グレイヴズの大冊『ギリシア神話』(1955。紀伊國屋書店)とか、この連載で取り上げたフィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』というたいへんな作品とかを翻訳されていたりと、非常に重要なポイントで出てくる名前なんです。
高杉一郎さんの訳でおそらく7歳のときに読んだのがこの『不思議の国のアリス』との出会いでした。
なにがなんだかわかんない、どうやら日本語にならないダジャレみたいなフレーズがいっぱい書いてあるのはわかったんですけども、まあとにかくおもしろかったです。
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