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岩波少年文庫を全部読む。(66)ラストアルバムから21年後のバンド再結成、的な1冊。 メアリ・ノートン『小人たちの新しい家』

『空をとぶ小人たち』(1961。林容吉訳、岩波少年文庫)で、メアリ・ノートン《小人の冒険》シリーズは完結した……かのように見えました。

しかしその21年後、1982年に、作者は突如第5作『小人たちの新しい家』猪熊葉子訳、岩波少年文庫)を刊行したのです。

ふたたびリトル・フォーダムへ

前作の最後でクロック一家は、プラター夫妻の屋根裏部屋の牢獄から逃げ出しました。一家はリトル・フォーダムのミニチュアパークに戻り、寡黙な一匹狼タイプの〈借り暮らし〉スピラーに船を提供されて、教会の牧師館を新天地と定めて出発します。

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夜の川を下って牧師館に着きました。するとその隣の教会には、ポッド父さんの兄弟であるヘンドリアリ・クロックと後妻のルーピー、そしてティミスが住んでいだのでした。
ヘンドリアリ夫妻については第3作『川をくだる小人たち』(1959。林容吉訳、岩波少年文庫)の記事をお読みください。

ヘンドリアリは痛風持ち。ルーピーは教会で暮らしているうちに信心深くなっていました。ティミスは活発で冒険を愛する少年。教会のなかをあちこち登っては探検を楽しんでいます。

またアリエッティは、オーヴァマンテル家(これについても第3作の記事を参照)の一員ピーグリーンに出会います。
ピーグリーンは牧師館の先住者で、住む場所を教えてくれました。マントルピースからの落下事故で足が不自由。文学的・芸術的センスに秀でています。

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