岩波少年文庫を全部読む。(48)論理性と身体性の絶妙な取り合わせ ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』
先週『不思議の国のアリス』(1865)についてお話をして、あまり内容には踏み込めなかったんですが。
『鏡の国のアリス』(1871)はですね、もう子供とは言えないぐらいの歳ですね、15歳のときに高山宏先生の訳で初めて読みました。
高校3年間って、あんまり本を読んでなくてですね。その高校時代に読んだ数少ない本のひとつが、『鏡の国のアリス』です。
先週お話しした、マーティン・ガードナーが註をつけた版の、いちばん最初の日本語訳で読んでいます。
今回取り上げるために読み直したのは、岩波少年文庫の脇明子先生の訳。
『鏡の国のアリス』を今回読み直してみて、自分は読みかたをぜんぜん知らずにきたんだなって思いました。
それはもちろんひとつは、脇明子先生の訳がですね、19世紀後半の英語圏の児童文学が置かれていた状況をしっかり踏まえたうえで訳されているっていうことがありますね。
チェスという強いコンセプト
『不思議の国のアリス』の続篇と言えば続篇なんですが、こちらはさらにコンセプチュアルに書かれてます。
『不思議の国のアリス』はトランプがテーマと言うほど強くはなかったんですが、でも最終的にはトランプが重要でした。
で『鏡の国のアリス』になりますと、これが基本的にチェスの世界の話である。まずこういう非常に強いコンセプトがあって書かれた作品であるということがわかります。
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