岩波少年文庫を全部読む。(113)近代「児童文学」の出発点では、赤ずきんちゃんは食べられたまま帰ってこない シャルル・ペロー『ペロー童話集』
岩波少年文庫版『ペロー童話集』(天沢退二郎訳)は、シャルル・ペローの『韻文による昔話集』(1695)全3篇中2篇と、『過ぎた昔の物語 またはお話集・教訓つき』(1697)全8篇(ただし献辞を除く)を訳したものです。
『過ぎた昔の物語 またはお話集・教訓つき』はペローの息子ピエール・ダルマンクール名義で発表され、散文で書かれて、韻文の短い教訓が(ひとつ、話によってはふたつ)ついています。本訳書ではこちらが先に置かれています。なお息子ピエールは当時まだ10代で、民話を記録していて、これを当時の大物文学者であった父が文学的にブラッシュアップしたのではないかと言われています。
なお、『韻文による昔話集』でいちばん最初に書かれた「グリゼリディス」(1691)は、唯一ここに訳されなかったお話です。巖谷國士訳『眠れる森の美女 完訳ペロー昔話集』(講談社文庫、ちくま文庫)などで読めます。
また『過ぎた昔の物語』で訳されたかった献辞「姫君へ」は『過ぎた昔の物語』のみの全訳である『ペローの昔ばなし』(今野一雄訳、白水uブックス)などで読めます(いずれも、ほかにも読める版はあります)。
民話蒐集と短篇小説
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