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チノアソビ大全

Podcast「チノアソビ」では語れなかったことをつらつらと。リベラル・アーツを中心に置くことを意識しつつも、政治・経済・その他時事ニュースも交えながら林田(専門:総務省地域力創…
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#日本

興行収入2023:映画篇

1月もあと1週間ない…行く、逃げる、去るとはよく言ったものですが、後藤はここに「しぬ:4月」を入れて冗談半分で笑うことの多い年度末です。 ということで。今週は、2023年に日本で公開された映画興行収入のTOP20が発表された、というお話です。 映画も展覧会も野球もサッカーも、興行と名の付くものはすべてビジネスなので、内容の良し悪しと数字が必ずしも連動しないものなのですが、とはいえこれも一側面。ということで、誰にも頼まれていませんが、勝手にTOP20を眺めて妄想してみたいと

現在と現代の相克 後篇

 明治維新後、日本の資本主義は歪んだ。  歪んだというよりも、資本主義が18世紀中頃のイギリスで生まれたものだと定義するならば、19世紀の半ばを迎えた日本で、それが「正しく生まれなかった」という方が意味が通るかもしれない。  欧米列強を真似たまではよかったが、彼らの思想のうち帝国主義の部分のみを取り入れたのが、1867年から1945年までの日本のかたちではないか。  作家の司馬 遼太郎は、その代表作『坂の上の雲』で、明治政府の到達した最高点を描ききった。坂の下でモガいて

現在と現代の相克 前篇

 資本主義と非資本主義の間にある葛藤。  現在と現代の相克。  いってみれば次代の基本理念となるものについて考えるとき、政治的に、経済学的に、そして哲学的にも大いなる啓示を与えてくれるもの。ぼくにとってのそれは、いつもヨーゼフ・アロイス・シュムペーターの理論であった。

誰がために「少子化対策」の鐘は鳴る③-可処分所得-篇

 今回は「誰がために「少子化対策」の鐘は鳴る②の続編です(下記参照)。 4.  ダブルワーク必須の社会構造

本当に先駆けていた「新党さきがけ」 篇

 既出のとおり、選挙風が吹き始めて参りましたが、選挙風とは全く関係なく、台風2号と梅雨前線の共同作業によって太平洋沿岸の皆様が甚大な被害を受けられてしまったこと、お見舞い申し上げます。  かくも被害が甚大だと「いま選挙やるのか?」という気もしてきまして、暴風雨が選挙風そのものを吹き飛ばしてしまいそうな感もありますが、その中で、議員の皆さまと意見交換させていただくことも多くなってきました。     前回のチノアソビ本編では、我が敬愛する立憲民主党に捧げるレクイエムを放送したとこ

誰がために少子化対策の鐘は鳴る② -小国寡民- 篇

1.老子の「小国寡民」 『老子(老子道徳経)』の一節に、「小国寡民」という教えがあるんですね。  意味を現代語に置き換えてみると、次のようなものです。  小さい国で国民は少ない。  そこでは、生活をするのに便利な道具があっても、国民がそれを使うことはない。  また、そこでは国民に命を大切にさせ、遠くに移住させないようにする。外国へと渡る船があったとしても、これに乗ることはなく、鎧や武器があったとしても、これを使用することはない。  国民は、縄を結んでそれを約束の印とし

グローバリズムの誤謬 -脱ア論再考- 篇

「世界交通の道、便にして、西洋文明の風、東に漸し、至る處、草も木も此風に靡かざるはなし。」  1885年(明治18年)3月16日、福沢諭吉が主催する新聞、『時事新報』の社説に、上の書き出しで始まる論文が掲載された。社説の筆者は福沢諭吉その人であり、論文の題名には「脱亜論」とある。  周知のように、「脱亜論」とは、「日本よ、アジアから脱出せよ」という旨を主張する論文である。その論文の内容は、過激という語彙を用いて表現せざるを得ないのであるが、「脱亜論」が、かように過激になっ

美しさと曖昧さの狭間で -大江健三郎逝く-篇

1. 巨星墜つ 月曜日の締め切りを2週連続で破り(チノアソビ大全は、林田は月曜日、後藤が金曜日に執筆予定、、、すみません)、昨夜は銀座で散財して徳を積むことに専念していたわけですが、そんなことをしている間に大江健三郎が逝ってしまった。  言わずもがなの説明であるが、日本人ふたり目となるノーベル文学賞受賞者。三島由紀夫は、谷崎潤一郎が亡くなった時に、明治末年に谷崎が現れてから没するまでの半世紀を「谷崎朝時代」と呼んだが、比較文学者の小谷野 敦は大江がデビューした1958年以降

ダブル・スタンダードの日本 -働き方改革-篇

1.  「軽薄」は日本人の美学 重いテーマをかる〜くお届けする「チノアソビ大全」。今回は、働き方改革とは何だったのか、についてお届けしたいと思います。いきなり「何だったのか?」と過去形になっちゃっておりますが、もうね、みんなそんなこと忘れちゃってるでしょう? 「え?!いまさら働き方改革?」  みたいな。いや、いいんです。ぼくたちは日本人だから!  いきなり話が逸れますが、日本人ほど軽薄な民族はいない、と言ったのは司馬遼太郎でした。  司馬遼太郎の歴史観(時に司馬史観とも