誰がために少子化対策の鐘は鳴る② -小国寡民- 篇
1.老子の「小国寡民」
『老子(老子道徳経)』の一節に、「小国寡民」という教えがあるんですね。
意味を現代語に置き換えてみると、次のようなものです。
小さい国で国民は少ない。
そこでは、生活をするのに便利な道具があっても、国民がそれを使うことはない。
また、そこでは国民に命を大切にさせ、遠くに移住させないようにする。外国へと渡る船があったとしても、これに乗ることはなく、鎧や武器があったとしても、これを使用することはない。
国民は、縄を結んでそれを約束の印として用い、食事を美味いと言い、その着ている服を美しいと思い、住居に満足し、その文化を謳歌している。こういう生活をしていれば、近隣の国がすぐ見える所にあって、鶏や犬の鳴き声が聞こえる距離にあったとしても、国民は老いて死ぬまで、互いの国を往来するようなことはない。
ChatGPTがなんだって?
仕事がAIに奪われる?
もし、老子が現代に蘇ってこの世を眺めていう言葉があるとしたら、きっとこうに違いない。
「それって美味しいの?」
大国は人口増加を前提としています。老子風に言えば「大国多民」。いま少子・高齢社会で苦しんでいるのは、ぼくは、人口減少局面を迎えた日本が大国であろうとしているからに過ぎないと感じているんですね。もちろん、儒学的な資本主義の論理から言えば、大国を維持するために人口は増加させねばならない。異次元の少子化対策、やったろうじゃねぇか、おい。
2.東アジア成長センターの終焉
まずはご安心ください、と他人の不幸をみて溜飲を下げる、みたいな話なんですが、この状況は、一部のインドを除いて、実はアジア各国が同様であります。
あれ?日本優秀じゃね?
特に韓国は、先頃公表された資料によると2022年の合計特殊出生率は0.78にまで下がっています。
しかも、これまでしこたま少子化対策してきたのに、、、。いいねぇ。これから東アジアは阿鼻叫喚ですよ。なんだか日本の1.30が立派に見えて来ます。でも、日本も阿鼻叫喚であることに変わりはありません。
なんだか、少子化対策をするために消費税増税が必要だと経済団体の偉い人が言ってるらしいです。
おいおいおいおい、、、何で少子化になってるのか分かってんの?偉い人、と思わないではありませんが、いまいち偉い人たちのピントが外れてしまうのは、それは経済はゼロサムゲームであるからであり、人間にはプライドがあるからであり、大国寡民だと資本主義が成立しないからなのです。
でも、多分、少子化対策は2次元であろうが4次元であろうが異次元であろうが、失敗するでしょう。それは、人間の嗜好、果ては恋愛や出産を政府がコントロールすることは不可能だからです。
3.日本人よ「論語と算盤」を捨てよ
実はぼくは、日本で一番ユルい論語の本も出版しておりまして、どちらかというと、儒学寄りの人間です。
そして掘り下げて思考してみると、孔子における初期儒学の考え方と老荘思想はそんなに大きくかけ離れたものでもないと感じています。それはさておき、大国寡民では資本主義とリンダが困っちゃう、かつ少子化対策が成功しない、という前提で考えるとすれば、この国はどこへ向かうべきなのでしょうか。
これはもう、老子が言うように「小国」に向かわざるを得ないと思うんですよね。小国なんですけれども、みんなが良いお洋服を着て、ご飯を美味いと思い、戦争もしない。なんか日本にピッタリな気がするのですが、ダメですかね。ダメですよね。言い訳がわりに一言、叫んでおきましょう。
「メイク、マネーーーーーッ!」
さて、次稿では、なぜ大国寡民という状況になってしまったのか、ぼくはそれは住宅と教育環境にあるのではないかと睨んでいるわけですけれども、それらを明らかにしていきたいと思います。そして、めちゃくちゃ気分が乗れば、理想の小国寡民の状態はどういうものかも記していきます。今昔物語があるので約束はできません。
最後に、小国寡民という観点で日本の行く末を論じた論文がないかと探してみましたら、一本ありました。
しかも2003年。やる男。志水さん。
たぶん、資本主義の代弁者である日本総研において、お前は何やっとるんじゃ、と叱られた可能性もありますが、とても重要な着眼点だと思うのでぜひ掘り下げて欲しいなぁ。20年前だから退職されているかもなぁ(遠い目)。
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