流行り廃りと自己責任
X(旧Twitter)を見ていると、山本貴嗣先生のこんなポストが流れてきました。山本先生は劇画村塾で高橋留美子先生とともに学び、大学在学中の1978年にデビュー。46年目のベテランです。説得力があります。
全くそのとおりだと思いますので、いささか本論から打線しつつ、雑感を付け加えたいと思います。
①昔からいる編集者
今の絵柄を作家に求める編集者は、「どうせ数年で異動になるし、流行に乗っかって無難な小ヒットを飛ばしたい。冒険して大失敗はしたくない、出世に響くし。定年後の漫画文化なんて興味ないし、漫画家の人生なんてもっと興味ないので、ひとつパクリとバレないレベルで、よろしく」の、言い換えだと思って良いです。
身も蓋もない言い方ですが、そういう編集者は伝説のトキワ荘の昔からいて。この作家の絵柄を参考にしろというパクリ命令に嫌気が差し、筆を折った方もいたと、藤子不二雄先生が語っておられた記憶が。そういう意味では、1950年代からある悪癖でしょうね。
②営業・販売部の壁
この件に関しては、Twitterではこんな意見もいただきました。
販売部は、売れる理由を求めます。でも、心身の初連載に、そんな根拠はありますか? 漫画なら、雑誌のアンケートという指標もありますが。これが新人小説家の初単行本なら。「今売れてる〇〇先生に作風が似ています」「●万部売れた作品と同じジャンルです」とか、そういう物を求めていたら、新しい才能は出てきづらくなりますよね。
③強いギャンブラー
話は脇道にそれますが、こんな意見が流れてきました。
神戸大学の宮原泰之教授でしたか、ギャンブルに強い人の特徴をラジオ番組で聞かれて、自分なりの方法論を一貫させる人、みたいなことを語っておられました。
こういう状況ではこうする、という法補論があり、たとえそれで目先の勝負で負けることがあっても、ぶれない。そういう人が、トータルでは勝つと。
作家に関しても
④老舗料亭の生存策
今風の絵柄を取り入れろ論とも重なりますが。「今はこれが流行りだから」と編集者に言われ、付和雷同するタイプは、けっきょくは生き残らないような気がします。
ただ、老舗の料亭は頑固に味を守っているかといえば、実際は流行に合わせて変えているんですよね。
でもそれは、流行りを何でも取り入れているわけではなく。
家伝の味の基本があり、その上で不易と流行を両方持っているのでしょう。
潰れる老舗は、蕎麦うどん屋なのに、流行ってるからとカレー屋を始めるタイプ。
生き残る老舗は、蕎麦の出汁をカレーに入れることで美味しいカレーうどんを出すタイプかと。
⑤己を守るのは自身
そして、著作権の非親告罪化についての、こんな意見も。
まさに、自分の権利とか財産を守るのは、自分です。編集者のアドバイスは一切聞かないというのは、自分は違うと思うのです。ちゃんと自分の中で判断基準があり、その上でその基準に照らして、全面的に取り入れる・部分的に取り入れる・全面的に排除するを、決めるのは自分です。
漫画家というか作家は、個人事業主。責任は重くのしかかりますが、逆に宮仕えよりも自由です。どっちを選ぶかもまた、自己責任ですから。
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