好きだから作家にならないほうが良い?
X(旧Twitter)に、宮前葵先生のこんなポストが流れてきました。身につまされる内容です。好きという気持ちは、大事なんですが。それだけでは、商業プロは続かないんですよね……。
①作話が嫌いになる人
願いがかなってプロの作家になって、でも作品作りが嫌いになって辞めた人、多いです。商業プロとなると、楽しいだけではなくなり。
創作の義務感で、楽しくなくなりがちですね。
あの鳥山明先生でさえも、『ドラゴンボール』の後半以降は描くのが辛く、気持ちが悪くなり、ついに連載終了を決意されたとか。身体が創作を拒否する状態です。紙にペンで絵が描けなくなったと、後年告白されていますね。
売れたら売れたで、それを維持しないといけないプレッシャー。次もヒットを期待される、周囲からのプレッシャー。
楽な道はないです。
②好きなものは書かない
その意味で、さいとう・たかを先生が提唱され実践した分業制度は、維持が大変ですが、作家の制作体制を支えるには、とても良いシステムですね。
ただ、そのためには十雨分な人件費を払えるだけの、ヒット作がないと難しく。
また作家は、職人気質の人が多くて。時間さえ余裕があれば、明日スタントなんか使わず、全ページ自分が描きたいタイプが多いです。
さいとう・たかを先生や本宮ひろ志先生のような、プロデューサー気質の漫画家のほうが、少数派。これは小説家も同じでしょう。
そうなると、「一番好きなことは趣味として取っておいて、得意なこと・才能のあることを仕事にしろ」というアドバイスが、正しい気がします。
最後の四割打者テッド・ウィリアムズも、城島健司選手も、一番好きだったのは釣りでしたが、そういう趣味で楽しむのが、精神的には良いのかもしれませんね。
③書きたいものを書かない
そういえば、『スカイ・クロラ』などで知られる作家の森博嗣先生が、興味深いことを語っておられた記憶があります。
自分は、好きなことを書いていないから、作家として長く続けられたと。何かのインタビューだったと思うのですが、出典は思い出せません。
ある意味で、職人気質を表す言葉ですね。前述のさいとう・たかを先生も、自分が描きたいものは描かない、これを描いてほしいと依頼があったものだけを描くと。リアル・ゴルゴ13ですね。もちろんそこには、少女漫画を描いて、諦めた挫折体験も在ったのでしょう。
④とにかく悩むより書け
森先生には、こんな著書もありますね。
これもまた、非常に納得する内容が多く。悩む時間があったら書け、というのはもう全くその通りで。けっきょく、修羅の道は立ち止まったら、かえって厳しくなるので。
書くか、暫く休むか。
兼業で楽しむという選択肢は、令和の時代にはむしろ必要な選択肢かもしれません。
森先生自体は、すでに現役を退いた方ですので、赤裸々な内容ですが、得るものは大きいのではないでしょうか?
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