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【私の教員休職記・映画「ブータン 山の教室を見た】

こんなに深く気持ちを動かされたのはいつ以来だろうか。

劇場で映画を見ながら、自然と涙が頬を伝った。いつの間にかどこか遠くへ行ってしまった教育に対する情熱、感動が、その映画を通して伝わってきた。

「ブータン 山の教室」

SNSで、教師をしている人が映画のことを発信しているのをたまたま見かけ、興味を持った。いわゆる大作ではなく、単館上映というのだろうか。そういう映画を見るのは私はほとんどなく、久しぶりだった。近くの映画館でまだ上映中なのを確認し、終わってしまう前に早く見に行こうと思っていた。

舞台はブータン。監督もブータン人のブータン映画という、これまで見たことのない映画だった。後で知ったことだが、出演していた村人たちは、実際にその村に暮らしている人が演じているそうだ。そんなことは全く感じさせない、見事に自然な演技だった。

ある一人の落ちこぼれ教師である青年が、上司から、過疎地域の僻地の村へ教師として赴任するよう命じられる。青年は教師という職業を半ば放棄していて、シンガーとして外国に行くことを夢見ている。しかし、僻地の村である「ルナナ」で、自分を教師として尊敬の眼差しで見つめ、純粋に教育を受ける子供たちとの生活を通して、次第に心を通わせ、熱心に教育を行うようになっていく。

きっと、この映画に対する私の見方は、教師という職業ではない人々とは違った見方であるだろう。教育とは何か、ということを深く考えさせられた。かつての日本もこうだったのだろうか。

現在の日本の教育現場には、さまざまな問題が山積している。しかし、きっと、学校というものができた当初には、教育を受けられることに対する感動、教育を受けさせることに対する情熱があったはずだ。だが、時は過ぎ、学校というものの存在が当たり前になりすぎてしまった。そして、何事でもそうだが、当たり前になったものからは感動は去り、もっといいものを、という欲求が出てくる。

清々しいブータンの風景と人々に心が浄化された後、もう少し教師を続けてもいいのかな、という思いが湧いてきた。これまで、苦しいことの方が多かったが、楽しいこともいろいろあった。日常の些細な子供たちとの触れ合いは当たり前ではなく、誰もが経験できるものではない、労働という概念では測れない素晴らしい体験であるのかもしれない。ただの映画という枠を超えたものを自分の心に残してくれた。

ブータンにもいつか足を運んでみたい。

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