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【私の教員休職記・一通の手紙】

あれから数ヶ月が経った。

当時、私は絶望の淵にいた。やりたい仕事もあった。まだまだ子供と触れ合いたかった。しかし、それらを全て奪われ、身動きも取れなくなり、ついに休職を決意するに至った。本当に、本当に不本意だった。

だが、時間が解決してくれるものもあると、改めてわかった。もちろん、悔しい気持ちは今でも変わらない。嫌な記憶が蘇ってくることがある。自己嫌悪に陥る。あの出来事全てを忘れることはできないだろう。しかし、時が経ち、出来事が過去のものになったという実感も少し出てきた。支払った代償は大きかったが、この数ヶ月間で、おそらく休まなければ出会えなかったであろう人、起こり得なかったであろうこと、考えもしなかったことがたくさんあった。元を取ったとは、いつまで経っても言えないだろうが、素晴らしいことがたくさんあったのも事実だ。

年度の終わり、一通の手紙をもらった。

その年度が終わり、毎日過ごしていた教室の自分の持ち物を整理しに行ったことは以前に書いた。その時に、それまで溜まっていた自分宛の色々な書類の中に、それが入っていた。

自分のクラスではない子からの手紙だった。

自分のクラスだった子供たちのことは、どうしているか気にはなっていたのだが、そのことは、予想もしていなかったので、驚いた。

一通り片付けが終わり、帰宅する車中でその手紙を読んだ。

詳細を明かすことはできないが、中には、学期の途中で急にいなくなった私を気遣い、励ます言葉が、幼い文字で綴られていた。

嬉しかった。いなくなった段階で、もうその学年で会うことはないのはわかっていたはずだった。なのに、自分のために、心を動かし、何かを伝えてくれようとした気持ちが嬉しかった。と同時に、ああ、もうこの子にも、直接に会って、ありがとうと伝えられることもないのだな、と考えると、なんとも言えない、切ない気持ちになった。

あの時の全てが失敗だったわけではない。そう言い聞かせながらその時まで数ヶ月間、自分が潰れそうになるなのを必死でこらえてきた。しかし、こうして気持ちを伝えてくれる子がいた。そのことだけで、少し報われた気がした。確かにあの時、楽しい時間を共有することもできていたのだ。そして、あの手紙には、間違いなく、温かい、温度が感じられた。

会っては伝えられないが。

ありがとう。本当にありがとう。元気で。

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